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アナストロゾールは早期乳癌の再発を低減する:10年間のATAC試験結果

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アナストロゾールは早期乳癌の再発を低減する:10年間のATAC試験結果

Anastrozole Reduces Recurrence in Early Breast Cancer: 10-Year Results of the ATAC Trial (Posted: 05/06/2011)

– 2010年11月17日付Lancet Oncology誌に発表された報告によれば、アナストロゾール(アリミデックス®)はタモキシフェン(ノルバテックス®)に比べてホルモン受容体陽性早期乳癌の閉経後女性における再発防止作用に優れている。

要約
アナストロゾール(アリミデックス®)は、タモキシフェン(ノルバテックス®)に比べてホルモン受容体陽性早期乳癌の閉経後女性における再発防止に優れていることが、大規模国際臨床試験ATACの10年間追跡調査結果で示された。ただし、タモキシフェンと比較した全生存期間の改善はみられなかった。

出典
2010年11月17日付Lancet Oncology誌(ジャーナル要旨参照)

背景
早期乳癌の治療を受け、腫瘍がホルモン受容体陽性の(癌がエストロゲンホルモンに反応して増殖する)閉経後女性には、ホルモン療法による5年間の補助療法が推奨されてきた。その標準的な治療選択肢は長年、抗エストロゲン剤タモキシフェンであった。タモキシフェン治療は、再発防止の効果を示しており、この患者集団に対する標準治療とみなされていた。

しかし、タモキシフェンを服用すると子宮内膜癌や血液凝固障害のリスクが増加するため、アロマターゼ阻害剤(AIs)と呼ばれる薬剤で、異なるタイプの抗エストロゲン剤が、より優れた選択肢であると示唆されている。

タモキシフェンと同様、アロマターゼ阻害剤は癌細胞のホルモン利用を妨げる。しかし、タモキシフェンが癌細胞の有する増殖亢進のためのエストロゲン使用能力を直接阻害するのに対して、アロマターゼ阻害剤は体内でのエストロゲン産生を促すアロマターゼという酵素の働きを阻止する。別の相違点として、タモキシフェンが閉経前および閉経後女性に有効である一方、アロマターゼ阻害剤は閉経後女性のみにおいてエストロゲンの産生を妨げる。

試験
「アリミデックス、タモキシフェンの各単独療法または両剤併用療法」(ATAC)試験は、第3相二重盲検臨床試験で、本研究の目的はホルモン受容体陽性閉経後乳癌女性におけるアロマターゼ阻害剤アナストロゾール、タモキシフェン、ならびに両剤併用による予防効果を比較するためであった。

本試験には限局性乳癌(広範囲進展あるいは転移していない癌)の閉経後女性9,366人が登録された。これらの女性は、無作為に割り付けられ、アナストロゾール単独投与、タモキシフェン単独投与、両剤併用投与のいずれかによる5年間の補助療法を受けた。(患者の転帰が、併用投与群とタモキシフェン単独投与群とで本質的に同等であったため、併用投与群はその後中止された。)試験参加者の大半(84%)はホルモン受容体陽性であった。

2005年に発表された追跡期間中央値68カ月(5年7カ月)後の調査結果(ジャーナル要旨参照)によると、タモキシフェンと比較してアナストロゾールの投与で、無病生存期間が13%延長し、再発までの時間が21%増加した。また他器官へ波及(遠隔転移)する癌の発症率が14%減少し、対側乳癌の発症率は40%以上低下した。ホルモン受容性陽性の女性に対象を限定した分析では、さらに大きな群間差が認められた。

その上、アナストロゾール投与群患者に骨折および関節痛がより多くみられたものの、アナストロゾールにはタモキシフェンよりも少ない重度の副作用(子宮内膜癌、血栓症、膣出血、のぼせ)が伴った。ただし、全生存期間は両群で同様であった。

2006年、ATAC試験に係わった研究者らは、アナストロゾールはタモキシフェンに比べて忍容性が良好であり、重篤な合併症の発現が少ないことを示すデータを発表した(ジャーナル要旨参照)。さらに、アナストロゾールはタモキシフェンよりもリスク・ベネフィットのプロファイルが全体的に良好で、アナストロゾールを服用した女性の再発率は、タモキシフェンを服用した女性よりも低かった。

主に2005年の発表結果に基づいて、アナストロゾールによる治療はホルモン受容体陽性乳癌に対する標準補助療法となったが、タモキシフェンは依然として妥当な選択肢である。計30,000人以上の女性を含むその他の研究では、アナストロゾールの単独治療あるいはタモキシフェン治療後の逐次的治療がホルモン感受性乳癌患者に有益であることが確認されている。

現行の研究では、ATAC試験参加者を中央値10年間追跡した調査結果を報告している。

結果
タモキシフェンを上回るアナストロゾールの有益性が本分析で引き続き示されている。ホルモン受容体陽性乳癌の女性で、無作為に割り付けられてアナストロゾール治療を受けた患者では、無作為に割り付けられてタモキシフェン治療を受けた患者と比較して、10年後の絶対的な乳癌再発率が4.3%低下し、絶対的な遠隔転移癌発症率は2.6%低くなった。

再発までの期間、対側乳癌の発症率、無病生存期間におけるアナストロゾールとタモキシフェンとの差異は、治療開始後2年以内で最も大きく、治療終了後の期間を含む追跡期間中は一様に保たれていた。しかし、著者らはこのいわゆる「持ち越し効果」、つまり治療終了後も持続する有益性は、約8年後に衰えることを発見した。

治療中にアナストロゾール投与群の女性が呈した治療関連の重篤な有害事象は、タモキシフェン投与群の女性より少なかったが、治療終了後、重篤な有害事象発生率は両群間で一様となった。タモキシフェンを服用した女性と比べて、治療中に骨折を報告したアナストロゾールを服用した女性は多かったが、終了後は骨折発生率も両群で同様であった。

タモキシフェンを服用した患者には、アナストロゾールを服用した患者よりも高い確率で子宮内膜癌とメラノーマが発症した。タモキシフェンを服用した患者と比較してアナストロゾールを服用した患者に、結腸直腸癌と肺癌の発症傾向が若干みられた。しかし、全体的に乳癌以外の癌発症率は両群において同様であった。

患者死亡数は、乳癌再発の有無にかかわらず、10年間の追跡調査後両群で同様であった。したがって、タモキシフェンと比較して、アナストロゾールによる治療で全生存期間は改善されなかた。

コメント
オーストリア・ウイーン大学医学部のMichael Gnant医師は、付随論説に、「アナストロゾールによる5年間治療の有益性が持続し、時間の経過と共に向上しているとさえ思われる」本研究結果に勇気づけられたと記している。「このいわゆる持越し効果は、実質的には疾患の初期段階に介入することで再発率と全生存期間に影響を与える可能性があることを意味するため、希望を与えてくれるのです」。

Gnant医師は、「アロマターゼ阻害剤の臨床的に最も重要な副作用は、血中エストロゲン濃度の低下による骨折の増加であるが、薬物の服用中止直後に治まるのは確実です」と続けた。

米国国立がん研究所(NCI)癌治療評価プログラムの責任者であるJo Anne Zujewski医師は、「10年間のATAC試験結果が、アナストロゾールは安全で早期乳癌の閉経後女性の治療に有効だという強いエビデンスを示しています」と述べた。

しかし、「個々の患者がアロマターゼ阻害剤による治療を始めるべきか、それともタモキシフェンによる治療を始めてからのちにアロマターゼ阻害剤に切り替えるべきかは、依然として医学的判断および臨床研究に係わる課題となっています。患者は、自身の病状から判断してどの治療薬が最適かを担当医と話し合う必要があります」と同医師は加えた。

2010年8月、米国臨床腫瘍学会(ASCO)専門委員会は、臨床診療ガイドライン改訂版を発表し、ホルモン受容体陽性乳癌の閉経後女性に対して、補助療法による治療中、初回からもしくはタモキシフェン補助療法終了後にアロマターゼ阻害剤の使用を考慮するよう勧告している。しかし、アロマターゼ阻害剤による治療の是非と時期を決める際には、患者と担当医は副作用プロファイルを慎重に検討する必要があると、委員会は忠告している。

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マクドナルド 晋子 訳
原 文堅(乳腺科/四国がんセンター)監修
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