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細胞療法が臨床試験で癌に優れた殺傷能を示す/スローンケタリング記念がんセンター

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細胞療法が臨床試験で癌に優れた殺傷能を示す/スローンケタリング記念がんセンター

2014年2月19日

遺伝子改変T細胞により、進行性白血病患者の88%が完全寛解を達成

メモリアル・スローンケタリングがんセンター(Memorial Sloan Kettering Cancer Center:MSKCC)の研究者らにより、今日の癌治療のうち最も魅力的な治療法のひとつについて朗報が伝えられた。これまでに実施された進行性白血病患者を対象とする最大規模の臨床試験にて、遺伝的に改変した患者自身の免疫細胞を用いて治療したところ、患者の88%に完全寛解が得られたことがわかった。その結果は本日、Science Translational Medicine誌に掲載された。

「この驚くべき結果により、従来のあらゆる治療法を試した患者にとって、細胞療法が有力な治療法になることが明らかにされました。われわれが以前得た結果は、より大きな患者集団においても維持されました。癌との闘いのなかでこの新しい治療法を推し進めるために新たな臨床試験を検討しています」と、MSKCCの細胞工学センター長であり、今回の臨床試験の統括著者のひとりであるMichel Sadelain医学博士は語った。

成人B細胞性急性リンパ性白血病(B-ALL)は、B細胞から発症する血液癌であり、患者の大半に再発がみられるため治療が困難である。再発B-ALL患者にはほとんど治療選択肢がなく、サルベージ療法により奏効する患者は30%にすぎない。骨髄移植が成功しない限り、長期生存が期待できる患者はごくわずかである。

今回の試験では、再発B-ALLの患者16人にT細胞と呼ばれる患者自身の免疫細胞を遺伝的に改変し投与した。その免疫細胞は、タンパク質CD19を発現する癌細胞を識別し死滅させるよう「再教育」されたものである。全患者の完全寛解率は88%であり、細胞療法前に検出可能な白血病があった患者でさえ完全寛解率は78%であった。この数字は、救済化学療法単独の完全寛解率よりもはるかに高いものであった。

ペンシルベニア州Wynnewoodのレデンプトール会(C.Ss.R)に所属するDennis J. Billy氏は、2年以上前に細胞療法を受けた最初の患者のひとりである。Billy氏は無事に骨髄移植を受けることができ、その後は癌がない状態(cancer free)を維持しており、2011年からは神学を教える仕事に復帰した。また、コネティカット州オックスフォードでレストランを営むPaolo Cavalli氏は、自身のT細胞を用いた治療を受けた後、8カ月の間完全寛解を維持している。

細胞療法のこれまでの科学的成果

T細胞を用いた標的免疫療法は、癌性細胞を攻撃し死滅させるために患者自身の免疫系を利用し癌を治療する新しい方法である。インフルエンザのようなよくみられるウイルスとは違い、われわれの免疫系は癌細胞を異物と認識しないため、癌を根絶するには不都合である。10年以上もの間、MSKCCの研究者らによって、癌を識別し攻撃するために自身のT細胞を再設計する方法の探索が続けられていた。2003年、彼らはB細胞にあるタンパク質CD19を識別するよう再設計したT細胞により、マウスのB細胞癌を治療できることを報告した最初の研究者になった。

「MSKCCは、B-ALL患者にこのCD19を標的とする治療を用いて成果を挙げ報告を行った最初のセンターでした。10年以上もの間この技術を開発するためにひとつひとつ積み上げてきたなかで、驚くべき結果を私の患者で目の当たりにすることができとても満足しています」と、MSKCCの細胞療法学施設のセンター長であり、今回の臨床試験の統括著者のひとりでもあるRenier Brentjens医学博士は語った。

2013年3月、同じチームの研究者らが、細胞療法によって治療した進行B-ALL患者5人の結果を初めて報告した。驚くべきことに、患者5人全員に完全寛解が得られた。

試験結果が示す新しい治療法の可能性

今回の臨床試験では、再発B-ALL患者16人のうち7人(44%)が、細胞療法後に骨髄移植を受けることができた。骨髄移植はB-ALL患者にとって標準治療であり、治癒する可能性がある唯一の治療選択肢である。3人の患者が完全寛解に至らず除外され、他の3人も既存の疾患により除外された。2人は治療を辞退し、1人は骨髄移植ができるか評価している段階である。これまでは通常、再発B-ALL患者の5%しか骨髄移植に移行することができていなかった。

この臨床試験はほかにも、細胞療法の副作用への対処法についてガイドラインを示している。副作用には、発熱、筋肉痛、低血圧、呼吸困難のような重症のインフルエンザ様症状があり、サイトカイン放出症候群と呼ばれている。研究者らは、この症候群にかかるリスクが高い患者を特定できるような診断基準を作成し臨床検査の開発を行った。

細胞療法が他の癌にも適用できるか確認する追加試験はすでに始まっている。また、B-ALL患者に対して標的免疫療法を初期療法として用いることで便益が得られるかを調べる試験も計画されている。

この研究はTerry Fox Foundation、米国血液学会(ASH)のAmos Medical Faculty Development Program、the Alliance for Cancer Gene Therapy、the Carson Family Fund、the Major Family Fund for Cancer Research、Joel and Yvette Nallah、the Lewis Sanders Fund、the Damon Runyon Cancer Research Foundation、Kate’s Team、 Mr. William H. Goodwin and Mrs. Alice Goodwin and the Commonwealth Cancer Foundation for Research、the Experimental Therapeutics Center of Memorial Sloan Ketteringによる支援を受けた。

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小泉美希 訳
吉原 哲 (血液内科/造血幹細胞移植) 監修
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原文

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