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2011/04/19号◆癌研究ハイライト

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2011/04/19号◆癌研究ハイライト

同号原文

NCI Cancer Bulletin2011年4月19日号(Volume 8 / Number 8)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~

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癌研究ハイライト

・米国におけるHIV感染者の癌種に変化
・遺伝学研究がメラノーマの新たな手がかりを生む
・シグナル伝達分子が乳癌細胞を選択的に死滅させる

米国におけるHIV感染者の癌種に変化

HIV感染者において発症する癌のうち、従来、エイズ関連癌に含まれていなかった癌種の症例数が、1991年~2005年に急激に増加した。寄与因子の一つとして、高活性抗レトロウイルス療法(HAART)が1990年代半ばに導入され、HIV感染者の生存期間が大幅に延長したことが挙げられる。これらの治療を受けたHIV感染者が発癌リスクが高まる年齢に達しつつあり、癌種の症例数も増加する可能性があることを、NCIの癌疫学・遺伝学部門(DCEG)のDr. Meredith Shiels氏らが4月11日付National Cancer Institute誌電子版で報告した

研究者らは、米国の15の癌登録とHIV登録をリンクさせた現在進行中のHIV/AIDS Cancer Match Studyおよび、全50州のエイズ患者数を監視している疾病対策予防センター(CDC)のエイズ登録からデータを収集した。

エイズ患者数は1991年の96,179人から2005年の413,080人に増加している一方で、「エイズ指標腫瘍」(カポジ肉腫、非ホジキンリンパ腫および子宮頚癌)の推定数は1991年~1995年の34,587例から2001年~2005年の10,325例へと、ほとんどの年齢群で低下していることがわかった。(これらの腫瘍のいずれかが診断された時点でHIV感染者のエイズ患者への進行が確定するため、医師はこれらの癌を「エイズ指標」と呼ぶ)。

一方、HIV感染被験者のその他の癌の推定数は、1991年~1995年の3,193例から2001年~2005年の10,059例へと、ほぼ3倍になった。肛門癌、肝臓癌、肺癌およびホジキンリンパ腫の新たな症例は、増加数の約半分を占めていた。

著者らは、非エイズ指標腫瘍の症例数が増加したことで、HIV感染者における癌の予防および早期発見にさらに注力することが必要になると提言している。また、癌治療を個々のHIV患者に合わせて適切に調整するためには、より多くの研究が必要であると述べている。「米国のHIV感染集団は拡大し、高齢化し続けているため、癌は公衆衛生上の重要な問題を提起するであろう」と、この論文の責任著者であるDCEGのDr. Eric A. Engels氏は結論している。

遺伝学研究がメラノーマの新たな手がかりを生む

メラノーマ腫瘍に関する過去最大の遺伝学的調査で、研究者らは未治療の進行メラノーマ患者14人の遺伝子配列を解析した。これまで関連づけられていなかったものでメラノーマに関与している可能性のある遺伝子や経路を指摘する結果が、4月15日付のNature Genetics誌電子版に発表された。

米国国立ヒトゲノム研究所のDr. Yardena Samuels氏らは、同一の個人の腫瘍細胞とそれに対応する正常細胞のタンパク質コード遺伝子(別名、エクソン)の配列を解析した。組織標本は、NCIの癌研究センターの外科部門長であり、本研究の共著者のDr. Steven Rosenberg氏により後に治療を受けた患者から採取した。

配列解析により、メラノーマの一因となっている可能性のある16個の遺伝子に変化が認められた。このうち、BRAF遺伝子のみが従来、メラノーマに関連があるとされていた。メラノーマ患者6人のそれぞれに、TRRAPと呼ばれる遺伝子に同一の変異が発見されたことは予想外の結果であった。TRRAPは細胞増殖の制御を補助するタンパク質をコードする。同一のアミノ酸の位置で突然変異が繰り返されていることから、TRRAPがメラノーマに関与していることを示唆していると研究者らは述べている。

反復突然変異は、GRIN2Aと呼ばれる遺伝子においても発見された(GRIN2Aのタンパク質産物はグルタミン酸受容体の一種のサブユニットである)。メラノーマ腫瘍135例の大規模解析では、標本の25パーセントでGRIN2Aが突然変異しており、これまでに同定されたメラノーマの突然変異遺伝子の中で最も頻度の高いものの一つとなった。シグナル伝達経路の解析から、以前にNature Genetics誌で報告されたように、グルタミン酸経路がメラノーマに関与している可能性のあることが確認された。

Samuels氏は、メラノーマの遺伝学的事実を完全に理解するために、さらに多くのゲノム配列を解析する必要があることに言及しつつ、「これは、メラノーマの遺伝的特徴に関して、今までで最も包括的な見解である」と述べている。この解析作業は、遺伝子ファミリーの配列解析などを行った、同グループによる先行研究に基づいて行われる。メラノーマ患者の1個体の全ゲノム配列がWellcome Trust Sanger Instituteの研究者らによって昨年初めて報告された

「われわれは腫瘍から遺伝学的データを効率的に引き出すことができ、解析もできる」とSamuels氏は言う。「しかし、主な課題はどの突然変異がメラノーマにおいて重要であるかを突き止め、患者治療にその知見を応用することである」。

シグナル伝達分子が乳癌細胞を選択的に死滅させる

正常な乳腺細胞(乳腺上皮細胞、すなわちMEC)が、乳癌細胞を死滅させながらも正常細胞に損傷を与えないシグナル伝達分子を分泌することが、研究者らによって発見された。このシグナル伝達分子はインターロイキン-25(IL-25)として知られ、乳癌細胞の表面にある受容体に結合して細胞死を誘発する。この知見は、4月13日付Science Translational Medicine誌で発表された。

ローレンス・バークレー国立研究所(LBNL)のDr. Saori Furuta氏らは、3次元(3D)細胞培養システムを使用し、正常なMECと乳癌細胞の増殖および発生を研究した。3D培養システムは正常な乳腺組織の構造体を刺激するものであり、LBNLのDr. Mina Bissell氏の研究室で開発された。Bissell氏はカリフォルニア大学アーバイン校のDr. Wen-Hwa Lee氏と共同研究を行っている。

研究者らは、乳癌細胞を死滅させるかその増殖を抑制する、3D培養によって増殖した正常な乳腺細胞が産生した6種類の分子を同定した。6種類の分子のうちIL-25が、3Dシステムで増殖した乳癌細胞に対する細胞死滅(細胞傷害性)作用が最も強力であった。

「IL-25の細胞傷害活性は細胞表面で受容体IL-25Rを発現する癌細胞に限られていた」とFuruta氏は言う。追加実験では、IL-25が自らの受容体に結合する際に、プログラムされた細胞死、すなわちアポトーシスとして知られるプロセスが開始することが明らかになった。生体は通常、不必要な細胞や異常細胞を除去するためにこのプロセスを用いる。

「IL-25は正常な乳腺組織が自然に産生するため、癌に対する自然な防御機構になり得る」とFuruta氏は述べている。

1カ月にわたりマウスに1日1回IL-25を注射したところ、移植したヒトの乳癌細胞によって形成された腫瘍の増殖が劇的に遅くなったが、研究者らが調べた正常な乳腺組織や他の生体組織は影響を受けていなかった。

研究者らはヒトの乳癌生検の69標本も分析し、これらの標本の19パーセントがIL-25R陽性であることを発見した。「重要なことは、これらのIL-25R陽性腫瘍は浸潤性が高く、患者の臨床転帰不良と関連していたことである」とFuruta氏は述べる。

「これらのデータは、IL-25/IL-25Rというシグナル伝達経路から、(IL-25受容体を発現する)進行性乳癌の治療の新たな標的が得られる可能性のあることを示唆している」と本研究著者は結論している。

研究者らは自分たちの知見の特許を取得済みであり、さらなる開発のために製薬企業にこの技術を移管中であるとFuruta氏は説明した。

関連記事:一部の肺癌患者に対する腫瘍検査実施をASCOが推奨米国臨床腫瘍学会(ASCO)は、進行非小細胞肺癌患者に対し、上皮増殖因子受容体(EGFR)からのシグナル伝達阻害剤投与を一次治療として行なう前に、腫瘍検査を実施しEGFRをコードする遺伝子に変異が認められるか否かを調べることを推奨する、暫定的な臨床的見解[Provisional Clinical Opinion(PCO)]を示した。4月11日付のPCOによると、検査で変異陰性となった患者には、エルロチニブ(タルセバ)あるいはゲフィチニブ(イレッサ)などのEGFR阻害剤よりも化学療法のほうがより利益が大きいと考えられるという。「(EGFRに)変異がない患者に対し、最初にエルロチニブを投与するのは適切ではない」と、著者の一人であり、NCIの癌研究センターで腫瘍内科学支部長を務めるDr. Giuseppe Giaccone氏は声明で述べた。「このような患者に対しては効果がないばかりか、より有効かもしれない化学療法を行なう機会を逸しているともいえる」。

本PCOは、医師に指針を与えるためのもので、5件の第3相試験の結果に基づいている。ASCOの要請で、NCIのPDQ(Physician Data Query:癌に関するデータベース)の成人治療の編集委員会(Adult Treatment Editorial Board)は、これら5件の試験のうち、IPASS試験の結果について、書面による分析を提供した。

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川瀬 真紀 訳

辻村 信一(獣医学/農学博士・メディカルライター)監修

<枠囲記事>

河原 恭子 訳

小宮 武文 (呼吸器内科/NCI Medical Oncology Branch)監修 ******

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