2011/04/05号◆癌研究ハイライト | 海外がん医療情報リファレンス

2011/04/05号◆癌研究ハイライト

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2011/04/05号◆癌研究ハイライト

同号原文

NCI Cancer Bulletin2011年4月5日号(Volume 8 / Number 7)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~

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癌研究ハイライト

・がん罹患者および死亡者数は引き続き減少傾向にあることが最新調査で示された(原文参照)

・慢性骨髄性白血病でイマチニブ治療を受けている患者の死亡リスクは一般的集団の死亡リスクと同等

・放射線治療後の二次癌のリスクは小さい

・膵臓癌を外部から狙い撃つ免疫療法

・乳癌ゲノム塩基配列から薬物応答性をみる

・2種類の分子標的薬併用の安全性が早期試験で明らかに

・悪性中皮腫を早期に発見できる検査

慢性骨髄性白血病でイマチニブ治療を受けている患者の死亡リスクは一般的集団の死亡リスクと同等

イマチニブ(グリベック)を服用し2年以上の寛解が得られた慢性骨髄性白血病(CML)患者の死亡リスクは、一般的な集団と差がないことが国際的研究で明らかになった。イタリアのMilano-Bicocca大学のDr. Carlo Gambacorti-Passerini氏が率いたImatinib Long-Term (Side) Effects(ILTE)試験は、イマチニブの長期的な効果についての独立した初めての調査研究である。この研究結果は3月21日付Journal of the National Cancer Institute誌電子版に掲載された。

同研究は、5大陸27病院でイマチニブを2年間投与した時点で寛解となっていた患者832人を登録して行われた。追跡期間の中央値は患者の登録後4年で、これはイマチニブ投与開始から約6年に相当する。追跡期間中にイマチニブに関連する重篤な副作用が認められた患者は27人のみであった。半数以上の患者でQOLに関わる軽度の副作用が1回以上あり、そのうち68%はイマチニブと関連している可能性があった。一方、副作用により治療を中止した患者はわずか2.3%だった。

治療開始後6年の時点で患者の95%は寛解を維持していた。この間に20人が死亡したが、CMLの進行に関連した死亡は6人のみであった。「今回観察されたCML患者の死亡率と、一般的なイタリア人集団における死亡率を比較しても差はない」と著者らは記述している。

本研究における患者の高い生存率は、「イマチニブがCMLの臨床経過に絶大な治療効果を与えることと、イマチニブ治療に関連した腫瘍発生は無視できるほど小さいことを証明するものである」。ジョンズホプキンス大学シドニー・キンメル総合がんセンターのDr. B. Douglas Smith氏は付随論説でこのようにコメントした。

Smith氏は、相当数の患者(478人)がイマチニブを二次治療として受けていること、およびこれらの患者の90%は一次治療としてインターフェロン治療を受けていることを指摘し、データのさらなる分析を行って、インターフェロンが今回観察された長期間の寛解に一役買っていたかどうか確認するのがよいのではないかと提案している。

放射線治療後の二次癌のリスクは小さい

固形癌に対しては通常よく放射線治療が行われるが、固形癌の治療後5年以上生存した成人を対象とした研究で、平均12年の追跡期間中に二次的な固形癌が発生した患者は9%であった。これらの二次癌のうち放射線治療に関連するとみられるものは約8%であった。NCIの癌疫学・遺伝学部門のDr. Amy Berrington de González氏を代表とする本研究の結果が3月29日付Lancet Oncology誌電子版に掲載された。

この種では初となる総合的な解析において、Berrington de González氏らは1973年から2002年までにSEER登録プログラムのうち9カ所に記録されている約65万人分の成人患者データを調査した。放射線治療を受けた患者は初発の癌の種類によって23%~79%まで差があった。

研究者らは、一次治療として放射線治療を受けた患者と受けていない患者を比較したときの二次癌発生にかかる相対リスクを計算した。放射線照射と関連した二次癌発生の相対リスクは一次癌の種類によって異なり、精上皮腫の生存者でもっとも高かった。年齢、最初の診断からの時間、診断された時期などの因子を補正し、研究対象とする期間に観察された二次癌60,721例のうち、約3,300例は放射線治療が影響した可能性があると推定された。

本研究はまた、放射線治療に関連する二次癌全体の絶対リスクを初めて報告しており、放射線治療を受け15年生存した患者1,000人につき約5人に放射線治療と関連する癌が発生すると推定している。「放射線治療に関連する二次癌発生の絶対リスクが極めて低いことを医師が患者に伝える際、この数字が使えるであろう」。Berrington de González氏はこのように説明した。

強度変調放射線治療(IMRT)などの新しい放射線治療技術においては、正常組織に従来技術と異なるパターンで放射線が照射されることになるため、今後、これらの治療法のリスクを確認するための研究が必要となる。以前の研究で「二次癌のリスクはIMRTを受けた患者のほうが高い可能性がある」という懸念が示されており、「今後この治療法による曝露についてリスク評価をする研究が必要」と同氏は結論づけている。

膵臓腫瘍を外部から狙い撃つ免疫療法

初期相の臨床試験で、進行膵臓癌患者の新しい治療選択肢につながると期待される有望な結果が報告された。今回の治療法は臨床試験医師らの予想と異なり、主に周辺組織に変化を加えることで癌を攻撃し効果を発揮したとみられている。本知見は3月25日付Science誌電子版に掲載された。

今回の第1相臨床試験はファイザー社の依頼で行われたもので、進行膵臓癌と新たに診断された患者21人を対象とした。進行膵臓癌患者は現在の治療法はほとんど効果がなく、5年後生存率も5%未満である。患者には化学療法剤ゲムシタビンと、免疫細胞表面のCD40受容体に結合するCP-870,893というモノクローナル抗体を投与した。

全体で、患者4人で腫瘍がいく分退縮し(部分奏効)、11人で腫瘍の増殖が停止した(病勢安定)。無進行生存期間中央値は5.6カ月、全生存期間中央値は7.4カ月で、いずれも現在の標準治療であるゲムシタビン単独投与を行った患者で従来みられた数値より改善している、と試験責任医師でペンシルベニア大学アブラムソンがんセンターのDr. Robert Vonderheide氏は説明した。

研究者らは抗CD40抗体によりT細胞が刺激され腫瘍を攻撃すると予想していたが、治療に反応した患者2人から採取した腫瘍サンプルを分析したところ、T細胞がほとんどもしくはまったく存在しなかった。一方、他の免疫細胞であるマクロファージが多数存在することを発見した。マクロファージは腫瘍が免疫機構からの攻撃をかわすのを助けると一般的に考えられてきた。

これらの患者で何が起こっているかを調べるため、研究者らは遺伝的に膵臓癌を発症するよう作出されたマウスにCD40を標的とする同様の抗体を投与した。この抗体は腫瘍の外側にあるマクロファージに結合することが判明した、とVonderheide氏は述べた。この結果、マクロファージは「その性質を変え、傷害する性質を帯びるようになり、すみやかに腫瘍内に移動していく」と同氏。さらに、マウスにおいて「腫瘍細胞そのものが死んでいたほか、腫瘍周辺の間質もマクロファージの攻撃を受けほとんど消失しかかっていた」という。今回の知見は予備的なものであり、この治療法の作用機序や、どの治療法と併用するのが最善かを解明するためにはさらなる研究が求められる、とVonderheide氏は説明している。アブラムソンの研究チームは、T細胞を刺激して腫瘍を攻撃させる他の試験薬と併用し、今回用いた抗体を転移メラノーマ患者に投与する別の第1相臨床試験をまもなく開始する。

乳癌のゲノム塩基配列から薬物応答性をみる

研究者らは、エストロゲン受容体(ER)陽性乳癌患者50人から採取した腫瘍の全ゲノム配列を調べ、その遺伝子変化を網羅的に明らかにした。AACR年次総会で発表されたこの研究の目的は、抗エストロゲン薬に反応する腫瘍としない腫瘍があるのはなぜかを説明する遺伝子的な要因を明らかにすることにある。

ER陽性乳癌女性患者は、タモキシフェンやアロマターゼ阻害剤などの抗エストロゲン薬の投与を受けることで腫瘍の増殖が抑制され、外科的切除が容易になったり手術や放射線治療後の腫瘍の再発予防が可能となる。しかし、治療は必ずしも有効なわけではなく、耐性のある腫瘍の場合は良好な結果が見込めない。抗エストロゲン療法への耐性の根底にある遺伝子的要因は明らかになっていない。

この疑問を解明するために、ワシントン大学医学部(セントルイス校)のDr. Matthew Ellis氏らは、ER陽性乳癌女性患者50人の腫瘍のゲノムと正常なゲノムを分析した。患者は、術前療法としてのアロマターゼ阻害剤の効果を確認する2つの臨床試験の参加者であった。患者は、生検の後に3種類のアロマターゼ阻害剤のいずれかを投与され、その後に手術を受けた。50人中26人は腫瘍がアロマターゼ阻害剤に反応し、24人は反応しなかった。

Ellis氏によると、約10兆のDNAの塩基配列を解析したが、「ありとあらゆる変異の集まり」であることがわかり、変異にはありふれたものと、稀なものがあった。この分析で検出された癌と関連する可能性のある変異のうち、圧倒的多数は腫瘍の5%未満で発見された。

「乳癌は驚くほど複雑である」とEllis氏はいう。「このDNA塩基配列には、これまで見たことのない新たな生物学的な発見がいくつもあった」。研究で発見された変異と抗エストロゲン療法への応答性との関連を調べるプロセスがすでに開始している。

変異がよくみられる遺伝子には、PIK3CAとTP53があった。さらに、患者の10%で腫瘍抑制遺伝子のひとつであるMAP3K1が欠損していた。この遺伝子は他の癌との関連性が指摘されてきたが、今回初めて乳癌との関連性が言及されたという。

半分の腫瘍にPIK3CAの変異がみられたことは大きな発見である。これにより、乳癌においてPIK3CA変異を抑制することが治療上重要である可能性が示された。年次総会で結果を説明したダナファーバー癌研究所のDr. Matthew Meyerson氏は述べている。

また、Meyerson氏によると、この研究とは別に彼のグループは乳癌においてMAP3K1の変異による不活性化がしばしばみられることを発見しており、「Ellis氏は注目すべき結果を立証している」。この研究で、次世代シークエンス法を用いた乳癌のゲノム分析を癌の臨床試験に導入することの妥当性が示された、とMeyerson氏は述べている。

2種類の分子標的薬併用の安全性が早期試験で明らかに

ターゲットの異なる2種類の分子標的薬を併用する小規模臨床試験で肯定的な結果が得られたことがAACR年次総会で発表された。それぞれの薬は、癌において活性化する別の経路を標的としている。併用療法に抗腫瘍効果がある可能性は過去のいくつかの研究でも示されていた。研究者によると、このレジメンはおおむね良好な忍容性を示し、副作用は単剤で使用した場合と同程度であった。

この併用療法は、癌で最も頻繁に変異がみられるRAS/RAF/MEK経路とPI3K経路を標的としている。併用する薬剤はいずれもジェネンテック社製で、GDC-0973はMEK経路を阻害し、GDC-0941はPI3K経路を標的とする。

「これらの経路の変化は大半の腫瘍でみられるものである」と、この知見を発表したサラキャノン研究所(ナッシュビル)のDr. Johanna Bendell氏は述べている。Bendell氏によると、研究者は、薬剤を併用すると相乗効果が得られるのではないかと考えて試験を行ったが、併用によって患者への毒性が高まることを懸念していた。

少なくともこの研究ではそのようなことはなかった。最も多かった副作用は、下痢、倦怠感、発疹、悪心、嘔吐であったが、大半は軽度であった。

臨床試験に登録された27人の患者のうち、5人で腫瘍サイズが縮小した。内訳は、メラノーマが2人、前立腺癌が1人、非小細胞肺癌が2人であった。肺癌の1人とメラノーマの2人は6カ月間にわたって病勢安定(SD)をみた。

この臨床試験は進行中で、研究者は引き続き至適用量を調べ、抗腫瘍作用を観察していく予定である。

「(癌の)複数の経路に打撃を与えると効果が高くなると多くの人が考えている。これは先駆的な研究である」と、この研究の記者会見の司会をつとめたトランスレーショナル・ゲノム研究所のDr. Daniel Von Hoff氏は述べている。

Bendell氏は、他の企業がこれらの分子標的治療薬を併用する臨床試験を開始するだろうと予測している。異なる企業が製造した2種類の薬物の試験には新たな課題が増えるということもつけ加えた。

悪性中皮腫を早期に発見できる検査

血液中の13のタンパク質をマーカーとしたパネルを作成して検討した結果、アスベストに曝された人の悪性中皮腫をごく初期のステージでも発見できる可能性があるという研究成果がAACR年次総会で発表された。この研究では、血液検体中のタンパク質に結合するアプタマーと呼ばれるDNA分子を用いた技術を一部に利用した。

この研究で使用した検査は、この研究に資金提供をしているコロラドのSomaLogic社が開発した。この検査で、アスベスト曝露歴があり悪性中皮腫を発症した90人の患者と、アスベスト曝露歴があるが健康な80人の参加者(対照群)から採取した血液検体を分析した。75%の検体の分析結果から、ニューヨーク大学ランゴン医療センターのDr. Harvey Pass氏率いる研究チームが中皮腫患者の血液検体に通常みられるが、対照群の検体にはみられないタンパク質パネルを特定した。Pass氏の研究室は、NCIの早期発見研究ネットワーク(EDRN)の助成を受けている。

この「トレーニングセット」のバイオマーカーパネルには、中皮腫患者と対照群を80%の感度と100%の特異度で識別し、早期中皮腫患者19人中15人を検出し得たとPass氏は述べている。同様の結果は、残る25%の検体(バリデーションセット)からも得られた。記者会見でPass氏は、アスベスト曝露により発症した中皮腫患者38人とアスベスト曝露歴がある健康な対照群62人の検体で構成される、別の盲検化したバリデーションセットでの検査性能に関するデータも提示した。このセットでは、マーカーパネルは92%の感度と92%の特異度を示した。

悪性中皮腫患者の多くは、一般に進行した病期(または進行した“段階”)で診断され、治療が奏効することは少ない。そのため、疾患を早期の段階で発見できる方法は重要である。「初期の中皮腫なら、長期生存が期待できるからである」とPass氏は説明した。

現在の悪性中皮腫の罹患率は米国で年間約3,000人と低い。しかし、Pass氏によると、1940年から1979年の間に米国だけで推定2,750万人が職業上アスベスト曝露を受けており、潜伏期間が長いことから、中皮腫の罹患率がピークを迎えるのは今から20年経過して以降になると考えられている。

Pass氏へのインタビューによると、検査の有効性を確認するための追加の試験が計画されており、性能を向上させるために検査でさらに多くのアプタマーを加えることにしている。

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橋本 仁、月橋 純子 訳

吉原 哲(血液内科・造血幹細胞移植/兵庫医科大学病院)、

田中 文啓(呼吸器外科/産業医科大学教授)監修

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