2011/04/05号◆特集記事「学問分野の横断-癌への疑問を探求する」 | 海外がん医療情報リファレンス

2011/04/05号◆特集記事「学問分野の横断-癌への疑問を探求する」

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2011/04/05号◆特集記事「学問分野の横断-癌への疑問を探求する」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2011年4月5日号(Volume 8 / Number 7)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~ ____________________

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◇◆◇ 特集記事 ◇◆◇

学問分野の横断-癌への疑問を探求する

この週末からフロリダ州オーランドで米国癌学会(AACR)年次総会が開催されている。Dr. Elizabeth Blackburn氏は、「(癌研究において)容易なことはほとんど行われました」と述べた。現在、「癌研究全体」としてはこれまでよりずっと学問横断的になり、このようにして新たなフロンティアが探求されていくのだとも述べた。

AACRの会長であり、テロメアに関する先駆的な研究でノーベル賞を受賞しているBlackburn氏は、今、生命科学、自然科学、工学が一つになりつつあると言う。「別の学問分野であると思っていたものが一緒になってきたのを私たちは繰り返し見ています」。

Blackburn氏が記者たちに述べるのは、テロメアの短縮化や慢性的な心理ストレスと特定の癌リスクとの関連性を調べる新しい研究のことである。この研究は、まだ初期段階であるが、以前であれば協同することがなかったであろう各分野の研究者たちが力を合わせていることの一例である。

今回のAACR年次総会では、こうした例が数多くある。総会のテーマは「革新と協同:進歩への道」である。

「チーム研究という概念は重要です」と言うのは、マサチューセッツ総合病院がんセンターのDr. José Baselga氏である。基礎科学の研究者と臨床医の協力が増えているだけでなく、これまでなら競争相手だったかもしれないさまざまな機関の研究者たちが、今ではプロジェクトの始めからデータを共有しつつあるとも述べた。

この総会のプレナリーセッションでは、基礎研究が癌の発見、治療、予防の新たなツールに転換しつつあるとの講演がいくつか行われた。NCI総長Dr. Harold Varmus氏も、同氏が予算が不確実な時代の「緊急課題」と呼ぶ事柄について、次のように語った。これには、NCI臨床試験協同グループ(NCI Clinical Trials Cooperative Groups)の再編成、癌ゲノミクスのための新たなセンター(この分野の多様な取り組みを監督する)、世界医療のための新たなセンターや癌予防などである。

「よい科学はよい疑問から生まれる」NCIの‘Provocative Questions Project(刺激的な疑問プロジェクト)’に関する短い議論の中でVarmus氏は述べた。このプロジェクトでは、癌研究界に一石を投じる癌関連課題を創造的に検討するため、重要な疑問でありながら答えが明白でないものを専用ウェブサイトで集める。Varmus氏は、聴衆にオンライン討議に加わるよう呼びかけた。

先週、‘癌に関する連邦年次報告書(the Annual Report to the Nation on the Status of Cancer)’が発行された。新たに診断された癌(発症率)と癌による死亡が両方とも継続して減少したことが報告された。注目すべきことに、女性における肺癌死亡率が過去数十年間で初めて下がった。

プレナリーセッションでの講演で、国際肺癌学会(the International Association for the Study of Lung Cancer)常任理事のDr. Paul Bunn, Jr.氏は、このニュースを歓迎した。しかし、肺癌症例の半数は元喫煙者において発症しており、喫煙をやめた人の肺癌リスクを低下させる新たな手段が必要であると述べている。

Bunn氏は、iloprost[イロプロスト]という薬剤が元喫煙者の肺組織の損傷修復に効果があるかを調べる臨床試験の結果を発表した。研究者らは、気管支内異形成(endobronchial dysplasia)と呼ばれる異常な細胞を用いて、薬剤の効果を評価した。彼らは、ある予防的化学療法剤が気管支内異形成に及ぼす効果を測定することにより、その薬剤が効果的であるかを予測できると結論づけた。

予防的化学療法剤候補とその有効性を評価するためのマーカー(因子)を特定するためには「チーム研究という手法はきわめて重要です」とテキサス大学MDアンダーソンがんセンターのDr. Waun Ki Hong氏は、各個人に適した肺癌予防手法について、プレナリーセッションで講演した。

新しい技術によって臨床試験をデザインする方法にも変化が促されていると述べたのは、やはりMDアンダーソンのDr. John Heymach氏である。「これまでは、(研究の過程で)興味深いアイデアが浮かんだら、再度立ち戻って腫瘍を調べ解明しようとしていただろう。」だが、現在の目標は、できる限り多くの情報を前向きにとらえることであると彼は語った。

Heymach氏は、数年後には、日常的に腫瘍の全ゲノムシークエンス解析が行われるだろうと予測した。この方向への第一歩として、AACR年次総会で、エストロゲン受容体陽性乳癌女性50人の腫瘍を解析した早期結果が報告され、この疾患の遺伝子の異質性が示された。

今後期待されるのは、後ろ向きにではなく、治療の初期に全ゲノム解析を行い、医師が患者の腫瘍の遺伝子変化に基づいて治療法を選択できるようになることであると臨床試験責任医師のワシントン大学医学校のDr. Matthew Ellis氏は述べた。

癌との闘いを考えたとき、まず思いつくのは癌治療である、とBlackburn氏は述べた。「しかし、私たちはもっと予防について考えなくてはなりません」。予防とは、癌が徐々に進行していく前に食い止めるという意味でのきわめて早期の予防、そして疾患を克服した人における再発予防という意味でもあると同氏は語った。

これは「死への軌跡をゆっくりと展開する癌の生態を妨害する」という考えであり、「裏にある生態をぜひとも解明しなくてはならないのです」とBlackburn氏は述べた。

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鈴木 久美子 訳

後藤 悌(呼吸器内科/東京大学大学院医学研究科) 監修

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