テリー医務総監の警告から50年、アメリカ喫煙事情の今/MDアンダーソンがんセンター | 海外がん医療情報リファレンス

テリー医務総監の警告から50年、アメリカ喫煙事情の今/MDアンダーソンがんセンター

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テリー医務総監の警告から50年、アメリカ喫煙事情の今/MDアンダーソンがんセンター

テリー医務総監の警告から50年、アメリカ喫煙事情の今
MDアンダーソンがんセンター
2013年11月7日

たばこにまつわる定説をMDアンダーソンがんセンターの専門家が検証、新たな事実を提供

喫煙と健康に関する報告書が1964年1月に発表されて以降、米国の喫煙者数は大幅に減少したにも関わらず、喫煙に関する誤った認識が横行している。テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者たちは、たばこにまつわる定説を払拭し、最新の教育的な知識を提供することで、この認識を変えようと取り組んでいる。

「1964年以降、禁煙教育や禁煙実現に向けた法的取り組みが功を奏し、喫煙率は半分以下に減少した」と、MDアンダーソンがんセンター医療政策副部長のLewis Foxhall医師は言う。

「しかし今なお、肺癌は米国で最も死亡率の高い癌である。が、それと同時に、最も予防が可能な癌でもある」とも述べている。

報告書発表から50年を迎えるにあたり、Foxhall氏とMDアンダーソンがんセンターの研究者たちは、たばこにまつわる定説を払拭し、現在のたばこ問題の本質を見極めることで、この国民的問題に対する意識を高めるよう、国民へ啓発を行っている。

定説1:今やたばこを吸う人はほとんどいない。
検証結果喫煙者数は未だおよそ4,380万人で、これは米国の5人に1人の割合に相当する。

「現在の喫煙者の割合は全人口の19%で、1965年当時の42%に比べると大幅に減少しているが、実際の喫煙者数はほぼ変わっていない」と、Foxhall氏は説明している。

1965年当時の喫煙者数はおよそ5,000万人。「人口の増加により、喫煙者数が減ったように見えるだけだ」と、同氏は言う。

「新たな喫煙者を増やさないよう、そして喫煙者にはたばこを止められるよう、様々な取り組みを行っている」と言うのは、MDアンダーソンがんセンター行動科学部長で教授のEllen R. Gritz博士。

「米国レガシー財団が行っている全米規模の禁煙推進キャンペーンなどのプログラムのおかげで、若年層の喫煙者は減っている。しかし、こうしたキャンペーンを行うための資金調達には限界がある上、たばこ業界からつぎ込まれる法外とも言える多額の広告費用には、とても歯が立たない」と、米国レガシー財団で前副理事長を務めたGritz氏は言う。

定説2:電子たばこ、葉巻、水たばこは安全である
検証結果:たばこには依存性の高いニコチンが含まれている。このニコチンがたばこが有害である原因であり、電子たばこや水たばこを含むすべてのたばこ製品に含まれている。

2008年、たばこメーカー大手5社による各種たばこ製品(電子たばこ、フレーバーシガー、シガリロ、水たばこ等)の広告費およびマーケティング費は90億9,400万ドルに達した。

「たばこ業界は、新たな若年喫煙者を増やすため、このような新しい製品を次々と売り出している」と、MDアンダーソンがんセンターたばこアウトリーチ教育プログラムディレクターで医学博士のAlexander Prokhorov氏は言う。「こうした新しい製品は、従来のたばこほど有害ではないと宣伝されているが、若者が一度ニコチンを知ってしまうと、他のたばこ製品も試してみようとする可能性が高い」。

「電子たばこ は可燃性たばこに比べ、含まれる有害物質は少ないかもしれないが、現時点で電子たばこに対する規制がなく、ニコチン含有量やその他の物質の品質管理はメーカー任せになっている」と言うのは、MDアンダーソンがんセンター行動科学部副部長兼たばこトリートメントプログラムディレクターで、医師のPaul Cinciripini教授。

「現時点で、電子たばこが禁煙の手段として有効かどうかを決めるには、極めて時期尚早である」とも言う。

定説3:付き合いで週2,3本程度吸う機会喫煙であれば健康への害はない
検証結果:どのような形であろうと、喫煙そのものが有害である。

「無害な喫煙というものがあるのかは科学的に証明されてはいないし、ここかしこで2,3本吸うというだけでもたばこへの常習性がある」と、MDアンダーソンがんセンター医療格差研究長のDavid Wetter医学博士は言う。「これまでのデータから、禁煙してもたった一吹かしで再び喫煙者になる可能性はあると言える」。

定説4:戸外であれば間接喫煙の危険はない。
検証結果:間接喫煙の危険性がないということはない。短時間でも影響がある。

家や職場での受動喫煙曝露により、心臓疾患のリスクは25-30%、肺癌では20-30%増加する。これは副流煙に含まれる発癌性物質が、喫煙により体に取り込む量よりも多いためである。

家庭では、屋内だけでなくその周辺での喫煙を禁止するのが正しい、とWetter氏は言う。

最新情報を入手し行動を起こしましょう。

「たばこに関する教育を受け、自分以外の人と知識を共有することでアクションを起こせる」と、MDアンダーソンがんセンターの癌予防・集団科学部副部長のErnest Hawk医師は言う。「喫煙を辞め、健康を享受するのに遅すぎるということはない」。

MDアンダーソンがんセンターが打ち出している癌5年生存率の大幅改善計画、「ムーンショット(月への打ち上げ)計画」の一環として、Hawk氏らは施設、地域社会、州、国各レベルでの喫煙規制に取り組む包括的な計画を進めている。

「この計画では、MDアンダーソンがんセンターが施設、街、地域、州、国、世界レベルで100以上のたばこ撲滅実現のためのアクションを政策、教育、地域サービスの分野で推し進めている」と同氏は言う。たばこ研究の主導的立場にあるわれわれが、あらゆる形で禁煙に取り組むリーダーシップを取ることが不可欠だ」。

米国では毎年20万人が肺癌と診断され、およそ15万人が死亡している。そのうち、肺癌による死亡者のほぼ90%が喫煙を原因とし、癌による死亡者全体の30%を占めている。
############
【上段画像内語句訳】

50年で喫煙率は半分に:
しかしいまだ根絶には至らず

1964:テリー医務総監による喫煙と健康に関する報告書発表。
その後50年間で発表された追加報告書は30以上

喫煙者数
1965:5,000万人
2011:4,380万人
1回以上喫煙した17歳の数
1975:10人中7.5人
2012:10人中4人

(右側矢印中)
2009
52%
1965
24%
禁煙者数

 

【下段画像内語句訳】

喫煙により発生する費用と被害

喫煙による死亡者は1日1,000人以上

女性の癌死亡者50人中、13人が肺癌、7人が乳癌である。 男性の癌死亡者50人中、14人が肺癌、5人が前立腺癌である。

毎年つぎ込まれる費用は数百億ドル規模

医療費
960億ドル
業界別広告費
たばこ:80億ドル
ファーストフード:30億ドル
携帯電話:20億ドル
医薬品:20億ドル

******
今泉眞希子 訳
後藤 悌 (呼吸器内科/東京大学大学院医学系研究科)監修
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原文


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