ヨガが乳癌サバイバーの倦怠感や炎症を緩和/オハイオ州立大学総合がんセンター | 海外がん医療情報リファレンス

ヨガが乳癌サバイバーの倦怠感や炎症を緩和/オハイオ州立大学総合がんセンター

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ヨガが乳癌サバイバーの倦怠感や炎症を緩和/オハイオ州立大学総合がんセンター

オハイオ州コロンバス–オハイオ州立大学総合がんセンター(OSUCCC – James:Arthur G. James Cancer Hospital & Richard J. Solove Research Institute)における最近の研究によると、乳癌サバイバーがわずか3カ月間でもヨガを実践することで、倦怠感が緩和され、炎症が軽減される可能性があることが新たにわかった。ヨガの練習量が多い参加者ほど、結果は良好であった。

試験開始後6カ月(臨床試験によるヨガの練習が終了して3カ月)の分析では、ヨガを実践した女性の方がヨガをやらなかったグループより、倦怠感が平均57%少なく、炎症は最大20%軽減されていた。

多くの試験によって、ヨガにさまざまな利点があることが示唆されているが、わかっているかぎりでは、今回の試験が生物学的評価を含めたランダム化比較対照試験の最大規模のものであると筆頭著者のJan Kiecolt-Glaser博士は言う。Kiecolt-Glaser氏らは、試験のために女性200人を募集した。

試験はJournal of Clinical Oncology誌に掲載された。

このランダム化比較対照臨床試験に参加するには、試験開始前に乳癌の全治療を終了している必要があった。応募できるのはヨガの初心者にかぎられた。

参加者は少人数のグループに分かれて、週に2回、12週にわたってヨガに取り組んだ。対照群に組み入れられた女性は待機組として、試験終了後に同じヨガのセッションを受けることになっていた。対照群の女性は、試験期間中は通常の生活を送り、ヨガはやらないように指示された。

「試験によって、数カ月間の軽いヨガでも、乳癌サバイバーには実質的な効果がもたらされる可能性が示されました」とオハイオ州立大学のKiecolt-Glaser教授(精神医学および心理学)が言う。

「この試験結果は、乳癌サバイバーにかぎらず、倦怠感や炎症の問題を抱える人々に広く適用できるのではないかと考えています」。Kiecolt-Glaser氏はThe OSUCCC – Jamesがんコントロールプログラムおよび行動医学研究所(Institute for Behavioral Medicine Research)の研究員でもある。

研究チームが乳癌サバイバーに焦点を当てたのは、過酷な治療によって体力が極度に消耗する患者がいるためであるという。

「乳癌サバイバーが直面する問題のひとつに、心肺持久力の大幅な低下があります。患者は治療によって衰弱し、疲れ果てています。疲れているためにからだを動かさなければ、ますます動けなくなるという悪循環に陥ります」とKiecolt-Glaser氏は言う。「このことがひとつのきっかけとなって、われわれは、癌サバイバーでは炎症が亢進しているのではないか、炎症を軽減する何らかの介入がきわめて有益ではないかと考えるようになりました」。

慢性炎症は、冠動脈心疾患、2型糖尿病、関節炎、アルツハイマー病、さらに加齢に伴う健康の悪化や心身の機能低下など数々の健康問題に関連している。

試験デザインと方法

参加者の倦怠感、活力レベル、抑うつ症状、睡眠の質、身体活動状況および食物摂取状況を評価するために、試験参加者全員にさまざまな調査票に回答してもらった。さらに、試験開始前に血液検体を採取し、数種類の炎症関連タンパク質の濃度を測定した。

参加者の年齢は27歳から76歳と幅広く、最後に受けた手術または放射線治療からの期間も2カ月から3年とさまざまであった。Kiecolt-Glaser氏によると、このように年齢、癌のステージ(0~3A)および治療方法が多様な女性を意図的に登録したのは、試験結果をさまざまな癌サバイバーに広く適用できるようにするためであったという。

ヨガのグループはそれぞれ4~20人で構成され、週に2回、90分のクラスで全員が同じポーズを練習した。参加者には自宅でもヨガを行うように勧め、練習時間の合計を1週間ごとに記録してもらった。

試験の介入期終了直後、ヨガ群の女性の報告では、非ヨガ群に比べて倦怠感のスコアが平均41%少なく、活力のスコアは平均12%高かった。

参加者の炎症の程度を評価するため、Kiecolt-Glaser氏らは、炎症性サイトカインと呼ばれる炎症マーカーのうち、血液中の3種類のタンパク質の活性化を測定した。免疫応答を刺激する化合物を注射することにより、タンパク質の活性を誘導した。タンパク質は、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン1β(IL-1β)および腫瘍壊死因子α(TNF-α)であった。

ヨガのセッション終了直後から3カ月後、炎症性サイトカインの濃度は3種類ともヨガ群の方が低かった。非ヨガ群に比較すると、TNF-αで平均10%、IL-6で平均11%およびIL-1βで平均15%低いことがわかった。

「この結果には本当に驚きました。というのも、運動に関して検討した最近の数件の試験から、著しく過体重であるか代謝障害がある場合を除いて、運動による介入が必ずしも炎症の軽減につながるとはかぎらないことが示唆されていたからです」とKiecolt-Glaser氏は話す。「われわれの試験では参加者の体重は減少しませんでしたが、炎症には著明な軽減が認められました。これは生物学的に特に特筆すべき結果でした」。

ヨガの頻度が高いほど効果も高い

副次的評価項目の解析から、ヨガの練習回数が多い参加者ほど、倦怠感、活力および抑うつ症状の変化が大きく、さらに3つの炎症性サイトカインのうち2つが平均4~6%減少していることが明らかになった。このほか、ヨガ群の女性は、対照群よりも睡眠の質が有意に改善したと報告している。

「ヨガには、瞑想、呼吸法、ストレッチおよび筋力強化などさまざまな要素があります。このうち、われわれは呼吸法と瞑想の部分が、試験でみられた変化のいくつかの点できわめて重要であったと考えています」とKiecolt-Glaser氏は話す。

試験開始後6カ月(介入終了後3カ月)に参加者を対象に再度実施した分析から、ヨガ群ではその後も引き続き健康の指標に改善が認められることが明らかになった。非ヨガ群よりも、倦怠感では57%少なく、炎症は13~20%低かった。

Kiecolt-Glaser氏は次のように語る。「われわれは、このような結果をもたらしたメカニズムの一部に、睡眠の改善があるのではないかと考えています。女性がよく眠れたときに、それによって、炎症が改善した可能性があります。倦怠感が緩和されれば、他の活動にも徐々に取り組めるようになります。ヨガによって、ヨガのエクササイズそのものに加えて、さまざまな効果がもたらされたものと思われます」。

この試験は米国国立癌研究所(grants R01 CA126857, R01 CA131029, K05 CA172296, UL1RR025755, and CA016058)の支援を受けた。

この試験の共著者はオハイオ州立大学の以下の研究員である:

Ronald Glaser, PhD; of the Department of Molecular Virology, Immunology and Medical Genetics; Jeanette Bennett, PhD; of the College of Dentistry; Rebecca Andridge, PhD, and Juan Peng of the College of Public Health; Charles Shapiro, MD, William Malarkey, MD, Rachel Layman, MD, Ewa Mrozek, MD of the Department of Medicine; and Charles Emery, PhD,  of the Department of Psychology. Glaser, Bennett, Emery and Malarkey are also investigators in the Institute for Behavioral Medicine Research.

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中村幸子 訳
大野 智(腫瘍免疫/早稲田大学・東京女子医科大学)監修
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原文

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