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強力な慢性リンパ性白血病(CLL)薬イブルチニブの標的をマウスで確認/オハイオ州立大学総合がんセンター

  • 2014年2月13日

2013年12月18日
オハイオ州立大学
・試験段階の薬剤イブルチニブ(ibrutinib)は、慢性リンパ性白血病(CLL)に対してきわめて優れた治療効果を示すことがあるが、イブルチニブの主な標的であるBTK分子が白血病の制御に重要であるかが明らかでない。

・この試験では、CLLにおけるBTKの重要性を検討するため、遺伝学的方法およびイブルチニブを用いてBTKの機能を阻害した。

・BTKの欠損により、CLL細胞の増殖が著しく抑制され、動物モデルではCLLの発症が大幅に遅くなった。イブルチニブおよび今後のCLL治療薬にとって、BTKが重要な標的であることが裏づけられた。

 

オハイオ州コロンバス–オハイオ州立大学総合がんセンター-Arthur G. James Cancer Hospital and Richard J. Solove Research Institute(OSUCCC – James)の研究グループによって、試験薬イブルチニブの標的分子が、成人の白血病では最も頻度の高い慢性リンパ性白血病の発症にきわめて重要であることが確認された。

イブルチニブは、これまでに実施された臨床試験の多くで、慢性リンパ性白血病(CLL)患者に顕著な効果を示している。イブルチニブは、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)と呼ばれる分子を標的とし、BTKを不可逆的に阻害することにより、細胞増殖を促進する重要なシグナルの伝達を遮断する。

しかし、イブルチニブはCLL細胞において、その他の分子も阻害する。この分子は、BTKと同じくキナーゼと呼ばれるタンパク質で、研究グループによると、CLL細胞の生存に重要である可能性があるという。

「イブルチニブは選択性が低いので、CLLではBTKが真に重要な標的ではなく、今後の治療薬の開発では別の分子に焦点を当てる必要があるという考え方もできます」と医学部血液学部門准教授でOSUCCC – James研究員でもある試験責任者のAmy Johnson博士は言う。

しかし、今回の試験でBTK阻害の有効性が確認され、試験結果がBlood誌に掲載された。

「われわれの試験から、BTKがCLLでは重要な治療標的であることが明らかになりました」と血液学部門助教でOSUCCC – James研究員でもある筆頭著者のJennifer Woyach医師は述べる。「BTKのみ不活性化すると、マウスモデルにおいてCLLの発症が遅くなり、CLLではBTKが臨床的に重要な標的であることが確認されました。このことから、CLLでは、イブルチニブなどのマルチキナーゼ阻害剤に加え、選択的BTK阻害剤を開発することが妥当であるという可能性が考えられます」。

BTKがCLLでどのような役割を果たすのかを検討するため、Johnson氏やWoyach氏らの研究グループは、患者由来のCLL細胞および2種類のCLLマウスモデルを用いた。マウスモデルのひとつには、ヒトのCLLにきわめて類似した悪性腫瘍を自然発症するマウスを使用した。グループは、遺伝学的方法およびイブルチニブを用いた薬理学的方法によってBTKの活性を阻害した。

主な試験成績は以下の通りである。

患者31人に由来するヒトCLL細胞でBTKの発現を抑制すると、腫瘍細胞の生存期間が有意に短くなった。

点変異によってBTKを不活性化したマウスモデルの方が、BTKが活性化しているマウスより生存期間が有意に長かった(18.3カ月に対して13.2カ月)。

CLL自然発症マウスモデルでは、イブルチニブ投与群マウスの方が対照群よりもCLLの診断からの生存期間が有意に長かった(46日に対して24日)。

CLL自然発症マウスモデルにイブルチニブを投与すると、対照群に比べてCLLの発症が有意に遅くなり(10.7カ月に対して7.0カ月)、全生存期間も長くなった(14.5カ月に対して12.3カ月)。

Johnson氏は「総体的にみて、試験ではBTKがCLLの治療標的として有効であることが確認されました。さらに、選択的キナーゼ阻害剤は、イマチニブが慢性骨髄性白血病で有効性を示すように、CLLでも優れた治療効果が得られる可能性を強く考えます」とコメントする。

この研究は以下から支援を受けた。
Leukemia and Lymphoma Society, D. Warren Brown Foundation, Mr. and Mrs. Michael Thomas, Harry Mangurian Foundation, the NIH/National Cancer Institute (grants CA140158, CA133250-05, CA177292, CA095426) and the Italian Association for Cancer Research (grant AIRC IG_12939)

この試験に参加した他の研究者は以下のとおりである。
Amy S. Ruppert, Matthew R. Stefanovski, Virginia M. Goettl, Kelly A. Smucker, Lisa L. Smith, Jason A. Dubovsky, William H. Towns, Jessica MacMurray, Melanie E. Davis, Bonnie K. Harrington and John C. Byrd, The Ohio State University; Engin Bojnik, Stefania Gobessi and Dimitar G. Efremov, International Centre for Genetic Engineering & Biotechnology, CNR Campus, Rome; Luca Laurenti, Catholic University Hospital, Rome; and Betty Y. Chang and Joseph J. Buggy, Pharmacyclics.

オハイオ州立大学総合がんセンター– Arthur G. James Cancer Hospital and Richard J. Solove Research Instituteは、癌のない世界をめざし、科学研究を優れた教育や患者中心の医療に生かすことにより、予防、検診および治療の向上に努めている。

オハイオ州立大学総合がんセンターは、全米に41施設しかない米国国立癌研究所(NCI)の指定する総合がんセンターのひとつであり、4箇所しかないNCIの支援を受けて第1、2相臨床試験を実施する施設のひとつである。オハイオ州立大学がんセンターのプログラムは最近NCIから「exceptional(非常に優れている)」の評価を受けた。NCIの評価では最高のランクである。このプログラムの成人医療部門(228床)に対してJamesはLeapfrog Groupから「最高の病院」と評価された。さらに、U.S.News & World Reportによって、全米トップレベルのがん病院のひとつに選ばれている。

※監修者注: 原文で chronic leukemia と記載している部分は、chronic lymphocytic leukemia を指すものであると解釈し、本ページでは、該当箇所を全て、慢性リンパ性白血病 と訳している。)

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中村幸子 訳
佐々木裕哉(小倉記念病院 血液内科)監修
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原文

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