シクロホスファミドによる骨髄移植後の拒絶を阻害する仕組みが明らかに/ジョンズホプキンス大学 | 海外がん医療情報リファレンス

シクロホスファミドによる骨髄移植後の拒絶を阻害する仕組みが明らかに/ジョンズホプキンス大学

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シクロホスファミドによる骨髄移植後の拒絶を阻害する仕組みが明らかに/ジョンズホプキンス大学

2013年11月14日

化学療法薬シクロホスファミドが骨髄移植後の患者に起こる移植片対宿主病(GVHD)を予防する理由が、ジョンズホプキンス大学の研究結果によって明らかになった。本研究では、シクロホスファミドの毒性作用を回避し、致死的GVHDの発症を防ぐ免疫系細胞に焦点を当てている。

11月13日付けのScience Translational Medicine誌電子版の発表によると、この研究結果により、GVHDと移植骨髄拒絶の予防における治療精度の向上および移植後にもなお潜在的に存在する、がんの再発予防と治療において、新たな可能性が見出された。

「移植片拒絶とGVHDを予防しながら、がんを攻撃する免疫細胞を傷つけない治療法を見出すことが、骨髄移植のにおける究極の目標です」と、ジョンズホプキンス大学キンメルがんセンター腫瘍学准教授のLeo Luznik医師は言う。

「移植後にシクロホスファミドを投与すれば、GVHDの予防に役立つことは前からわかってきていましたが、この研究はなぜそうなるかという謎の重要な手がかりとなるでしょう」。

GVHDはドナーの骨髄から新たに移植した免疫細胞が患者の体を攻撃することで起こる。一般的に使用されている免疫抑制剤は急性GVHDに対しては有効であるが、長期に及ぶ治療を必要とする慢性GVHDに対しては有効ではない。慢性GVHDでは、重篤な障害を引き起こし死亡する例もある。

シクロホスファミドは、化学兵器であるナイトロジェンマスタードから開発された血液がん治療薬である。2000年代初頭、ジョンズホプキンス大学の研究者である Leo Luznik氏とEphraim Fuchs氏は、このシクロホスファミドを骨髄移植3日後に患者に大量投与することで急性および慢性GVHDを予防することを発見した。

また、移植後のシクロホスファミド投与が、従来の(HLA)適合移植だけでなく、最近行われるようになってきた(HLA)半合致移植の安全性をも高めることが、同大学の医師たちにより明らかになった。

今日、世界中の医療機関が、移植後のシクロホスファミド投与に関する同大学のプロトコルを利用しており、コストの面でも有利なことから、骨髄移植の投薬計画で使用される治療薬の主流になりつつあると、 Luznik氏は言う。

シクロホスファミドが作用する仕組みに関して、その最初の手がかりのいくつかは、1980年代にジョンズホプキンス大学の研究者らによって提示されていた。すなわち、アルデヒド脱水素酵素(ALDH)を高濃度に含んだ幹細胞を除いて、シクロホスファミドがドナーから移植された骨髄細胞に障害を与えるという事実を彼らは発見したのだ。

ALDHを含んだ幹細胞はシクロホスファミドの毒性作用を回避し、患者の免疫システムを再構築する働きがある。

このALDH含有量を個々の細胞レベルで測定する試薬を開発したのが、ジョンズホプキンス大学教授であり、同大で骨髄移植プログラムディレクターを務めるRichard Jones医師であり、この試薬は現在広く使用されている。

しかし、移植後のシクロホスファミド投与が慢性および急性GVHDの発症を抑制するメカニズムについては解明されなかった。

Luznik氏率いる研究チームは、移植後にシクロホスファミドを投与した患者の血液中に存在する免疫細胞の型を一覧にし、その中から制御性T細胞と呼ばれる、自己免疫応答を抑制することで知られる免疫細胞の一種に着目した。移植後にシクロホスファミドを投与した患者では、制御性T細胞の数が多く、培養細胞による実験では、シクロホスファミドによる制御性T細胞数の減少は見られなかった。

ジョンズホプキンス大学の研究チームは、DNAを増幅させるポリメラーゼ連鎖反応や Jones氏が開発したALDH副産物検出試薬を用いて、制御性T細胞がALDHを高発現していることを突き止めた。

「これらの制御性T細胞は移植後のシクロホスファミドに耐性があり、ドナーの骨髄が自己免疫的な反応を起こすことを抑制し、GVHDの発症を防ぐと考えられます」と、本研究の筆頭著者であり、ジョンズホプキンス大学キンメルがんセンターの臨床研究員を務める Christopher Kanakry医師は言う。移植後に標準的な免疫抑制剤を投与した患者では、シクロホスファミドを大量投与した患者とは対照的に、血液中の制御性T細胞数の回復が遅いとも付け加えている。

また、ヒト培養細胞による実験では、ALDH阻害薬が制御性T細胞の増殖能力とシクロホスファミドに対する自己防衛能力を奪うこともわかった。

移植後のシクロホスファミド投与に関する研究は現在も継続しており、移植直後の再発防止のための既存の治療方法に本研究の結果が付け加えられる可能性もあるだろうと Luznik氏は言う。

「今回の研究成果により、移植後のシクロホスファミド投与のさらなる普及にもつながる」とも付け加える。

本研究は、アメリカ国立衛生研究所、国立癌研究所、国立心肺血液研究所(助成HL110907,、CA122779,、CA15396,、UL1-RRO25005、HL007525)、米国臨床腫瘍学会(ASCO)がん克服基金、大塚製薬株式会社の資金援助を受けた。

本研究で用いた試薬(Aldefluor)は、Richard Jones氏が開発し、特許権は同氏に帰属する。Aldagen社とジョンズホプキンス大学間のライセンス契約に基づき、大学側がロイヤリティーの一部を受け取る権限を有する。本契約条件は利害対立ポリシーに従って、大学により管理されている。

本研究における他の研究者は以下のとおり。Sudipto Ganguly, Marianna Zahurak, Javier Bolaños-Meade, Christopher Thoburn, Brandy Perkins, Ephraim Fuchs and Allan Hess.

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今泉眞希子 訳
佐々木裕哉 (小倉記念病院 血液内科) 監修
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原文

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