ドッグフード添加物で化学療法に伴う末梢神経障害の予防できるか?/ジョンズホプキンス大学 | 海外がん医療情報リファレンス

ドッグフード添加物で化学療法に伴う末梢神経障害の予防できるか?/ジョンズホプキンス大学

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ドッグフード添加物で化学療法に伴う末梢神経障害の予防できるか?/ジョンズホプキンス大学

2013年9月19日

ジョンズホプキンス大学の研究者らは、一般的な保存剤によりマウスでは末梢神経障害による疼痛や障害を予防できることを発見した。

試験管内の細胞やマウスを使った研究により、ジョンズホプキンス大学の研究者らは、ドッグフードの保存剤として一般的に使用されている化学薬品により、化学療法剤タキソールを投与された患者の5人中4人の手足にみられるような、疼痛を伴う神経障害を予防できるかもしれないことを発見した。

米国食品医薬品局により認可されている保存剤であるethoxyquin(エトキシキン)と呼ばれる酸化防止剤は、特定の細胞タンパク質と結合し、タキソールによる損傷効果への暴露を抑制することが実験で示されたと研究者は述べている。

化学療法に付きものの吐き気を防ぐために吐き気止めを使用するように、エトキシキンの化学的特質である保護作用を足掛かりにして、タキソールを使用する前に癌患者に投与できる薬剤を開発することがわれわれの望みですと研究者は述べている。タキソール使用者の半数は末梢神経障害として知られている疼痛性障害から回復するが、残りの半数は消耗性の疼痛が頻発し、しびれやうずくような痛みが生涯にわたり続くことになる。

「大勢の乳癌、卵巣癌や他の固形癌患者に対して癌の治療にタキソールが投与されますが、そのうちの80%に末梢神経障害が発生します」と、ジョンズホプキンス大学医学部神経学神経科学教授であり神経筋部門の部長であるAhmet Höke医学博士は述べている。「化学療法のおかげで患者は長生きするようになりましたが、みじめな状態にあることがたびたびあります。われわれのゴールはまず第一に、神経障害を予防することです」。

Höke氏の研究についてのレポートはAnnals of Neurology誌電子版で公開されている。

Höke氏とそのチームは予備実験により、シャーレ内で増殖している神経細胞株にタキソールを添加すると神経変性が起きることを知っていた。一連の実験で研究者たちは、2000種の化学物質の中から、タキソールを神経細胞に添加することにより起きる変性の過程を妨げる化合物を、一つずつ確かめながら探すことを始めた。

どうやらエトキシキンは、細胞に対しタキソールの毒性作用に対する抵抗性を付与することで予防しているらしいとHöke氏は述べている。

エトキシキンの効果を確認するとすぐに、研究者らはマウスにタキソールの静脈内投与を実施し、数週間後に脚部の神経変性を認めた。しかし、マウスに対しタキソールをエトキシキンと併用投与することにより、神経変性の2分の3が予防された。

Höke氏の語るところによれば、同じ効果が人でもみられれば、QOLは大きく改善される。

Höke氏とそのチームはエトキシキンが、いわゆる熱ショックタンパク質のひとつであるHsp90と結合することを明らかにした。熱ショックタンパク質は細胞のストレス条件下において、防御的に増産される。Hsp90は細胞の品質管理官のような役目を担っており、タンパク質が必要とされる場所に輸送される前に、それが適切に形成されているかどうかを判定する。エトキシキンがHsp90と結合すると、他の二つのタンパク質、つまりataxin(アタキシン)-2とSf3b2はHsp90と結合できなくなる。この二つのタンパク質が結合できないと、細胞はこれら二つのタンパク質が機能不全であると見なし、タンパク質分解が起こり、細胞内濃度が低下する。

「われわれの研究チームは、なぜこの二つのタンパク質の過剰発現が神経に対して悪影響を及ぼすように見えるのか解明してはいませんが、われわれの研究によるとこれらタンパク質の減少により、タキソールの毒性に対する細胞の抵抗性の増加が明らかに認められました」とHöke氏は述べている。

氏とその共同研究者らは、エトキシキン投与により、疼痛を起こす癌以外の主要な二つの原因であるHIVや糖尿病による末梢神経障害における損傷に対して、神経の抵抗性増加が認められるかどうかを研究している。以前の研究から、ルー・ゲーリック病として知られているALSの稀な病態において、アタキシン-2による運動ニューロン変性が起こることがわかっており、エトキシキンやその誘導体はこの疾患のある患者に有効かもしれないとHöke氏は述べている。

末梢神経障害に悩まされている米国人は2、3千万人もいる。氏によれば、「これは公衆衛生上の大問題ですが、致命的でないためにあまり注目されていないのです」

Höke氏の研究チームは、臨床試験の実施に先立ち、エトキシキンの安全性試験について動物実験を実施したいと考えている。大量のエトキシシンはイヌには有害であると考えられていますが、ヒトで必要とされるのはドッグフードに含まれる量の20~30分の1程度でしょうと氏は述べている。エトキシキンは、梨や他の食品の変色や腐敗を防ぐ酸化防止剤として1950年代に開発されている。

ジョンズホプキンス大学ではHöke氏の他にもJing Zhu博士、Weiran Chen医師、Ruifa Mi医学博士、Chunhua Zhou学士やNicole Reed修士がこの研究に携わっている。

この研究は、Foundation for Peripheral Neuropathy、Dr. Miriam and Sheldon G. Adelson Medical Research Foundation、the National Institutes of Health’s National Institute of Neurological Disorders and Stroke (R01 NS43991)、およびJohns Hopkins Brain Science Instituteによる支援を受けている。.

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小縣正幸 訳
石井一夫 (ゲノム科学/東京農工大学) 監修
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原文

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