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ビデオが末期医療の話し合いの助けに/NCI臨床試験結果

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ビデオが末期医療の話し合いの助けに/NCI臨床試験結果

2010年1月12日掲載 更新2013年1月3日

Video Eases End-of-Life Care Discussions
2009年11月30日付けJournal of Clinical Oncology誌オンライン版に発表された記事によると、終末期医療の選択肢を解説したビデオを観た悪性神経膠腫患者は、口頭説明を聞いただけの患者と比較して、終末期の意思決定に確信を持ち、また終末期医療として積極的な治療より緩和ケアを希望する傾向にあったとのこと。

要約
終末期医療の選択肢を解説したビデオを観た悪性神経膠腫患者は、口頭説明を聞いただけの患者と比較して、終末期の意思決定に確信を持っていました。またビデオを観た患者は、終末期医療として積極的な治療より緩和ケアを希望する傾向にありました。

出典  Journal of Clinical Oncology, November 30, 2009(ジャーナル要旨参照)、(J Clin Oncol. 2009 Nov 30. [Epub ahead of print])

背景
事前指示書またはリビングウィル(Living Will)ともよばれる事前ケア計画の文書を作成する患者はほとんどいません。これらの文書には、患者が自力で話すことができないことも多い終末期に患者本人が受けたい医療の種類が記載されています。 終末期医療は次の3種の一般的なカテゴリーに分類されます。 ・延命治療−心肺蘇生法(CPR)および人工呼吸器の使用のような非常手段などです。・基礎的医療−感染症や他の治療可能な疾患に対する治療などですが、CPRや人工呼吸器の使用は含みません。・緩和ケア−患者が痛みを感じないようにすることおよび症状を和らげることを目的とし、延命治療や感染症および他の治療可能な状態に対する治療などは行いません。 進行癌患者は自身の終末期医療の計画にかかわりたいことが調査により明らかにされています。しかし、医師と患者のあいだのコミュニケーション不足や、患者が多くの場合複雑な医療用語を理解していないことから終末期医療の話し合いは難しいものとなっており、詳細な情報を受けた上での自己決定(informed decision)は限られたものとなっています。

試験
終末期治療の選択肢を解説したビデオが、患者が詳細な情報を受けた上での自己決定をする際に役立つかどうかを調べるため、悪性神経膠腫患者(脳腫瘍の一種)50人をランダム化臨床試験に組み入れました。悪性神経膠腫は比較的広範囲の年齢層に患者がいることから研究対象に選ばれました。本試験では、患者は32歳から77歳でした。 患者は、口頭説明グループ(27人)またはビデオグループ(23人)に無作為に割り付けられました。口頭説明グループの患者は、終末期医療の3つの分類と各医療タイプの限界(例えば、CPRはほとんどの進行癌患者に効果がないことや緩和ケアは通常再入院がないことなど)について口頭の説明を聞きました。ビデオグループの患者は同じ口頭説明を聞いた後、説明されている医療の視覚的イメージに合わせて同じ口頭説明が入る6分間のビデオを観ました。 口頭説明またはビデオの後、各患者の終末期医療の種類に対する意向およびCPRの希望の有無について記録しました。また、説明された各医療のタイプについて理解しているかおよびビデオ体験が快適であったか質問しました。 本試験の試験責任医師はマサチューセッツ総合病院の内科医であるAngelo Volandes医師でした。The Foundation for Informed Medical Decision Makingおよびthe National Institute on Agingより資金提供を受けました。

結果
試験開始前には、口頭説明グループの8人がCPRを希望し、14人が拒否し、5人が未決定でした。この数は口頭説明を聞いた後でも同様(11人が同意、16人が拒否)でした。ビデオグループでは、ビデオを観る前に8人がCPRを希望し、11人が拒否し、4人が未決定でしたが、ビデオを観た後、CPRを希望したのは2人だけで、21人が拒否しました。 口頭説明グループでは、口頭説明を聞いた後、7人が延命治療を、15人が基礎的医療を、6人が緩和ケアを選びました。ビデオグループでは、ビデオを観た後、誰も延命治療を選ばず、1人が基礎的医療を、21人が緩和ケアを選び、1人はわからないと回答しました。ビデオグループの参加者は、議論されている医療介入についての知識がかなり増加したと報告しました。 ビデオを観た全患者が本体験は「非常に快適」(83%)または「やや快適」(17%)と報告し、同じような終末期医療の選択に直面している他の患者がいた場合、このビデオを「絶対に薦める」(83%)または「おそらく薦める」(17%)と述べました。

コメント
「本試験で明らかになった最も重要な事の一つは、患者はビデオを観ていて非常に快適だったということです。多くの場合、医師は終末期医療について話すことが難しいと思いますが、患者は勉強して終末期医療について自己決定できるようになりたいと考えていることをわれわれは実感しています。」とVolandes医師は述べました。 「患者が終末期の医療介入を選ぶ際、多くの場合、医療介入によってもたらされる現実について誤解しているのではないかと私は懸念しています。ビデオの目的は、臨床の現実の正確な映像を患者に提供することです。われわれは患者が何を望んでいるかを聞くだけではなく、患者が自己決定をするために必要な全ての情報を提供できるようにしたいのです」とVolandes医師は述べました。 「患者とこのような困難な会話をする際、患者が何を望んでどう感じているか、つまりこの深刻な病の心理状態だけが問題ではないのです。終末期であっても、自己決定するために必要な数々の情報があるので、われわれは患者と話さなければならないのです」とNCI’s Community Oncology and Prevention Trials Research Groupの緩和ケア研究の代表者である Ann O’Mara医学博士・正看護師も賛同しました。

制限事項
本試験のビデオグループは、口頭説明とビデオの両方を通じて同じ情報を繰り返し与えられました。この繰り返しがビデオグループの患者の知識の増加に寄与している可能性がありました。しかし、Volandes医師は繰り返し自体の影響については疑問視しています。[患者が言うには、『話を聞いても分からなかったが、画像を観ると言葉の意味することが分かった』というのです」とVolandes医師は説明しました。 また本試験は規模が小さく、一つの教育病院で一種の癌の治療を受けている主として白人の十分な教育を受けた患者を対象としました。したがって、本結果を一般化して、他の患者グループに適用することはできません。本試験の研究者らは2010年に大規模な多施設共同試験を開始しています。この試験で地方の病院および都会の病院の両方から、さまざまな癌の多様な患者集団におけるビデオ使用の効果を調べます。

コメント
2012年12月10日、大規模な多施設共同試験(CPRについてのみ口頭説明とビデオ視聴)の結果がJournal of Clinical Oncology誌に公表されました。研究者らによると、CPRを希望した患者の数は、口頭説明を受けた患者(48%)よりビデオを観た患者(20%)の方が少なかったことが分かりました。6週間又は8週間後に患者に連絡をとり再度希望を聞いたところ、CPRを希望した患者の割合は変わりませんでした。「ビデオは、患者が確実にCPRを理解し、終末期における自身の希望を発言できるようにすることでよりよい意思決定をするための重要な手段であることが本試験により示されました」と著者らは結論づけています。

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張 知子 翻訳
橋本 仁(獣医学) 監修
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