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がんに関する難しい決定/Choosing Wisely

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がんに関する難しい決定/Choosing Wisely

質問すべき5つの検査と治療

がんと診断されたとき、多くの人々が治療のためにできることは全てやりたいと考えるのは当然のことです。しかし、検査や治療、処置は、場合によっては不要なばかりか、有害でさえあります。「時には、より少ないことが、実際にはより豊かなのです」と、Schnipper医師(ボストン、ベスイスラエル・ディーコネス医療センター腫瘍/血液学科長、がんセンター診療部長)はいいます。「大切なことは、あなたがやろうとしていることがより長く、より良く過ごすのに役立つのかと考えることです」Schnipper医師は、米国臨床腫瘍学会(ASCO)作業部会(がん診療、がん研究の専門家グループ)長で、この部会は、大半の患者にとってエビデンスによる裏付けがない5つの検査と治療を特定しました。つまり、あなたと担当医がともに、あなたの病状において適切であると判断しない場合、通常行うべきではないということになります。「これは、決して行うなというリストではありません。」とDoug Blayney医師、スタンフォード大学(カリフォルニア、スタンフォード)がん研究所の医学部長でASCO元会長かつ作業部会のメンバーはいいます。「担当の医療従事者と選択肢について相談し、賢い選択をするために助けとなる道具なのです」。

1.終末期のがん治療

考えうる最善の医療を尽くしても、がんは広がり続けることがあります。そこで疑問は、「次はどうするか?」です。がんの治癒を目的とした治療の中止はつらいことです。しかし、身体、精神、患者や家族のこころの奥底に焦点を当てた必要な治療に重心をうつすことで、患者に残された時間の質が改善され、時には延命さえ可能なことがあるのです。

ASCOのガイドラインでは特に、乳がん、大腸がん、肺がんなどの固形がんについて述べています。これらのがんはかなり予測できる経過をたどります、とJ.Smith医師(ボルチモア、ジョンホプキンス大学医学研究所緩和医療部長でASCO作業部会のメンバー)はいいます。

「初回治療開始時は、良好で長期的な効果を期待します。しかし、治療にも関わらずがんが増大する場合、利益を得る確率は次第に低下していきます」とSmith医師は述べます。ほとんどの例で、3種類の異なる治療を受けてもがんが増大・浸潤する場合、さらなる治療が生存期間を改善することはありません。実際、死に至るような重篤な副作用が起ることもあるのです。

推奨
ASCOは、進行固形腫瘍患者で下記の項目すべてに該当する場合、がんに対する積極的治療から症状緩和を目的とする支持療法または緩和ケアへの移行を推奨しています。

•これまでの治療が有効でなく、エビデンスに基づいた今後の治療法がない。

•全身状態が不良−自分自身のことが出来ず、一日の大半はベッド上または椅子で過ごし、日常活動に支障のある患者。

•臨床試験に不適格な患者(臨床試験参加に興味がある場合は、対象となりうる試験について担当医に質問し、米国国立衛生研究所が運営するウェブサイトwww.clinicaltrial.govをチェックしてみてください)。

この推奨の背景は何でしょうか?
一部の医療機関では、半数近くの進行がん患者が無駄な苦痛を受けています、というのは、患者を助ける見込みがほとんどない化学療法が継続され、がん患者および家族の終末期への対処支援に主眼がおかれていないことが最近の調査で示されているからです。

そして、大半の腫瘍医は進行がん患者と終末期問題について話し合いますが、約4分の1はそうではありません。特に、患者の予後、治療のリスクとベネフィットについて明確な説明がされていなかった場合には、最終的に、患者は病気と戦い続けるしかないと感じる可能性があります。

支持療法を受けても助けにならないと心配する人達もいます。しかし、いくつかの研究が反対の結果を明らかにしています。緩和またはホスピスケアを受けた患者の余命は、受けなかった患者と同等以上で、生活の質も向上していました。ホスピスケアは介護者の助けにもなっていることを示唆するデータもあります。

行うべき質問
患者と介護者にとって医師との相談が必要になることがあります。「腫瘍医は患者がどれくらいのことを知りたいのか完全には把握していないことがあります。」Schnipper医師は云います。「しかし質問をすれば、医師は誠実に答えてくれるはずです」。

•私の予後はどうでしょうか? 誰も患者の余命を正確には云うことは出来ませんが、治療決定の参考となるような転帰の範囲予測は、医師ならできるはずです。

•今後の治療の目的は何ですか?がん自体の治療ですか、それとも症状の軽減ですか?がんに対する積極的治療であれば、どんな副作用がありますか、無治療の場合、予後はどうですか?

•病気の症状および副作用にはどのような対処法が最適ですか生活の質を改善できるような対応策がありますか?

•緩和またはホスピスケアの専門家と会うことを推奨しますか?

2. 早期前立腺がんに対する画像検査

医師は前立腺がんを「病期分類」するため組織と生化学的解析を行います。つまり、がんの悪性度、身体他臓器への転移の可能性を調べます。これらの検査結果で、転移が示唆されれば、転移部位を特定するため、画像検査が実施されることがあります。

しかし、ASCOは転移リスクの低い前立腺腫瘍の男性には画像検査をしないよう推奨しています。低リスク例では転移の可能性は極めて低く、画像検査追加のリスクが、予想されるベネフィットをはるかに上回るからです。

推奨
ASCOの推奨は、CT、PET、骨スキャン(骨シンチグラフィー)などの画像検査を、グリーソンスコアが6以下、PSA濃度が10ng/mL未満の早期、低グレードの前立腺がん患者の病期診断に使用しないことです。

推奨の背景は何でしょうか?
大半の前立腺患者は、がんが転移する可能性がほとんどない、極めて早期に診断されます。しかし、未だに、多くの医師や医療機関は、画像検査を含む一連の検査をすべての前立腺患者に対して同じように行っています。

不要な検査の明らかな問題点は費用です;画像検査により治療コストが数千ドル増加することがあります。しかし、患者の安全性に関するコストも増加するのです。スキャンでは時に異常所見を認めますが、実際には非がん性であることがよくあります。そのような所見を検出するために使用される追加の検査や手技で患者は時間を無駄にし、不要な不安を引き起こすのです。更に、「こうした検査のほとんどは患者に放射線を被曝させ、放射線は生涯にわたって蓄積し影響を及ぼします。」とBlayney医師はいいます。「過剰な画像検査は、実際にがんのリスクを増加させています。」

行うべき質問
もし、あなたが初めて前立腺がんと診断された場合は、病期診断のためにどんな検査が行われるのか、そして治療決定にどのように役に立つのか必ず理解するようにしてください。医師に質問すべきこと:

・私のPSA値とグリーソンスコアはどれくらいですか。その数値は私のがんの病期を決定する上でどのような意味を持つのですか?

・CT、PET、骨スキャン検査を推奨されますか?初めの検査結果が早期、低グレードのがんであった場合、これらの検査がなぜ必要か質問してください。反対に進行がんの可能性があって、画像検査が行われない場合は、なぜ行われないのか質問してください。

3. 早期乳がんに対する画像検査

乳がんは、進行度および転移している確率によって5つの病期に分類されます。早期のがんにはがんが乳管に限局する0期と非浸潤性乳管がん(DCIS)、およびI期、II期が含まれます。III期とIV期は進行乳がんに分類されます。

医師は3つの因子:原発腫瘍の大きさと発生部位、隣接リンパ節まで広がっているかどうか、転移しているかどうかに基づいて病期を診断します。

これらの因子決定の補助に、医師は患者の病歴、診断検査、身体所見、腫瘍およびリンパ節検査をよりどころとします。さらに肝機能およびアルカリフォスファターゼと呼ばれる酵素に関する血液検査も、がんが進行期か転移しているかの判定補助に有効です。

これらの検査が進行がんを示唆する場合―原発腫瘍が大きい、多くのリンパ節転移がある、または血液検査が転移の可能性を示す―医師はPET、CT、骨スキャンなどの画像検査を、転移検索目的に行うことがあります。しかし、早期乳がん女性の調査では、追加画像検査の利益は無く、コストとリスクの増加が明らかにされています。

推奨
ASCOの推奨は、PET、CT、放射線核種骨スキャンによる画像検査を、無症状の、DCISまたは臨床病期I, II期乳がんと新規に診断された人に対して行わないことです。

この推奨の背景は何でしょうか?
全ての保険会社が早期乳がんの病期診断のために実施された画像検査費用の支払いを行うわけではありませんが、このような検査を継続する医師もいます。また自分のがんは転移していないという確証を望む患者もいます。時間に追われた医師が、検査の益と害について話し合うより検査を指示した方が簡単だと考えているかもしれません。

しかし、この場合、害が安心という利益を上回ります。乳がん患者のカルテを検討した複数の研究は、がんが肝臓や骨まで転移していた割合は6%未満であり、ほとんどがIII期で、早期乳がんではなく、所見の多くが偽陽性であることを明らかにしています。

「これらの偽陽性から何が起こるのでしょう?」とBlayney医師は問いかけます。「最終的に何もないことが判るのです。しかし、追加の侵襲性検査や患者と医師の不安を引き起こします、そしてその間に適切な治療が遅れることもあります。言うまでもなく、費用や放射線被曝の可能性についての問題も生じます。全く割に合いません」。

行うべき質問
もし、あなたが新規に乳がんと診断されたのであれば、どのような病期診断検査が行われ、そして治療方針決定にどのように役立つのかを確実に理解してください。担当医師に質問してください:

•私の乳がんの病期はどれくらいですか。病期を決めるにはどんな検査が行われますか?

•乳房以外の臓器の画像検査が必要ですか?もし必要であれば、検査結果は治療にどんな影響を及ぼしますか?がんの病期が0、IまたはIIの場合に、PET、CTまたは骨スキャンが指示された場合、また逆に進行がんであるのに追加の画像検査を勧められない場合はその理由を質問してください。

4. 乳がん治療後、経過観察中の腫瘍マーカー検査と高度画像検査

乳がん治療後の再発有無を知る方法について質問する人たちが多くいます。

早期がん治療後で現在無病の人にとって、体調に留意する最善の方法は、マンモグラムと診察を定期的に受け、再発の徴候となる症状を知っておくことであることが研究結果から示されています。乳房の新たなしこりや疼痛、息切れなどの症状が現れた場合には、CT、PET、骨スキャンといった高度画像検査が、がんが転移した可能性のある臓器の検出に有効なことがあります。

進行乳がん患者の場合、医師は、血清マーカー、生物学的マーカーとも呼ばれる腫瘍マーカーを血液検査で調べ疾患の経過を観察することがあります。がん患者の一部では、このマーカーの値が正常値より高くなります(腫瘍マーカー値は、がんがない人においても上昇することがあるため、これらの検査をするときは常に別種の検査と組み合わせます)。乳がんで使用される腫瘍マーカーにはがん抗原15-3、がん抗原27.29、がん胎児性抗原(CEA)の3種類があります。

しかし、無症状が継続している早期乳がんであった患者では、腫瘍マーカー、高度画像検査共に余命延長への寄与は示されておらず、実際、不安や誤診、偽陽性結果に伴う過剰診療となることが多いのです。

推奨
ASCOの推奨は、乳がんの再発検査に腫瘍マーカーおよびCT、PET、骨スキャンを早期乳がん患者であった人で、再発の徴候または症状のない人に対して使用しないことです。

推奨の背景は何でしょうか?
マンモグラムのお陰で初期のがんが検出され、効果的な治療が可能になったため、現在では、乳がんと診断された女性の余命は一般人と変わらず、再発リスクは低いことが多くなりました。つまり、これらの女性が高度画像検査や腫瘍マーカー検査を受けると、異常所見が偽陽性である可能性が極めて高くなります。さらに、症状発現前に、これらの検査で乳がん再発の所見が得られても、生存の改善を示唆するエビデンスはありません。

研究の結果、再発のほとんどは症状を契機に発見されていて、健診では検出されていないことも示されています。乳がんを患った女性に出来ることは、適切な経過観察、一般的には年1回のマンモグラフィ検査や経験豊富な医師による6カ月ごとの乳房検査などについて医師と話し合うことです。一部の女性、乳房が高密度で脂肪組織が少なく、乳がん遺伝子(BRCA)変異など遺伝的変異がある、または乳がんの強い家族歴があるため再発のリスクが非常に高い、では乳房の磁気共鳴画像撮影(MRI)検査が有効となることもあります。

行うべき質問
乳がんの治療歴がある場合は、経過観察について確実に理解するようにしてください。医師に質問してください。

•どんな検査が必要ですか、どれくらいの頻度で行うのですか?検査の目的は何ですか?治療したがんが早期で、現在無病で症状がなければ、身体の他の部位に対する画像検査の必要性について質問してください。

•速やかに報告すべきはどんな徴候や症状ですか。次回の経過観察のための来院時に報告すべきものは何ですか?

5. 感染症予防のための白血球成長因子

がん治療によっては、発熱性好中球減少症(感染と闘う白血球数の低下と発熱によって特定されます)のリスクが増大します。この病態では感染症が潜伏していることが多いため、自身で感染症と闘うことのできない可能性のあるがん患者は重篤になり得るため病院での抗生剤による治療が必要です。

このリスクを低下させる一つの方法は、白血球数を増加させるのに有効な薬剤を使用した化学療法です。造血(血液生成)コロニー刺激因子(CSF)と呼ばれるこれらの薬剤にはフィルグラスチム(Neupogen)、ペグフィルグラスチム(Neulasta)、サルグラモスチム(LeukineまたはProkine)などがあります。CSFは感染リスクを低下させることができますが、一方、高価(一回投与分で4000ドル近い)で、毎日の注射が必要になったり、疲労や骨痛などの副作用が引き起こされることがあります。

推奨
ASCOは、白血球増多因子の使用を、化学療法を受ける、高リスク因子を持つ患者のみに限定するよう勧告しています。これに該当するのは下記の患者です:

•発熱性好中球減少症を引き起こす確率が20%を超え、同様の効果を発揮できる抗がん治療が他にない患者。

•65歳を超える、または疾患による衰弱が激しい、あるいは免疫系が易感染性(例えば腎不全または過去のがん治療が原因)などの因子により感染リスクが増大している患者。

推奨の背景は何でしょうか?
白血球増多因子の使用に関するガイドラインは診療ではしばしば無視されています。例えば、約1,850人の肺がんまたは大腸がん患者を対象にした調査によると、発熱性好中球減少症のリスクが高い状態で予防的治療を受けたのは患者の20%未満でした。この結果はJournal of the National Cancer Institute誌の2011年6月号に発表されています。

現在実施されているほとんどの化学療法は、好中球減少症を伴う感染症のリスクをあまり上昇させてはいません。しかし、低リスクの療法を実施している患者のほぼ半数が、感染リスクを増大させるその他の因子のために、低リスクであってもCSFを投与する必要があります。

行うべき質問
化学療法を受けている場合、その療法で感染リスクが高くなるのかどうか、感染リスクを低下させるため他の薬剤を投与すべきかどうかについて考えてください。医師に質問してください。

•私の抗がん剤は、白血球数の低下または感染症を引き起こす可能性がありますすか?

•感染リスクが高くなるような、その他の因子が私にありますか?

•白血球産生を増やす薬の投与を勧めますか?(医師が感染症リスクは低~中程度と述べてCSFを処方する場合、逆に高リスクであるのに処方しない場合に質問してください)

•感染症の徴候や症状にはどんなものがありますか?速やかに報告すべきことは何ですか?

コンシューマー・リポートによる助言

ホスピスケアとは何をするのでしょうか?

ホスピスは一般に余命6カ月以下の患者に推奨されます。十分なケアを行わないのではありません。ケアの中心を病気そのものへの治療から、患者と家族の日々刻々のニーズに合わせたものへ転換するのです。

ホスピスケアの業務は、医師および看護師によるケア、疼痛管理、理学療法、言語療法、食事指導、悲嘆カウンセリング、ソーシャルワーカー業務、介護者の休息のための息抜きケアなど広範です。医師はホスピスケアについて基本的なことは説明できますが、ホスピスケアで提供されるすべての業務の詳細について説明できるホスピスコーディネータへの紹介を依頼することができます。

2012年9月

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緒方登志文 訳
久保田馨(日本医科大学付属病院) 監修
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原文

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