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遺伝経路活性が小児腫瘍治療へとつながる可能性/ジョンズホプキンス大学

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遺伝経路活性が小児腫瘍治療へとつながる可能性/ジョンズホプキンス大学

公開日:2013年11月6日  

ジョンズホプキンス大学の研究者らは、低悪性度神経膠腫と呼ばれる治療困難な小児脳腫瘍患者の多くで既知の遺伝経路が活性化していることを発見した。この発見はこれらのがん治療のための新たな治療標的につながる可能性を示している。

基礎研究で、研究者らは、哺乳類ラパマイシン標的タンパク質 (mTOR)と呼ばれる経路が、小児低悪性度神経膠腫において高い活性を示していることと、mTOR活性は試験薬を用いて遮断できる可能性があり、それが結果的にこれらの腫瘍の増殖を抑えることを発見した。

「mTORはアキレス腱のような存在だろうと考えます」と語るのは、本研究の共著者でありジョンズホプキンスキンメルがんセンターの小児科、腫瘍科、病理科のアシスタント・プロフェッサーEric Raabe医学博士である。「mTORは、がんの増殖を促しますが、阻害されると腫瘍は崩壊するのです」。研究内容は11月7日のNeuro-Oncology誌で発表された。

全体として、脳腫瘍は、毎年米国で4,000人以上の子どもに発症しており、子どもの癌死亡の主因となっている、とRaabe氏は言う。低悪性度神経膠腫は、子どもの中枢神経系の腫瘍でもっとも多くみられる一群の腫瘍です。

これらの腫瘍に対し現在の治療としては、手術や化学療法が挙げられるが、重大な副作用の原因となることが多い。脳腫瘍の多くは、視覚経路のような領域に位置していて、失明などの損傷を起こさずに手術で除去することが難しい。Raabe氏の患者の中には、腫瘍や治療の結果、視力喪失の他に、麻痺や学習障害となって苦しんでいる人もいる。

「脳腫瘍はいわゆる『低悪性度』つまり特段攻撃的でないと考えられますが、患者の多くは深刻で、生命を脅かす症状に悩まされています。よってわたしたちは是が非でももっとよい治療が必要なのです」と、Raabe氏は語る。

研究のため、ジョンズホプキンス大学の研究者らは、同大学または別の施設にて治療を受けた患者の中から、毛様細胞性星細胞腫と呼ばれるもっとも多いタイプである腫瘍を含む、小児低悪性度神経膠腫177名の組織標本を調べた。研究者らは、2種類の小児低悪性度神経膠腫細胞株について、 MK8669(リダフォロリムス)として知られる臨床試験中の薬剤を用いてmTORの遮断効果もテストした。  

mTOR経路は多様な癌種において活性化することが示されており、ラパマイシンのようにこの経路の中でタンパク質を遮断する薬剤が広く使用されている。この経路ではmTORC1およびmTORC2という2種類のタンパク複合体を通じて信号が送られ、細胞の増殖と生存を促している。

研究者らは、調査された低悪性度神経膠腫の90%においてmTORC1経路が活性化すること、腫瘍の81%がmTORC1とmTORC2の両方で活性を示すことを見出した。mTOR 経路の構成分子は、脳の他の領域の腫瘍に比べて、視覚経路で発生した腫瘍の中でより多く発見されると、本研究の上級著者でありジョンズホプキンス大学病院病理学科および腫瘍科のアシスタント・プロフェッサーであるFausto Rodriguez医師は話している。

科学者らは、mTOR阻害剤が、一方の細胞株の細胞増殖を6日間で73%まで減少させており、もう一方の細胞株の細胞増殖を4日間で21%まで減少させたことを見出した。

「本経路は、脳内の他の領域に比べると、ある特定の領域でより活性を示しているので、それらの経路を標的とした薬剤の治療結果は腫瘍の部位によって異なることを示唆しています」とRodriguez氏は語っている。

Rodriguez氏とRaabe氏は、動物モデルにおける研究を土台として、さらなる阻害剤を試験することを期待している。

本研究は小児脳腫瘍基金、PLGA Foundation、Pilocytic/Pilomyxoid Fund、St. Baldrick’s Foundation、the Knights Templar Eye Foundation、Ian’s Friend Foundationによって支援された。

本研究の共著者は、ジョンズホプキンス大学のMarianne Hutt-Cabezas氏、Smit Shah氏、Deepali Jain氏、Charles Eberhart氏、ニューヨーク大学Langone Medical CenterのMatthias Karajannis氏とDavid Zagzag氏、 メリーランド州Silver SpringにあるJoint Pathology CenterのIren Horkeayne-Szakaly氏、スイス・チューリッヒ大学病院のElisabeth Rushing氏そしてミネアポリス・ミネソタ大学のJ. Douglas Cameron氏である。

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滝川 俊和 訳
寺島 慶太(小児血液・神経腫瘍/国立成育医療研究センター腫瘍科)監修
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原文

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