遺伝学的発見が膀胱癌治療の指標になる可能性/カリフォルニア大学サンフランシスコ校 | 海外がん医療情報リファレンス

遺伝学的発見が膀胱癌治療の指標になる可能性/カリフォルニア大学サンフランシスコ校

更新日

Facebookでシェアする Twitterにツィートする LINEに送る print

遺伝学的発見が膀胱癌治療の指標になる可能性/カリフォルニア大学サンフランシスコ校

カリフォルニア大学サンフランシスコ校が率いる研究者チームにより、一部の膀胱癌で見つかった遺伝子の変異により、再発や進行の起こりにくい術後の低リスク癌が示唆されることがわかった。

この発見により、不快で高価な経過観察のための検査を、多くの患者で行わずにすむようになる可能性がある。

10月13日付けのNature Genetics誌電子版に掲載された研究結果は、遺伝子情報を個々の患者の疾患における精密な分析に用いると共に、正確な治療の標的とする精密な医療の可能性の一端を示すものである。

アメリカにおいて5番目に多い悪性腫瘍である膀胱癌は、毎年約15,000人の命を奪っている。

乳頭状癌として知られている大部分の膀胱癌は手術で治療できるが、そのうち約20%は再発し、膀胱の筋層へと浸潤、または近傍の臓器やリンパ節へと広がっていく。これまでのところ、どの乳頭状癌が死に至るものであるのかを判断する的確な方法はない。このことから、再発の兆候を見つけるために、ほとんどの患者は、膀胱鏡として知られている手法を用いた膀胱の内視鏡検査を頻繁に行っている。

STAG2遺伝子に的を絞る

ジョージタウン大学医学部在籍中の2011年、David A. Solomon医師と彼の指導者であるTodd Waldman医師は同僚らとともに、細胞分裂の際、複製された染色体の分離を制御しているSTAG2と呼ばれる遺伝子を不活性化させる変異が、人の癌の多くに存在するという研究結果をScience誌に掲載した。

現在、UCSF病理学部門解剖病理学に所属しているSolomon氏は、この研究結果をもとに、新たにNature Genetics誌に掲載された研究を行った。

Solomon氏は、同僚の他にUCSF神経外科のC. David James氏、Tomoko Ozawa医師、Joanna J. Phillips医師、さらにアメリカ各地やドイツの研究者らとともに、STAG2遺伝子の不活性化変異が、非浸潤性の乳頭状膀胱癌の36%で認められたのに対し、再発および浸潤性の場合わずか16%でしか認められなかったという結果を明らかにした。

「STAG2遺伝子の変異は、表在性あるいは乳頭状タイプの膀胱癌の30〜40%で早期に起こる遺伝子変異の一つであり、この変異を持つ癌は再発しにくいということをわれわれのデータは示しています」と、この研究論文の主著者であるSolomon氏は述べている。

この研究の最初の段階で、研究者らは2,214人の様々な癌についてSTAG2遺伝子の不活性化変異があるかどうかを調べ、膀胱癌で最も高頻度にSTAG2遺伝子の不活性化が起こっていることを発見した。さらに研究を進めた結果、彼らはSTAG2遺伝子変異が特に低リスク癌で多く認められることを見いだした。このことから、術後に癌のSTAG2遺伝子の状態を確かめることで治療の方向性を決める助けとなるかもしれないと、Nature Genetics誌の論文の統括著者であるWaldman氏は述べた。

「STAG2遺伝子に変異がある場合、患者が再発する可能性が低いことを意味しているかもしれない」とWaldman氏は述べている。

大多数の癌細胞で染色体数の異常が認められ、この現象は異数性として知られている。STAG2遺伝子は分裂中の細胞に、適切な染色体を分配するのに重要な役割を果たしていることから、癌が形成される過程で異数性が生じることに、この遺伝子が関与していると考えられてきた。「この重要で、複雑な問題は、さらなる研究によってのみ最終的に解決されるでしょう」とWaldman氏は述べた。「しかし、少なくとも膀胱癌においては、STAG2遺伝子の変異は良い知らせだと思われます。」

UCSF医療センターについて

UCSF医療センターは、常に全米トップ10にランクされる病院である。革新的な治療、先端技術、医療専門家と研究者間の連携、さらに慈愛に満ちた患者ケアチームで知られており、UCSF医療センターは、カリフォルニア大学サンフランシスコ校の大学病院としての役割を担っている。本医療センターの全米的にも極めて優れたプログラムには、小児の健康、脳神経系、臓器移植、女性の健康および癌が含まれている。本医療センターは、UCSF内において独立経営の事業体として運営されており、患者に医療を提供する運営経費をまかなうだけの収益をあげている。

www.facebook.com/UCSFMedicalCenterもしくはTwitter @UCSFHospitalsでUCSF医療センターをフォローして下さい。

このニュースリリースはウェブサイト用に編集しています。

******
田村克代 訳
榎本 裕(泌尿器科/三井記念病院) 監修
******
原文

printこの記事を印刷する Facebookシェアする Twitterツィートする LINE送る

免責事項当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

注目キーワード

新着ドキュメント

一覧

週間ランキング

  1. 1乳がん化学療法後に起こりうる長期神経障害
  2. 2非浸潤性乳管がん(DCIS)診断後の乳がんによる死亡...
  3. 3がんに対する標的光免疫療法の進展
  4. 4「ケモブレイン」およびがん治療後の認知機能障害の理解
  5. 5若年甲状腺がんでもリンパ節転移あれば悪性度が高い
  6. 6BRCA1、BRCA2遺伝子:がんリスクと遺伝子検査
  7. 7治療が終了した後に-認知機能の変化
  8. 8コーヒーが、乳がん治療薬タモキシフェンの効果を高める...
  9. 9ASCO、がん臨床試験に対する適格基準の緩和を推奨
  10. 10ルミナールA乳がんでは術後化学療法の効果は認められず

お勧め出版物

一覧

arrow_upward