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リンパ節転移陰性乳癌患者においてセンチネルリンパ節潜在性転移が生存率に与える影響は小さい

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リンパ節転移陰性乳癌患者においてセンチネルリンパ節潜在性転移が生存率に与える影響は小さい

Sentinel Lymph Node Occult Metastases Have Small Survival Effect in Node-Negative Breast Cancer Patients (Posted: 04/26/2011)
– 乳癌患者のセンチネルリンパ節に対する詳細な検査により、およそ16%の検体でそれまでの検査で検出されなかった転移が発見されましたが、これらの転移の有無にかかわらず患者の5年生存率の差はきわめて小さいものでした。

要約 センチネルリンパ節生検で当初転移陰性と分類された乳癌患者のリンパ節組織をさらに詳細に調べたところ、およそ16%の検体で潜在性の(初回検査で検出されなかった)転移が発見されました。潜在性転移のある患者は、潜在性転移のない患者と比較して、全生存率および無病生存率が不良であり、遠隔転移が診断されるまでの期間も短いことがわかりました。しかし、5年生存率の推定値では、潜在性転移の有無による差はきわめて小さくなっています。したがって、本試験では、追加的な評価を行う臨床上の有益性は見出せず、センチネルリンパ節評価の現在の臨床的手順を強化する必要性は示されませんでした。

出典 New England Journal of Medicine誌2011年2月3日号(ジャーナル要旨参照)

背景 乳房腫瘍の摘出手術を受ける患者には、原発腫瘍からの転移の有無を判定し、癌細胞を含むリンパ節を取り除くために腋窩リンパ節の切除も行います。かつては、ほとんどの患者に完全な腋窩リンパ節郭清(ALND)を行い、腋窩領域で少なくとも10個のリンパ節を摘出していました。近年では、センチネルリンパ節(原発腫瘍から離れた癌細胞が最初にたどり着く可能性の高いリンパ節)の摘出が標準となっています。センチネルリンパ節生検(SLNB)では、摘出するリンパ節は1~2個程度で、ALNDと比べて神経の損傷、感染症、疼痛、リンパ浮腫(むくみ)も少なくなります。
センチネルリンパ節には、初回病理検査では検出されず、追加的検査を実施することで同定される潜在性転移が隠れている可能性があります。しかし、潜在性転移の臨床上の重要性は明らかになっていません。本試験では、SLNBの大規模臨床試験に登録された女性患者群のプロスペクティブなデータを使用して、潜在性転移が転帰に与える影響を評価しました。

試験 このコホート解析の基になったNational Surgical Adjuvant Breast and Bowel Project(NSABP)試験B-32は、米国とカナダの手術可能乳癌で臨床的にリンパ節転移陰性の女性患者5,611人が登録されたランダム化試験で、SLNBのみ実施する群と、SLNBの直後にALNDを加える群で転帰を比較しています。(当該試験の結果は、Lancet Oncology誌2010年10月号[ジャーナル要旨参照]で発表され、8年後の全生存率は両群で同等でした。)
著者らは、潜在性転移の生存転帰への寄与を分析するために、B-32試験の登録者から採取したセンチネルリンパ節検体を利用することができました。この目的のため、初回検査で転移が検出されなかった登録者全員のセンチネルリンパ節検体に追加的な検査を実施して潜在性転移を同定しました。各リンパ節から採取した一連の組織片に対して、ヘマトキシリン・エオシン染色とサイトケラチンの免疫組織化学染色を併用して評価しました。サイトケラチンは、通常はリンパ節から検出されない乳癌細胞表面タンパク質です。このプロトコルは、1.0 mmを超えるすべての潜在性転移と、それより小さい一部の潜在性転移を検出するようデザインしました。転移が検出された場合は、腫瘍径によって、遊離腫瘍細胞クラスター(0.2 mm以下)、ミクロ転移(0.2~2.0 mm)、マクロ転移(2.0 mm超)にさらに細分化しました。
潜在性転移が検出された患者と検出されなかった患者で転帰(全生存率、無病生存率、遠隔無病生存率含む)を比較しました。複数の統計的手法を使用して、試験群と他の可能性のある交絡因子を解析しました。
本試験は、バーモント大学病理学教室(University of Vermont Department of Pathology)のDr. Donald L. Weaver氏の主導で行われました。

結果 本試験に登録された5,611人中3,989人が、初回病理検査でセンチネルリンパ節陰性と診断されました。3,887人の検体が追加的分析に利用でき、3人を除くすべての患者の転帰の情報が入手可能でした。3,887人のうち15.9%でセンチネルリンパ節で潜在性転移が同定されました。腫瘍径によってさらに細分化すると、遊離腫瘍細胞クラスター11.1%、ミクロ転移4.4%、マクロ転移0.4%でした。
潜在性転移のある患者は、潜在性転移のない患者より統計的に有意に転帰不良の傾向がありましたが、実際の差はわずかでした。著者らは、潜在性転移の検出された患者の5年後の推定値として、94.6%が生存し、86.4%が再発(局所再発、領域再発、または転移性病変)なし、89.7%が転移性病変の発生なしと予測しました。潜在性転移の検出されなかった患者での推定値は、それぞれ95.8%、89.2%、92.5%でした。一方、受けた処置に基づく患者の全生存率は、SLNB単独群とSLNB+ALND群で有意差はみられませんでした。
潜在性転移の腫瘍径によるサブグループ解析では、潜在性転移が大きいほど患者の転帰への影響が大きくなることが示されました。乳癌特異的5年生存率の推定値は、転移が検出されなかった患者で98.4%、遊離腫瘍細胞クラスターが検出された患者で97.8%、ミクロ転移またはマクロ転移が検出された患者で96.0%でした。しかし、潜在性転移の同定数が全体的には少ないため、著者らはこれらの推定値の信頼性は限定的であると述べています。

コメント 本試験の結果は、潜在性転移が独立した予後因子であるという見解を支持するものですが、「原発腫瘍の特徴に基づいて全身治療が推奨される、新たに診断された乳癌患者にとって、潜在性転移を同定することによる臨床的な有益性は示されなかった」と著者らは述べています。むしろ、「[潜在性転移が検出された患者と検出されなかった患者での5年生存率の推定値の]差がわずかであることから、臨床管理に変更が必要であるとはいえない」と述べています。しかし、継続して追跡調査を行い、生存率の差が広がらないかどうか確認する必要があることも強調しています。

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月橋 純子 訳
上野 直人(M.D.アンダーソンがんセンター教授)監修
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