タモキシフェンによる長期ベネフィットが20試験の長期追跡データで裏づけられる/NCI臨床試験結果 | 海外がん医療情報リファレンス

タモキシフェンによる長期ベネフィットが20試験の長期追跡データで裏づけられる/NCI臨床試験結果

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タモキシフェンによる長期ベネフィットが20試験の長期追跡データで裏づけられる/NCI臨床試験結果

2011年11月23日掲載

要約

 20の臨床試験の参加者のデータを統合して解析した結果、エストロゲン受容体陽性乳癌で、タモキシフェンによる術後補助療法を約5年間受けた女性は、タモキシフェンを投与されなかった女性より、初回治療後15年間の再発リスクが低下していました。タモキシフェンを投与された女性は、15年の追跡期間を通して、乳癌による死亡リスクが3分の1低下しました。

出典

 Lancet誌 2011年8月27日号(ジャーナル抄録参照

背景

 多くの乳癌は、腫瘍細胞にエストロゲンホルモンの受容体があり、エストロゲンに依存して増殖します。エストロゲン受容体陽性(ER陽性)乳癌と呼ばれるタイプの乳癌の女性には、ホルモン療法(エストロゲンの作用を阻害したり、エストロゲンがその受容体に結合するのを妨げる薬剤)を含む治療が標準的です。

早期ER陽性乳癌女性の術後ホルモン療法で用いられる主な薬剤として、タモキシフェンと、アロマターゼ阻害薬のアナストロゾール、レトロゾール、エキセメスタンがあります。これらの薬剤のうち、タモキシフェンは、乳癌治療で最も長く使用されています。1980年代に、早期乳癌を対象としたタモキシフェンによる術後補助療法の試験がいくつか開始されており、長期追跡研究が可能になっています。

以下に説明する研究では、早期乳癌女性に約5年間のタモキシフェン術後補助療法を行う場合と行わない場合を比較する20試験のデータを統合し、その利益の持続について初回治療後最長15年時点まで調査しました。

試験

 Early Breast Cancer Trialists’ Collaborative Group(EBCTCG)国際研究チームは、1985年以降、早期乳癌の治療(手術、放射線療法、化学療法、ホルモン療法)のランダム化臨床試験からデータを収集してきました。EBCTCGは5年ごとに、追跡対象の試験に登録された個々の女性の最新データでメタアナリシス(複数の試験をまとめて解析する)を実施しています。

2011年時点でEBCTCGは、タモキシフェンを用いた20のランダム化試験に登録された21,457人の女性の情報を収集しました。いずれの試験でも、早期浸潤乳癌女性が、約5年間タモキシフェンの投与を受ける群と、ホルモン療法を行わない群にランダムに割り付けられていました。(非浸潤性乳管癌を対象とするタモキシフェンの試験は、含まれていません。)

追跡期間の中央値は13年でした。治療開始から最長15年間追跡を行った、約5年間のタモキシフェン術後補助療法を受けた群と受けなかった群で、乳癌再発、乳癌による死亡、全死亡を比較しました。

結果

患者の約半数(10,645人)は、ER陽性乳癌でした。このER陽性乳癌女性では、タモキシフェン術後補助療法によって、再発数が治療開始から最初の5年間で2分の1、次の5年間で3分の1減少しました。その次の5年間では、再発リスクのさらなる低減効果はみられませんでしたが、治療開始から15年経過しても、タモキシフェン投与群は投与なし群よりも低いリスクを維持していました。すなわち、当初10年間にみられたリスク低下は、時間とともに「効果が薄れる」ことはありませんでした。腫瘍のER発現量がわずかな場合でも、タモキシフェン投与後に再発リスクが大幅に低下しました。

エストロゲン受容体を発現していない腫瘍(ER陰性乳癌)では、再発に対するタモキシフェンの効果はまったくありませんでした。もう1つのホルモン受容体であるプロゲステロン受容体(PR)の発現は、タモキシフェンが再発リスクを低下させるかどうかに影響を及ぼしませんでした。したがって、タモキシフェンを投与するかどうかをPRの発現量で判断すべきではないと著者らは述べています。

タモキシフェンはまた、化学療法を受けたER陽性乳癌女性の再発リスクも低下させました。この利益は、タモキシフェンの開始時期(化学療法と同時か、化学療法の後か)に関わらず認められました。

タモキシフェン治療後のER陽性乳癌の再発リスク低下に加えて、乳癌による死亡数と全死亡数も減少していました。治療開始からの15年間で、ER陽性乳癌女性における乳癌による年間死亡率は、タモキシフェンを投与した女性で投与していない女性の約3分の1でした。タモキシフェン投与群では、全死亡率も大幅に低下しました。

メタアナリシスによって、タモキシフェンは子宮癌リスクと肺血栓リスクを上昇させることも確かめられました。平均10年間の追跡期間中に、ER陽性乳癌女性のうち子宮癌で死亡したのは、タモキシフェン投与群で9人、投与なし群で1人でした。54歳未満の女性には、子宮癌リスクはほとんどありませんでした。この試験の最初の5年間に肺血栓(肺塞栓症)で死亡した女性は、タモキシフェン投与群で6人、投与なし群ではいませんでした。

制限事項

近年の大規模臨床試験で、治療後の最初の数年間の再発予防には、タモキシフェンよりもアロマターゼ阻害薬が実際に有効であることが示されました。ただし、アロマターゼ阻害薬は比較的新しい薬であるため、「この試験のようなアロマターゼ阻害薬の長期追跡は行われていません」とNCI癌予防部門のLeslie Ford医師は述べています。そのため、現時点ではタモキシフェンとアロマターゼ阻害薬の長期にわたる比較は不可能です。さらにFord医師は、タモキシフェンは閉経前の女性に投与できる唯一のホルモン療法であるとも述べています。アロマターゼ阻害薬で多くの副作用が出る女性にとっても治療の選択肢となり、「タモキシフェンは依然として有効な武器の1つであり、役目を終えたわけではありません」。

コメント

「約5年間タモキシフェンを投与する試験を長期に追跡することによって、0~9年時点での大幅な再発率低下の遅発効果として、10年を超えても乳癌死亡率の顕著な低下が持続することが明確に示されました。また、完全なER陰性でない限り、ER弱陽性であっても十分な効果があることを裏づける結果も得られました」とEBCTCGの筆者らは結論づけています。

治療開始後15年時点での再発率が、5年間タモキシフェンを使用した女性で使用しなかった女性より低いという事実は、「5年間のタモキシフェン投与が再発を高率に予防し、多くの患者を治癒させる可能性があることを意味しています」と、ブリティッシュ・コロンビア癌研究所(British Columbia Cancer Agency)のStephen K. Chia医師とジョンズホプキンス大学シドニー・キンメル総合がんセンター(The Johns Hopkins Kimmel Comprehensive Cancer Center)のAntonio C. Wolff医師は付随論説で述べています。

原文

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月橋純子 訳
野長瀬祥兼 (腫瘍内科/近畿大学付属病院) 監修
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