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2種類の抗癌剤イレッサとタルセバについて、長期的な有効性が期待できる患者を分子マーカーで予測/ジョンホプキンス大学

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2種類の抗癌剤イレッサとタルセバについて、長期的な有効性が期待できる患者を分子マーカーで予測/ジョンホプキンス大学

リリース 2013年9月4日

予備試験にさらなる検証が必要

上皮成長因子受容体(EGFR)阻害薬と呼ばれるタイプに属する抗癌剤の中で、2種類の薬剤が最も広く使用されている。この薬剤を処方された患者において、より長い生存期間(最長2年間)を正確に予想できると考えられる、「Mig6」という分子マーカーをジョンホプキンス大学の研究者らが特定した。

米国食品医薬品局が承認しているゲフィチニブ[イレッサ](Iressa)およびエルロチニブ[タルセバ](Tarceva)は、肺癌、膵臓癌患者に処方されるが、通常、腫瘍の長期的な退縮に有益であるのは、EGFR遺伝子に変異が見られる少数の患者のみである。これら2種類の薬剤はEGFR遺伝子増幅によるタンパク質発現を阻害するが、投与された薬剤の効果は患者によって、延命効果なしから数年間の延命と大きく異なり、延命期間の平均値は数カ月である。

「臨床医には、EGFR阻害剤で奏効の可能性がない患者と、極めて良好な奏功が得られる患者を区別する上で信頼できる方法がこれまでありませんでした」とジョンホプキンス大学の耳鼻咽喉科学、腫瘍内科学、病理学、泌尿器科学、遺伝学の教授であるDavid Sidransky医師は説明した。実際の患者において、EGFR遺伝子によるタンパク質発現の正確な量を計測するだけでは、EGFR阻害剤に対する奏効を予測するのには良い指標とならないことが既に分かっている。しかし、Mig6の有無は良質な指標となる可能性があると、彼は付け加えた。

ジョンホプキンス大学の研究者らは、EGFR阻害薬に耐性を示す肺癌細胞、頭頚部癌細胞の臨床株を初めに用いた一連の実験で、この遺伝子マーカーを検出した。これらの細胞株において、Mig6遺伝子からのタンパク質発現は、感受性を示す細胞株の最大3倍という極めて高レベルであることを明らかにしたこと。Mig6はEGFRタンパク質の活性化を制御する分子の一つであるということを、オンライン誌PLoS ONEに7月31日付で発表した予備試験結果の中で述べている。

「実験の第一段階で、我々は、EGFR阻害薬に反応しない細胞でMig6がより高レベルで発現することが多いことを明らかにしました。ほとんどの腫瘍に、高レベルのMig6が存在することは知られており、EGFR阻害薬の奏効は期待できません。」Sidransky医師は述べた。

第2段階として、研究者チームは、マウスに直接移植した様々な腫瘍において(異種移植として知られる研究モデル)Mig6の発現レベルを検討し、EGFR阻害薬で治療した。これらの新しいモデルでは、周囲の癌細胞と相互作用する「間質」細胞を含むより完全な腫瘍の試料採取も行われる。「これらの腫瘍は微小環境と一緒にマウスに移植されますので、このモデルにより、ヒトで起こることをより正確に予測できると考えています」Sidransky医師は説明する。

EGFR変異のない腫瘍の異種移植片において、Mig6の発現レベルが上昇するにつれてEGFR阻害薬への耐性は高まり、高レベルのMig6発現と薬への反応の欠如は相関していることが示唆された。この相関関係を確認するため、研究者らは、EGFR阻害薬で治療した肺癌患者65人の組織試料を検討し、Mig 6発現のレベルと転帰を比較した。

Mig 6発現が低レベルの患者18人のうち、5人は癌が増悪することなく1年を超えて生存し、4人の無増悪生存期間は2年を超えた。Mig 6が高レベルであった16人のうち、2人が1年を超えて生存し、2年を超えて無増悪で生存した患者はいなかった。

「これらの所見の利点はそのシンプルさにあります。我々は、Mig6の低発現が臨床効果と相関する腫瘍を探しているのですが、そのような腫瘍はあまり多くありません」と、Sidransky医師は述べている。

Sidransky医師の研究チームは、バイオテクノロジー会社または製薬会社にMig6の使用を供与して、大規模な患者群でさらなる試験が実施されることを期待している。

この研究は、米国国立衛生研究所(国立癌研究所、P50 DE019032、U01CA084986およびR37DE012588)とFAMRI(The Flight Attendant Medical Research Institute)から資金提供を受けた。

本研究に従事したSindransky医師以外の研究者は、ジョンホプキンス大学のXiaofei Chang、Aditi Chatterjee、Shizhang Ling、Conatance L. Monitto、Myoung Sook Kim、David M. Berman、Steve Goodman、Ignacia I Wistuba、Atul Bedi、MDアンダーソンがんセンターのLuisa M Solis、Ignacia I Wistuba、ウィスコンシン大学のShyhmin Huang、Paul M. Harari、スペイン・マドリッドCentro Intregral Oncologico Clara CampalのManuel Hidalgoの各氏である。

引用誌 PloS ONE 8(7): e68966. Doi:10.137/journal.pone.0068966
メディア関係 問い合わせ
Vanessa Wasta, 410-614-2961,wasta@jhmi.edu
Amy Mone, 410-614-2941,amone@jhmi.edu

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緒方 登志文 訳
高濱 隆幸(腫瘍内科/近畿大学医学部)監修
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原文

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