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フィナステリドは、55歳以上の低悪性度前立腺癌リスクを低下させる/NCI臨床試験結果

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フィナステリドは、55歳以上の低悪性度前立腺癌リスクを低下させる/NCI臨床試験結果

2013年8月28日掲載

要約

前立腺癌予防試験(PCPT試験)と呼ばれる第3相臨床試験の長期間追跡調査の結果によれば、フィナステリド(商品名:Proscar)はプラセボと比較し、最大7年の定期的使用により、55歳以上の低悪性度前立腺癌リスクを低減することを引き続き示しています。高悪性度癌はフィナステリド群に多くみられたものの、15年全生存率ではフィナステリド群、プラセボ群とも同様でした。

出典

2013年8月14日New England Journal of Medicine (NEJM)(ジャーナル抄録参照)

背景

PCPT試験(前立腺癌予防試験)は、試験薬フィナステリドが55歳以上の前立腺癌予防に役立つかを検討するためデザインされ、1994年1月から実施された大規模ランダム化臨床試験です。フィナステリドは、テストステロンという男性ホルモンを活性化する酵素である5α還元酵素を阻害します。このホルモンは前立腺の肥大に関連しており、前立腺腫瘍の増殖も促進すると考えられます。

フィナステリドは、1992年FDA(米国食品医薬品局)により前立腺肥大症治療薬として認可され、その後男性型脱毛症治療薬としても認可されました。前立腺癌予防薬としてはまだ承認されていません。

PCPT試験は、プラセボ群との比較においてフィナステリド群で前立腺癌リスクの25%低下(および低悪性度前立腺癌リスクの38%低下)をデータ解析が示した時点で、当初の計画より15カ月早い2003年2月中止になりました。またその最初の解析で、高悪性度前立腺癌(グリーソンスコア7~10の癌)のリスクがわずかですが統計的有意に増加を示し、その癌はフィナステリド群においてより攻撃的で重篤な可能性が高いと示されました。その最初の解析では試験期間中、生検または他の診断手順を実施した患者(対象患者のおよそ半数)について検討しましたが、最新分析では全対象患者について検討しました。

PCPT試験のデータによるその後の解析では、フィナステリド群で高悪性度前立腺癌の増加が認められたのは、少なくとも一部は検出の改善によることが示唆されました。例えば、フィナステリドには前立腺を収縮させる働きがあり、生検で高悪性度癌を検知しやすくする可能性があります。しかしながら、フィナステリドが高悪性度前立腺癌リスクおよび死亡の真の増加原因であるかもしれないという懸念は残っており、PCPT試験の担当医師らはフィナステリド治療群とプラセボ治療群の死亡率の相違を見出すため、試験参加者を対象とした長期間追跡調査のデータを解析しました。

臨床試験

健康状態が良好で前立腺癌が認められない55歳以上の男性およそ19,000人がPCPT試験に登録されました。登録患者はフィナステリド群かプラセボ群に無作為に割り付けられ1日5mgを7年間連用しました。この試験の主要評価項目は前立腺癌発生率でした。

試験参加者の前立腺癌の徴候を探るため年1回直腸診、PSA検査の2種の検査を含め、一定間隔で健康状態を観察しました。試験終了時、研究者らは前立腺癌と診断されたことがない参加者に前立腺生検を実施して前立腺腫瘍を調べるよう依頼しました。

NEJM誌で発表された最新の結果には、以前発表された期間以降の前立腺癌発生率データおよび試験参加者の死亡率など、試験参加者全員の最大18年の追跡調査が含まれていますが、これは研究者らが2011年10月まで試験が中止となった時点から社会保障死亡指数(SSDI)によるデータを収集したものです。なおSSDIは死因についての情報を提供していません。

NCIの資金提供による本試験はSWOG臨床試験協力団体により実施され、テキサス州サンアントニオのテキサス大学健康情報科学大学院のIan Thompson医師が主導しました。

試験結果

最新の解析では、前立腺癌と診断されたのはフィナステリド群10.5%、プラセボ群14.9%でフィナステリド群はプラセボ群と比較し、前立腺癌発症の相対リスクは30%低いことが示されました。このリスク低下は、健康リスクはほとんどないにも関わらず根治的手術あるいは放射線治療を受けることが多い、低悪性度癌(グリーソンスコアが6以下)の患者に対する予防効果を意味しています。低悪性度癌に対するリスクは、フィナステリド群がプラセボ群より43%低い結果でした。

高悪性度癌と診断されたのは、フィナステリド群3.5%、プラセボ群3.0%でフィナステリド群はより高く、相対的増加は約17%でした。

15年生存率は、フィナステリド群78.0%、プラセボ群78.2%で両群同様でした。研究者らは前立腺癌と診断された患者を特に調査しましたが、前立腺癌患者の生存率も両群でほとんど変わりませんでした。

制限事項

NCI癌予防部門に所属し、当臨床試験の共著者であるHoward Parnes医師はフィナステリド群における高悪性度癌リスクの増加について「副次的な調査結果であり、当試験は特にそれを検討するために計画されたものではありません」と述べました。

死亡した患者の大多数の死因に関して、当試験の最新情報は公表されていないため前立腺癌特異的死亡率を決定できませんでした。「これは重要なことなのです、と言うのは全原因による死亡率に差がなくても『前立腺癌特異的死亡率』には僅差がありうるからです」と添付論説著者のMichael LeFevre医師は記述していました。

コメント

それでもなお、本試験は「前立腺癌の定期検診を選択する患者に対して、フィナステリドの使用によって前立腺癌と診断されるリスクを低下させ、結果的に前立腺癌治療に伴う副作用のリスクを減少させることは意味があることを示しています」と同Fevre氏は記しました。

「フィナステリドの使用は前立腺癌特異的死亡率にプラスとマイナスのいずれの作用を及ぼすのか解明されていません。しかし、どちらにしてもその作用はおそらく極めて弱く、平均余命に差はみられません。前立腺癌の定期検診を選択する患者に対してフィナステリドの使用によって前立腺癌リスクを低下させ、前立腺癌治療に関連する罹病率を低下させることは意義深いことです」と同氏は結論しました。

原文

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福田素子 訳
高濱隆幸(腫瘍内科/近畿大学医学部) 監修
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