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ラジウム223は進行性前立腺癌患者の生存期間を延長する/NCI臨床試験結果

  • 2013年8月26日

2013年8月2日掲載

要約
 第3相臨床試験(ALSYMPCA試験)の結果、塩化ラジウム223(Xofigo)はプラセボと比較し、骨転移した進行性前立腺癌患者の全生存期間を延長することが示された。

出典
New England Journal of Medicine (NEJM)2013年7月17日号(ジャーナル抄録参照)。

背景
ホルモン療法に反応しなくなった去勢抵抗性前立腺癌の男性患者の大多数では、癌は骨にも広がります(骨転移)。骨転移すると、激しい痛み、衰弱、骨折など、生活の質を大きく低下させることとなり、場合によっては死に至ります。

骨転移が起きた患者の痛みを和らげ骨折を予防する、数種の医薬品が米国食品医薬品局(FDA)により、承認されていますが、それらの医薬品のなかに、前立腺癌患者の生存期間を延長するものはありません。

塩化ラジウム223は、低レベルのアルファ線を放出する放射性同位体です。アルファ線は二本鎖DNA切断を起こし、細胞を死滅させます。ラジウム223は「カルシウム擬態薬」と呼ばれ、あたかもカルシウムであるかのように、骨代謝が盛んである骨転移が形成される部分の骨内に優先的に蓄積されます。

塩化ラジウム223は、静脈内に投与されると、ごく低線量の放射線を放出し、到達距離は100ミクロン(0.1mm)以下で他の周辺組織への影響は制限されます。

試験
症候性前立腺癌患者に対するアルファラディン投与の臨床試験(ALSYMPCA試験)に、転移性の去勢抵抗性前立腺癌患者921人が登録されました。試験に参加した患者は、ランダム化され、ラジウム223投与(4週間に1回、計6回の静脈注射)に加えて標準治療を実施する群か、またはプラセボ投与に加え標準治療を実施する群かのどちらかに割り付けられました。

この臨床試験の主要評価項目は全生存期間でした。副次的評価項目は、骨関連事象が最初に現れるまでの時間および生活の質(QOL)関連項目でした。それらの事象には骨折、脊髄圧迫、痛みなどの骨関連症状を放射線治療する必要性などが含まれます。

2011年の初期に、独立データモニタリング委員会は臨床試験の中間解析データを評価し、ラジウム223を投与された患者では、プラセボを投与された患者よりも、統計学的に有意に全生存期間が延長されたことを明らかにしました。臨床試験は早期に終了され、プラセボを投与された患者には、ラジウム223への「切り換え」投与が許可されました。

NEJM誌に掲載された試験結果は、すべて「切り換え」前の患者転帰を反映したものです。

この臨床試験は、バイエルヘルスケア製薬、およびラジウム223を開発、製造するアルジェタ社が資金提供しています。

結果
全生存期間中央値は、ラジウム223投与群の患者では14.9カ月であり、プラセボ投与群では11.3カ月でした。

ラジウム223投与の全生存期間に対する恩恵は、サブ解析された患者グループすべてにも見られました。 例えば、疾患の進行がいかなる範囲でも、以前にドセタキセルを投与された場合、また現在ビスフォスフォネートで治療中である、などに関係なく恩恵を受けたというものです。

ラジウム223を投与された患者は、プラセボ投与群の患者に比較して、より長く骨関連事象が発現せずに生存しました(中央値は15.6カ月対9.8カ月)。

また、ラジウム223投与群の患者ではプラセボ投与群に比べ、重篤な有害事象の発現(47%対60%)および有害事象による治療の中断(16%対21%)はより低頻度でした。

ラジウム223投与群の患者では、プラセボ投与群と比較すると、通常評価ツールを用いた生活の質(QOL)評価がより優れていたと報告されました。

2013年5月15日に、ALSYMPCA臨床試験の中間解析の結果を基に、FDAは症候性骨転移を有する去勢抵抗性前立腺癌患者に対する治療としてラジウム223を承認しました。

制限事項
クリストファー・パーカー医師(Royal Marsden NHS 財団およびCancer Research研究所(英国、サットン))の率いる臨床試験責任医師は、この臨床試験結果は、「日常の医療行為に一般化」される見込みがある、と記した。彼らは、この臨床試験の制限については、他にも広範な適格性があるにもかかわらず、この臨床試験には「去勢抵抗性前立腺癌の25%に発生するかもしれない内臓転移を有する患者」は組み込まれなかったと言及した。

添付された論説にて、ペンシルベニア大学Perelman医学部放射線医学科のNeha Vapiwala医師とEli Glatstein医師は「身体および各転移病変へ運ばれる放射線量を実証する方法」は無いと注意を促した。

コメント
「この臨床試験はうまく実施されており、標準治療を含めて試験が行われた時に可能であった治療を受けた患者の生存の恩恵を明らかにしている」と、NCI(米国国立癌研究所)癌診断治療部門のBhupinder Mann氏は述べました。

Vapiwala医師とGlatstein医師も同意し、「実臨床への応用性は優れています。つまり、この患者達は症候性骨疾病を抱えており、過去もしくは臨床試験時に補完療法を受けていました」と記述している。

彼らは「この試験は、長い間待ち望まれたアルファ線放射体を用いた研究に勢いを与えルもので、患者と医療者双方にとって安全かつ管理可能なこの薬剤による全生存期間の延長を示しました。ラジウム223は、既存の治療法を補完し、またそれに取り組むものなのです」と追加報告した。

原文
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岩崎多歌子 訳
辻村信一(獣医学/農学博士、メディカルライター/株式会社メディア総合研究所)監修
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