アスピリンにはDNA損傷の遅延や抗癌作用を示す可能性がある/カリフォルニア大学サンフランシスコ校 | 海外がん医療情報リファレンス

アスピリンにはDNA損傷の遅延や抗癌作用を示す可能性がある/カリフォルニア大学サンフランシスコ校

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アスピリンにはDNA損傷の遅延や抗癌作用を示す可能性がある/カリフォルニア大学サンフランシスコ校

2013年6月18日
連絡先:News Office (415) 502-6397

アスピリンはある種の癌のリスクを低下させることが知られている。その仕組みを説明しうる発見が、カリフォルニア大学サンフランシスコ校の科学者が率いる研究で得られた。アスピリンは、何らかの前癌状態にある異常細胞中でDNA突然変異の蓄積を遅延させることがわかった。

「アスピリンなどの非ステロイド性抗炎症薬は、入手しやすく費用効果の高い薬剤であり、突然変異率を低下させることで癌を予防する効果があると考えられます」と語るのはヘレン・ディーラー・ファミリー総合がんセンターのメンバーで、体内における癌の経時的な進行に関する専門家であるCarlo Maley博士だ。

6月13日にPLOS Geneticsオンライン版に発表された研究でMaley博士は、フレッド・ハッチンソンがん研究センターの胃腸科専門医であり遺伝学者でもあるBrian Reid医師と共同で、バレット食道と呼ばれる前癌状態の患者13例に、6年から19年にわたる追跡調査を実施し生検標本を分析した。「観察的クロスオーバー」試験は、数年間アスピリンを毎日服用した後に服用を止めた患者群と、観察期間中に初めてアスピリンの服用を開始した患者群で構成された。本研究の目的は、異なる時期に採取された組織の突然変異率を追跡調査することである。

アスピリンレジメンを実施中の患者から採取した生検では、新たな突然変異の平均蓄積が、アスピリンを数年間服用していない期間中に採取した生検と比較して、約10倍遅いことがわかった。

「これは前癌組織の全ゲノム突然変異率を10年以上にわたって測定した最初の研究であり、アスピリンが突然変異率へ及ぼす影響を評価した最初の研究である」とMaley博士は述べた。
博士によれば、被験者の性別・人種構成は、食道癌に関する既知の人口統計学的データを反映しており、大部分は白人の中高年男性であった。バレット食道が食道癌に進行するのはごく稀である。

アスピリンの炎症抑制効果

癌は正常組織よりもはるかに速いスピードで突然変異を蓄積する。また、同一腫瘍内の様々な細胞グループで異なる変異が生じる。重要な突然変異を獲得すると、最終的に腫瘍細胞は制御不能となって増殖する。一つの腫瘍内の多様性が薬剤耐性を促進すると考えられるが、この現象はMaley博士の主要な研究テーマでもある。

Maley博士はこの結果を説明する仮説、すなわち、アスピリンが突然変異率を低下させるのはアスピリンの炎症抑制効果によるものではないか、ということを検証する予定だ。炎症は免疫システムの反応であり、近年、癌の特徴として認識されてきている。炎症の低下が、DNAを損傷する酸化剤の前癌組織での生成を減少させ、増殖促進シグナルを抑制するのではないか、とMaley博士は述べた。

試験期間中、各時期の生検組織で測定された変異蓄積は遅く、被験者1例をのぞき、アスピリンを服用していなかった場合も同様であった。変異は一定の速度で蓄積したが、大部分の変異は病院で異常組織が初めて検出される以前に生じたものである、と研究者らは結論づけた。

Maley博士によれば、これらの所見は、バレット食道は食道癌の重大な危険因子であるが、大多数の症例は癌に進行しないという事実と一致する。

のちに癌を発症するに至った被験者1例では、多くの突然変異を持つ細胞性クローンの集団が、同被験者がアスピリンの服用を開始する少し前に発生した。

研究を拡大、肺癌症例も対象に

非ステロイド系抗炎症薬、突然変異率、および浸潤性癌の発症の関連を詳しく調べるにはさらなる研究が必要、とMaley博士は言う。博士はバレット食道と食道癌に関する研究を続け、さらに肺癌について調べるために研究を拡大する計画だ。

大部分の腫瘍細胞を死滅させることを目的にするよりも、増殖や変異を停止または遅延させることを目指すほうがよいのかもしれない。博士は、癌に対する現在の薬物治療では、多くの症例でより根絶の難しい癌の発生を促進する可能性があると指摘する。高頻度の突然変異能によって腫瘍が薬剤治療に耐性を示すようになるという。上手く適応した変異細胞は、生存および増殖する遺伝的クローンの集団を生み出しはじめる一方、あまり適応しなかった腫瘍細胞は死滅する。

フレッド・ハッチンソンがん研究センター所属の共著者はXiaohong Li, PhD、 Carissa Sanchez, PhD, Patricia Galipeau, PhD、Thomas Paulson, PhD、Patricia Blount, PhD、Thomas Vaughan, PhD、Cassandra Sather, PhDである。また、Amitabh Srivastava MD(ハーバード大学)、Robert Odze, MD(ハーバード大学)、Rumen Kostadinov, PhD(ペンシルベニア大学)、Mary Kuhner, PhD(ワシントン大学)も研究チームのメンバーかつ共著者である。

本研究には米国がん協会ならびに米国立がん研究所から資金提供を受けた。

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村上智子 訳
北丸綾子(分子生物学/理学博士) 監修
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原文

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