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クリゾチニブが一部の進行肺癌患者の無増悪生存期間を改善/NCI臨床試験結果

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クリゾチニブが一部の進行肺癌患者の無増悪生存期間を改善/NCI臨床試験結果

2013年6月17日掲載
2014年10月6日更新
2014年12月4日更新

要約

国際共同第3相試験の結果、既に治療を受け、特定の遺伝子変異を有する進行肺癌患者に対して、クリゾチニブ(ザーコリ)が有効である可能性が示されました。この分子標的療法は、試験登録者の病状が悪化することなく生存する期間を大幅に延長しました。

出典

2013年6月1日付New England Journal of Medicine誌(ジャーナル要旨参照)

背景

進行非小細胞肺癌(NSCLC)患者においては、効果的な治療法の選択肢がほとんどありません。標準化学療法により腫瘍縮小(奏効)が認められるのは、この患者のわずか3分の1であり、分子標的療法が有効なのは、肺腫瘍に特定の変異型EGFR遺伝子を有する患者のみです。

しかしながら、2007年に一部のNSCLC患者の腫瘍から新たな遺伝子変異、EML4ALKの2遺伝子の融合、が研究者らによって発見されました。この融合遺伝子は、腫瘍を増殖させる異常なALKチロシンキナーゼというタンパク質を産生します。その後の研究で、ROS1などの他のチロシンキナーゼ遺伝子との融合だけではなく、別のALK遺伝子融合を作り出す複数の再構成が、NSCLC患者の腫瘍から発見されています。

初期の臨床試験において、腫瘍にEML4-ALK融合遺伝子を有する一部の患者では、異常ALKタンパク質を標的としたクリゾチニブの治療により腫瘍縮小が認められました。しかし、ほぼすべての症例で、腫瘍は薬剤に対して耐性を獲得し、癌の再増悪が認められました。(6月1日付 New England Journal of Medicine誌に同時掲載された症例報告によると、ROS1遺伝子融合を有する肺癌患者で、当初はクリゾチニブ により奏効が認められたものの、すぐに薬剤耐性が獲得されました。この報告の中で、どのように耐性が獲得されるのかについて著者らは考えを示しています。)

初期試験の結果に基づき、米国食品医薬品局(FDA)は、腫瘍にALK変異を有する進行NSCLC患者の治療薬として、クリゾチニブを迅速承認しました。FDAの迅速承認は、薬剤が患者にとって有益であり、かつ未だに満たされていない臨床ニーズを満たす場合に行われます。しかしながら、この承認の場合、薬剤に臨床的有用性があることを確認し、予期せぬ副作用が臨床効果を上回らないことを保証するため、さらに大規模な臨床試験結果をFDAから求められます。

試験

マサチューセッツ総合病院のAlice Shaw医学博士らは、21カ国105施設において約350人の患者をProfile 1007と呼ばれる第3相試験に登録しました。この試験は、クリゾチニブの製造業者であるファイザーにより、資金提供を受けました。

試験に登録されたすべての進行NSCLC患者は、白金製剤を基本とした化学療法レジメンによる一次治療後も進行が認められ、腫瘍にALK遺伝子再構成を有していました。

試験登録者は、3週間を1サイクルとして、クリゾチニブを1日2回服用する群と、ペメトレキセド(アリムタ)あるいはドセタキセル(タキソテール)を静脈内に投与する化学療法を3週ごとに受ける群に、無作為に割り付けられました。化学療法群の患者で、治療中に病状の進行が確認された場合は、クリゾチニブの服用へのクロスオーバーを可能としました。

試験における主要評価項目は、治療開始後に病状が増悪することなく患者が生存する期間(無増悪生存期間)とし、放射線学的評価による判定を行いました。

結果

無増悪生存期間は、7.7カ月対3カ月と、クリゾチニブ服用群の患者の方が、化学療法群の患者の2倍超と長くなりました。奏効が認められた患者は、65%対20%と、クリゾチニブを服用した群の方が、化学療法を受けた群よりも大幅に多くなりました。化学療法群と比較して、クリゾチニブ服用群での全生存期間の改善は認められませんでした。

化学療法群に割り付けられた患者の約3分の2が、クリゾチニブの服用へとクロスオーバーし、試験から除外されました。

クリゾチニブ群の患者で最も多く認められた副作用(視覚障害、下痢、および悪心)は、小規模な試験において確認された副作用と一致していました。二つの「重要な毒性」として、肝障害を示す肝酵素の上昇(38%の患者で確認)と、間質性肺疾患(肺機能を著しく悪化させる一連の疾患)を著者らはあげており、クリゾチニブ群における治療関連死の3人に2人でこれらが原因となっていました。化学療法を受けた患者では、敗血症による治療関連死が1人あることが報告されました。

しかしながら、クリゾチニブ群の患者よりも、化学療法群の患者で、副作用による治療の中止が多かったと著者らは述べています。一般的に用いられている質問票で評価した結果、クリゾチニブを服用した患者では、疾患による症状(息切れ、胸痛、疲労感など)の顕著な軽減とともに、生活の質の向上が報告されました。

制限事項

「化学療法群においてクロスオーバーした患者の割合が高かった」ことから、全生存期間を分析することは困難であろうと試験の著者らは記述しています。

このような制限があるにもかかわらず、彼らは次のように続けています。「(クリゾチニブあるいは化学療法を用いた)二次治療が開始された時点からの試験に登録された患者の全生存期間中央値は、20カ月を超える著しく高いものであったことから、クリゾチニブを二次化学療法の前あるいは後に加えることで、生存期間の改善につながるかもしれない」。

コメント

クリゾチニブによる治療で奏効が認められた患者数は、初期相の試験でみられたものと同様であった、とNCI癌治療・診断部門のJack Welch医師は説明しました。

2つの治療群間で全生存期間に差があるかどうかを判断するのは時期尚早である、とWelch医師はつけ加えました。しかし、化学療法群の非常に多くの患者がクリゾチニブ服用へとクロスオーバーしたため、「この試験において全生存期間を評価することは困難であろう」と認めました。

最後にWelch医師は試験について次のように言及しました。「支持療法、およびクリゾチニブを含む今後の試験や臨床現場での有害事象のモニタリングをさらに進んだ段階へと導くものとなるだろう」。

 

最新情報:第1相試験の結果から、腫瘍にROS1遺伝子の再構成を有する進行非小細胞肺癌患者に対して、クリゾチニブが「強い抗腫瘍活性」を示すことが明らかとなりました。さまざまな方面からの研究により、ROS1再構成を有する腫瘍に対してクリゾチニブが効果を示す可能性が示唆されてきました。この第1相試験において、試験に参加した大多数の患者に、この薬剤による持続的な臨床効果が認められました。この試験結果は、2014年9月27日付けNEJM誌に掲載されました。50人の患者が参加したこの試験の奏効率は72%で、このうち完全奏効が3人、部分奏効が33人でした。「これらの結果から、進行NSCLC患者において、この遺伝子変化を検査することの重要性が明らかになった」と、本試験の著者らは結論付けました。

343人が参加した第3相非盲検試験の結果、ALK遺伝子に再構成を有する進行NSCLC患者の一次治療として、クリゾチニブが有効であることが示されました。 2014年12月4日付けのNEJM誌に掲載された試験結果によると、クリゾチニブによる治療を受けた患者の無増悪生存期間中央値は10.9カ月であったのに対し、ペメトレキセド+シスプラチンまたはカルボプラチンによる化学療法を受けた患者では7.0カ月でした。奏効率はそれぞれ、74%と45%でした。追跡期間中央値17カ月における全生存期間に差は認められませんでしたが、これは無作為に化学療法に割り付けられた患者の多くがクリゾチニブの治療へとクロスオーバーしたことが原因ではないかと考えられます。「(これらの患者に対する)一次治療にクリゾチニブを用いることが、ALKを標的とした治療の効果を最大限に高めることになる」と論文の著者らは結論づけました。

 

原文
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田村克代 訳
野長瀬祥兼 (腫瘍内科/近畿大学医学部付属病院) 監修
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