癌の増殖、糖代謝に関与するAktをSkp2が活性化/MDアンダーソンがんセンター | 海外がん医療情報リファレンス

癌の増殖、糖代謝に関与するAktをSkp2が活性化/MDアンダーソンがんセンター

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癌の増殖、糖代謝に関与するAktをSkp2が活性化/MDアンダーソンがんセンター

E3リカーゼは、癌に必要な栄養を絶ち、ハーセプチン(トラスツズマブ)耐性を打破するための標的となる。

MDアンダーソン・ニュースリリース
2012年5月25日

HER2およびその上皮成長因子受容体(EGFR)類は、ある特殊なタンパク質を動員して、癌の発生および糖代謝における重要な因子を活性化することが、Cell誌5月25日号に報告された。

研究者らによれば、この一連のイベントが乳癌におけるハーセプチン耐性およびグルコース代謝(解糖)の活性化を促進する。なお、癌細胞は主に増殖、生存のエネルギーをグルコース代謝に依存している。

本研究では、あるタンパク質に結合してユビキチンと呼ばれる分子標識を付加するタンパク質Skp2 E3リガーゼに焦点を当てた。ここで、E3リガーゼはAktキナーゼを活性化するためにユビキチンを付加する。

「癌発生で重要な役割をするSkp2 E3リガーゼの新たな機能を見出し、解糖系の調節因子としての重要な役割も特定しました」と論文の統括著者であるMDアンダーソン分子細胞腫瘍学部門准教授Hui-Kuan Lin博士は述べた。

「これは、乳癌でのハーセプチン耐性を理解し、対処するために重要になると考えられます」とLin氏は言う。「糖代謝への影響は前立腺などの他の固形腫瘍にも影響をもたらすでしょう。なぜなら固形腫瘍は解糖系に大きく依存しているからです」。

研究チームは、Skp2の過剰発現が乳癌患者の予後不良や他臓器への転移と関連することも見出した。

Lin氏らは治療薬の開発につながる可能性のあるSkp2阻害剤について研究している。

HER2はEGFRファミリーのタンパク質で、乳癌患者の約3分の1で過剰発現しており、標的薬ハーセプチンはこれらの腫瘍を主要な標的にしている。

Akt活性化に関する重要な発見

Aktキナーゼは、成長因子によるシグナルを細胞外から細胞内へ中継し、細胞の増殖と生存、代謝および腫瘍の成長を調節すると著者らは指摘した。

Aktキナーゼが働くためには、正常なシグナルであろうが発癌シグナルであろうが、シグナルが細胞質から細胞膜に移動しなければならない。そのためにはAktのユビキチン化が必要であり、K63結合型ポリユビキチン鎖という特定の鎖の形成が必要であることを、Lin氏らは既に明らかにしている。

以前の知見ではインスリン様成長因子受容体(IGF-1)と別のE3リガーゼが関与していた。「EGFRがAktのユビキチン化も行い、それをSkp2 E3リガーゼが仲介しているということは、全く予想外でした」とLin氏は述べた。

ユビキチン化の2つの経路が見つかったということは、他にも経路がある可能性を示唆するとLin氏は述べた。

癌エネルギーのエンジンを制御

癌細胞は、主に解糖系に依存してエネルギーを産生し、増殖し、広がるように進化する。癌細胞では、グルコースの取り込みと細胞質での嫌気的な解糖系が亢進している。非癌細胞は、脂肪酸や他の栄養素の酸素を利用するミトコンドリア内での代謝に大きく依存する。この違いはワールブルク効果と呼ばれている。

一連の実験で研究者らはSkp2の発現を阻害し、以下を発見した。

• 乳癌細胞株におけるグルコース取り込みと解糖系の抑制
• HER2発現乳癌マウスモデルにおける癌の大きさとグルコース取り込みの減少
• グルコーストランスポーターGlut1の発現の急激な減少。Skp2発現細胞は、上皮成長因子シグナル伝達による誘導時により多くのGlut1を産生した。AktはGlut1を活性化する。
• 乳癌を発生して転移するよう遺伝子操作されたマウスにおけるAktの活性化、Glut1の発現および腫瘍増殖の減少、並びに生存の延長

予後不良とハーセプチン耐性

チームは、非定型的乳房切除術を行ったが化学療法や放射線療法を受けていない乳癌患者213人を分析した。このうち80人は、HER2陽性であり、その腫瘍でのSkp2発現は以下との相関が認められた。

• 癌病期、原発腫瘍の状態、リンパ節転移などの予後不良因子
• Akt活性化の増加

予後因子の多変量解析により、Skp2の過剰発現はHER2陽性乳癌患者の無転移生存に影響を及ぼす重要な因子であることが明らかになった。
HER2陰性患者では、Skp2発現の予後予測での役割は明らかにならなかった。

HER2陽性乳癌患者ではハーセプチンへの耐性が生じる可能性があり、治療開始時からこの問題に直面する患者もいると、研究者らは指摘した。
Skp2をノックダウンした癌細胞株はハーセプチンへの感受性が高くなり、増殖が抑制された。別のマウスモデルでは、ハーセプチンのみで腫瘍の増殖が抑制されたが、腫瘍の縮小はみられなかった。Skp2を阻害しておくと、ハーセプチンにより22日間で腫瘍はほぼ消滅した。

Skp2発現を抑制した癌細胞でAktを過剰発現させると、この感受性は抑制された。

まとめると、今回の知見は、Skp2の発現抑制により解糖系が阻害されること、解糖系を標的とすることが癌治療の重要な手法になり得ることを示すとLin氏は述べた。

Lin氏の共著者は筆頭著者のChia-Hsin Chan(Ph.D)およびWei-Lei Yang、Yuan Gao、Szu-Wei Lee、Zizhen Feng、Dihua Yu(M.D、Ph.D)、Dos Sarbassov(Ph.D)、Mien-Chie Hung(Ph.D)(MDアンダーソン分子細胞腫瘍部門)、Leo Flores(MDアンダーソン実験画像診断部門)、Yiping Shao(Ph.D)、John Hazle(Ph.D)(MDアンダーソン物理画像部門)、Chien-Feng Li(M.D)(台湾台南のチーメイ財団医療センター)、Kelvin Tsai(M.D)(台湾国立癌研究所)、Hsuan-Ying Huang(M.D)(台湾の長庚紀念医院-長庚医科大学高雄医療センター)、Wenyi Wei(Ph.D)(ハーバード大学医学部ベス・イスラエル・ディーコネス医療センター)、Keiichi Nakayama(M.D、Ph.D)(九州大学生体防御医学研究所)である。

Yang、Gao、Leeはテキサス大学生物医科学大学院(MDアンダーソンとヒューストンのテキサス大学ヘルスサイエンスセンターの共同プログラム)の学生である。

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JAMT関西グループ 訳
金田澄子 (薬学)監修
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原文

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