癌からの回復におけるセルフ・イメージの役割を理解する | 海外がん医療情報リファレンス

癌からの回復におけるセルフ・イメージの役割を理解する

更新日

Facebookでシェアする Twitterにツィートする LINEに送る print

癌からの回復におけるセルフ・イメージの役割を理解する

2013年3月27日

視点

1年前、Colleen Williams氏は自然な外見を好む女性だった。化粧をすることは稀で、長いウェーブのブラウンヘアーを無造作になびかせていたが、癌治療によりこれが一変した。最近では、体調が良くて仕事に行けるときは、毛が抜け落ちたばかりの頭に可愛い帽子をかぶり、朝少し時間に余裕をもって、薄くなっている眉をペンシルで描き、顔色を少しでも良く見せるためコンシーラーで整える。

2012年秋、Williams氏はトリプルネガティブ乳癌と診断され、両側乳房切除とその後にリンパ節切除手術を行った。Williams氏は、手術の傷跡や、化学療法による脱毛、肌の乾燥や痒みなど癌治療に伴う様々な肉体的変化を経験し始めたばかりだが、一つ一つの変化に向き合う中で、ほんの少しの化粧が外見や心の健康に役立つことを発見していった。

誰もがセルフ・イメージを持っている。自分がどんな姿をしているか、頭に描いているイメージである。病気になると体や外見は変化する。セルフ・イメージも然り、かなりのダメージを受けるものである。外見を良くすることが、癌の回復を早めるという科学的根拠は無いが、癌治療の過程で生じる外見の変化を理解し効果的に対処することで、患者の闘病をより良く支えられることを示す研究結果は増えてきている。2011年にテキサス大学M.D.アンダーソンがんセンターの頭頸部癌患者を対象として行った調査では、対象者の75%が、治療過程で一つ以上の体の変化について不安または羞恥を感じており、なかには外見的印象の問題に関して受けたケアに満足しておらず、自ら問題に対処するためのさらなるサポートを希望していたことを述べる患者もいた。

外見変化の対処方法は、運動やセラピー、化粧など、患者により様々である。米国癌学会とパーソナルケアプロダクト・カウンシル基金(the Personal Care Products Council Foundation)による「Look Good…Feel Betterプログラム」の調査では、女性の癌患者の86%が「外見が良いと心も明るくなり、病と向き合う上で必要な自信を得ることができる」と考えていることが明らかになった。「Look Good…Feel Betterプログラム」は、米国の3,000以上の病院とコミュニティー・センターで女性の癌患者に無料講座を提供している。メイクアップ・アーティストやエステティシャン、ヘアースタイリストやかつらの専門家がボランティアとして、丁寧にビューティー・レッスンを行う。パーソナルケアプロダクト・カウンシル基金のエグゼクティブ・ディレクターであるLouanne Roark 氏は2時間のグループセッションについて、「受講者が外見に表れる副作用に対処しコントロールするために自ら何ができるのかを理解できるようサポートしている」と語る。

Colleen Williams氏は友人に「Look Good…Feel Better」への参加を勧められたとき、躊躇しなかった。Williams氏にとって癌治療の中で正常な感覚を探すことは最も重要なことであった。すべてをうまくこなそうと努力する中、彼女自身にとっても、友人や家族から見てもWilliams氏の外見の変化は時に衝撃を与えた。「外出できるようになったとき、実際の心身の変化が見た目にも表れるのは嫌なもの。失った眉毛やまつ毛をリアルに見せるのは難しい。正常な自分を表現することができなくなる」とWilliams氏は語る。

67施設あるNCI指定の癌センターの一つであるM.D.アンダーソンでボディ・イメージ療法プログラムのディレクターを務めるMichelle Cororve Fingeret博士は、顔の変化が癌患者の生活に及ぼす影響を研究してきた。Fingeret博士が担当する患者の大多数は、肉体的変化を伴う癌治療・手術を経験している。Fingeret博士は、なかでも顔の変化を経験した患者の多くが大きな苦痛を感じていたことに気が付いた。「顔は体の他の部分に比べて、最も目立ち、隠すことができない。社会的生活を送る上で非常に重要な役割を果たす部分だ」と語る。

多くの癌患者にとっては、ボディ・イメージについて語ることさえ簡単ではない。特に医師に外見に関する悩みを打ち明ける際に罪悪感を覚えずにはいられない。Fingeret博士は、「癌を克服した彼女たちは予後が良好で、外見のことで文句をいうべきではないと思い、躊躇や恥を感じてしまうのです」と語る。しかしながら、様々な癌種の治療や手術の多くは身体のみならず、患者の精神も変えてしまうことがある。

このような局面で活躍するのが、ボディ・イメージ療法プログラムである。Fingeret博士は、「患者は手術で癌を摘出し、放射線療法や化学療法を行って癌を克服する。しかし、自身が必要とするケアはそれだけではないと感じていることがある」という。臨床と医学研究、両方の要素を含む同専門プログラムでは、術前と術後にFingeret博士が患者と面会し、患者が外見上の結果に対処し、気持ちを整理するサポートを行っている。

Fingeret博士が抱える最大の難問は、患者の社会的孤立である。「社会的孤立は外見の醜さや身体的変化に関する悩みに起因している可能性がある。または、外に出て人と話をしたり食事をすることが恥ずかしいと感じるためかも知れない」と語っている。

Colleen Williams氏は、疲れて外出することさえできなかったこともあり、孤独に苦しんできた。「外に出るのは明らかに難しいこと。化粧をする元気さえ無いこともある。癌治療を経験している患者は健康な人とは外見が異なる。それは否定もできないし、逃げられないこと」と語る。

Williams氏と、その他多くの様々な癌治療を行っている女性にとって、化粧や良いかつらは、ほんの少しの間、癌を患っていない頃の普通の感覚や外見を取り戻す手段である。Williams氏は、「癌治療を始めるとき、外見のことは真っ先に考えないかも知れないけれど、少しでも気にかかっているようであれば、口紅をバッグに放り込んで、買い物に出かける前にさっと塗ってみて下さい。そうすることで気分が変わるかも知れません」と語る。

原文

******
遠藤豊子 訳
太田真弓 (精神科、児童精神科/さいとうクリニック院長) 監修
******

printこの記事を印刷する Facebookシェアする Twitterツィートする LINE送る

免責事項当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

注目キーワード

新着ドキュメント

一覧

arrow_upward