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肛門の前癌病変に対する電気焼均術は局所療法より優れている

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肛門の前癌病変に対する電気焼均術は局所療法より優れている

Electrocautery Superior to Topical Treatments for Precancerous Anal Lesions (Posted: 04/04/2013)

要約 

アムステルダムでのランダム化臨床試験の結果によれば、男性と性交するHIV陽性男性にできた肛門の前癌病変治療において、電気焼均術は局所へのイミキモドまたはフルオロウラシルより優れていると示唆されました。

出典

2013年3月15日付け Lancet Oncology誌(ジャーナル要旨参照

背景

男性と性交する男性は、一般男性とを比較すると、肛門癌の確率が劇的に高くなりますが、HIV陽性男性の場合は特に顕著です。男性と性交する男性に高率で肛門癌がみられることは、肛門癌の80%以上の原因と考えられている高リスクのヒトパピローマウイルス(HPV)に性的接触で感染することと関連しています。

肛門上皮内新生物(AIN)と呼ばれる、肛門腔の内部や周囲の病変は癌に進行する可能性がある。HIV陽性の男性で高グレードのAINから肛門癌に進行する確率は概算で年0.2%から年5%まで変動します。

「これはまだ立証されていないが、子宮頸癌を予防するのに子宮頸部上皮内新生物を治療することと同じように、高グレードのAINの治療は肛門癌の予防に有効なアプローチであることが証明されることを期待している。」とNCI(米国国立癌研究所)のHIV/AIDS関連悪性腫瘍室のRobert Yarchoan医師は説明した。しかし、AIN治療の有効性は研究毎にさまざまな結果であり、この病態に対する標準的治療法はありません。

試験

オランダのアムステルダムのAcademic Medical CenterのOlivier Richel医師が率いるこの臨床試験は、HIV陽性の男性のさまざまなAIN治療選択肢を比較する最初の臨床試験になりました。参加者はアムステルダムの外来クリニックに通院している人から選ばれました。

この臨床試験に参加した男性156人のうち全員が、HIV陽性で男性と性交すると報告しています。参加者の中で57%が高グレードAINで43%が低グレードAINであり、86%がHIV治療を受けていました。男性達は以下の3つの治療のうち1つにランダムに割り当てられました。

  •  小さな低電圧のプローブにより焼ききることで患部を切除する電気焼均術
  • 日光角化症や性器疣贅を含むいくつかの病態の治療にも使われる免疫応答調整薬であるイミキモドの外用剤
  • 化学療法薬で、日光角化症や他の症状の治療に使われるフルオロウラシルの外用剤。これは、他の数種類の癌治療の場合、通常はるかに高用量で静脈投与される。

治療は4週以上に渡って行われました。電気焼均術に割り当てられた男性は毎週一回通院で施術され、イミキモドまたはフルオロウラシルに割り当てられた男性は処方により週に数回自宅で塗布するように指示されました。

結果 

治療終了後4週で、病変が消失(CR:完全寛解)したのは、電気焼均術の男性の39%、イミキモドでは24%、フルオロウラシルでは17%でした。

研究者らがAINの部位による治療反応を分析すると、その結果は幾分違っていました。病変が肛門内部(肛門病変が体内)にあった男性のうち、電気焼均術を受けた34人中16人(47%)が完全寛解(CR)し、それはイミキモドで治療した41人中9人(22%)、フルオロウラシルでは42人中7人(17%)でした。グループ間での反応は統計的に有意な差でした。

病変が肛門周囲(病変が肛門の外のみ)にあった男性では、完全寛解(CR)はイミキモドでは9人全員(100%)、フルオロウラシルでは7人中4人(57%)、電気焼均術では4人中3人(75%)でした。グループ間の反応は統計的には有意な差ではありませんでした。

どの治療法でも完全寛解(CR)した男性は、次にフォローアップの肛門検査(肛門鏡検査)を24、48、72週に受けました。72週のフォローアップの後、完全寛解した人のうち67%が再発しました。AINの再発について3つの治療グループの中で統計的に有意な差はありませんでした。

電気焼均術を受けたグループの男性中、18%にグレード3から4の副作用が発生し、それはフルオロウラシルでは27%、イミキモドのグループでは43%でした。最も多い副作用は痛み、炎症と出血で、出血は主に電気焼均術を受けた男性に発生しましたが、短期間のものでした。各グループで数名の患者が副作用のために臨床試験を離脱しました。

制限事項

この研究のひとつの不十分な点は、病変が肛門周囲にある場合の結果は、少数の患者を元にした計画外の副次的な分析であり、より大規模な研究で確認の必要があるということです。

肛門内部と周辺部両方を含めたAINの研究にはもう一つ不十分な点がある、と論文付随の編集後記にて、ドイツのCologne大学のUlrike Wieland医師とドイツのOberhausenにあるHELIOS St. Elisabeth KlinikのAlexander Kreuter医師は指摘しました。臨床試験結果を元に、肛門内部および周辺部のAINには「異なる治療的アプローチが必要かもしれない」と彼らは議論しています。また、彼らは低グレードAINの患者がこの研究に適格であってよいのか、と疑問を呈しており、その理由は「低グレードAINは治療が必要な肛門癌の前癌病変なのかはっきりしない」からです。

コメント 

Wieland医師とKreuter医師は、この臨床試験はAINの治療にとって「3つの鍵となる重要なメッセージ」を出している、記載しています。「最初に、電気焼均術のような(反復性の)切除法は肛門内部の高グレードAINの一次治療とみなされるべきです。次に、イミキモド局所法は肛門周囲のAINに対してより優れていると思われます。3つ目に、高い再発率を考慮すれば、治療後に定期的な経過観察のための通院は必須です。」

「AIN治療の第一の理由は、肛門癌の発症を防ぐためであるが、このアプローチが実際に有効であるか、または利益がリスクを上回るかを示していない。」とYarchoan医師は注記しました。「これは将来の重要な研究分野になるだろう」と述べました。

Wieland医師とKreuter医師は「長い目で見ると、世界中の若い男性に性病予防のためのHPVワクチン接種が・・・HPVに感染した全グループのAINや肛門癌の罹患率の減少に繋がることを願います」と結論づけました。

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岩崎多歌子 翻訳
東 光久(血液癌・腫瘍内科領域担当/天理よろづ相談所病院)監修
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