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免疫療法のまとめリーフレット/キャンサーリサーチU.K.

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免疫療法のまとめリーフレット/キャンサーリサーチU.K.

Cancer Research U.K.-Immunotherapy briefsheet 2012年7月より

免疫療法のまとめリーフレット

免疫系はわれわれの体に備わっている、癌に対するもっとも強力な武器ですが、手助けの必要なことがしばしばあります。研究者は、体に備わっている複雑な防御機能の解明に正面から取り組み、免疫系を活性化して、癌と戦い、より多くの生命を救う方法を見出そうとしています。

免疫療法とはどのようなものでしょうか?
免疫療法は癌治療のひとつの方法であり、免疫系の持つ能力を利用して癌と戦おうとするものです。癌治療の主要な3つの方法である手術、放射線療法や化学療法に比べると、免疫療法は比較的新しい治療法です。

どのようにして効果を発揮するのでしょうか?
免疫系は軍隊のような仕組みで体を病気から守っています。細菌やウイルスに感染すると、免疫系は体が攻撃を受けていることを感知し、病気と戦って健康を守ります。しかし、癌は免疫の監視機構の下に潜んでいるため、免疫系は問題のあることに普通は気づきません。これは癌が体の正常な細胞から発生し、細胞内のDNAが損傷すると制御不能なまでに増殖するからです。

免疫療法は免疫系に対して癌の存在を‘提示する’働きをし、免疫系が癌と戦いを開始するよう作用します。

免疫療法の種類
免疫療法には2つの主要なタイプがあります。

■非特異的免疫療法は全般的に免疫系を活性化するように働き、体が自然に持っている、癌の殺傷能力を高めます。ひとつの例が、腎癌や皮膚癌、さらに骨髄腫や白血病などの血液癌に用いられるインターフェロンです。

■特異的免疫療法は、免疫系が癌細胞だけを殺すようにデザインされています。
抗体医薬品と癌治療ワクチンはこの両タイプの標的免疫療法です。

・抗体医薬品
抗体医薬品は癌細胞上の特異的な分子を認識し、それと結合するように設計されているので、治療目標を高度に絞りこむことができます。症例によっては、免疫系が癌細胞を攻撃するきっかけとなったり、癌細胞が増殖するための信号の受信を阻止することもあります。

癌の治療に現在用いられている抗体医薬品には、非ホジキンリンパ腫やある種の白血病に用いられるリツキシマブ(マブセラ)、乳癌と胃癌に用いられるトラスツズマブ(ハーセプチン)や、進行大腸癌に用いられるセツキシマブ(アービタックス)などがあります。

ダフネ氏の話
ダフネ氏(78歳)は2007年4月、非ホジキンリンパ腫(血液のリンパ球の癌)と診断され、とてもショックを受けました。ものを飲み込むのに苦労することがあったので、具合の悪いことに気づいていました。珍しいことですが、癌は扁桃腺で増殖を始めていました。手術後、ダフネは抗体医薬品であるリツキシマブによる化学療法を6カ月間受けました。治療は成功し、5年経過した現在、ダフネ氏は再び充実した生活を送っており、ボーリングやトランプをしたり、地域の英国癌研究施設で週に2回、ボランティアとして活動しています。ダフネ氏は、「新しい治療法のおかげで、再び人生を取り戻すことができました」と言っています。

・癌治療ワクチン
癌治療ワクチンは活発な研究分野ですが、まだ初期の段階です。感染を予防する従来のワクチンとは異なり、癌治療ワクチンは体の中ですでに増殖している腫瘍に対し、免疫系が攻撃するようにしむけます。

治療ワクチンのいくつかは研究施設で開発中であり、臨床試験で検証されていますが、英国の病院で使用されているものはまだありません。

ワクチンには癌細胞全体を基にしているものもあれば、細胞表面の分子、または癌細胞DNAの断片を利用するもの(DNAワクチン)もあります。

ワクチンの効きかたはさまざまですが、主な目的はいずれも免疫系が癌細胞を標的と定め、癌細胞と戦うように免疫系を助けることにあります。

ワクチンのいくつかは癌を認識できるように免疫系を‘教育’し、癌が再発した場合でも、体は癌と戦う準備ができているようになります。これは、癌治療ワクチンでは他の抗癌剤よりも、より長期的な効果が見込めることを意味します。

「免疫系を使って面白いことは、いったん免疫系が活動を開始すると、それ自身で活動を続けることです。免疫をうまく使って癌を攻撃できるようになると、より長期間、可能であれば生涯にわたり作用する治療法を見つけることが期待できます。患者が癌に打ち勝つことを手助けできるようになるのです」、とCancer Research UKの主任臨床医Peter Johnson氏は述べています。

免疫療法の研究
われわれは何年もの間、実験室における最先端の研究から病院での臨床試験まで、免疫療法研究の第一線に立ってきました。昨年は免疫療法の研究に1800万ポンド以上を使いました。われわれの画期的な研究の一部を次に紹介します。

われわれの免疫系
免疫治療の進歩の中心は複雑な免疫系の解明にあります。専門家であるロンドンのFacundo Batista博士、Caetano Reis e Sousa博士Adrian Hayday教授、およびサザンプトンのTim Elliott教授は、われわれの免疫系がどのようにして感染や癌を認識し、応答するのかを明らかにしようとしています。免疫細胞がどのように働くかについての彼等の緻密な研究により、癌に対する新たな治療法がもたらされ、癌患者の生存期間を延ばすことができるでしょう。

治療法の向上

サザンプトンにいる研究者らは免疫療法の研究で世界的に知られており、われわれは研究を何十年にもわたって支援してきました。Peter Johnson、Aymen Al-ShamkhaniMartin Glennie教授らは、癌を治療する抗体医薬品の開発と試験の専門家です。また、Christian Ottensmeier教授は、前立腺、大腸、乳腺および肺などのいくつかのタイプの癌に対する臨床試験において、DNAを用いた癌ワクチンの開発と試験を行なっています。

放射線免疫療法
癌患者に副作用のより少ない治療法を開発することはわれわれの主要な目的のひとつです。マンチェスターのTim Illidge教授は、放射線治療を癌細胞に直接到達させる、新規の優れた抗体医薬品を研究しています。これらの抗体は健康な細胞は無傷のままで、癌細胞に狙いを定めるようデザインされています。この治療法は放射線免疫療法と呼ばれ、リンパ腫患者には極めて効果的です。

英国各地の主要な研究

①グラスゴー:Roy Rampling教授は治療が特に困難であり、脳腫瘍にももっとも多い神経膠芽腫患者を対象とした早期臨床研究で新規の癌ワクチンを試験しています。

②リーズ:Alan Melcher教授とそのチームは、遺伝子操作により癌細胞の‘指紋’として働く分子を持つようになったウイルスを用い、癌ワクチンの開発に取り組んでいます。教授らの研究により、将来、前立腺癌や皮膚癌患者を救うことができるようになるでしょう。

③オックスフォード:Vincenzo Cerundolo教授はどのようにすれば癌ワクチンに対する免疫系の応答を改善できるかを研究しています。また、Alison Banham博士とそのチームは、明日の癌患者を救うことのできる、次世代の抗体医薬品の開発と試験を行なっています。

④ロンドン:Peppy Brock博士は進行性神経芽細胞腫の小児患者に対する国際共同臨床試験を実施中です。教授は治療に抗体を加えることにより、癌の再発を予防し、より多くの家族がより長い期間一緒に過ごせるようにできるか研究しています。

さらに多くを知るには:
次のURLから他の研究テーマや他の癌に関するブリーフシートをダウンロードしてください。http://bit.ly/research-leaflets(英語)

われわれの研究成果
・われわれは癌の治療における抗体医薬品の可能性をわかりやすく示してきました。この研究は、リツキシマブ(マブセラ)やトラスツズマブ(ハーセプチン)など、いくつかの抗癌剤を開発するきっかけとなっています。

・ 研究者たちはDNAワクチンによる癌治療の可能性を明らかにするのに先導的役割を果たしました。

・研究者たちは先駆的な研究をリードし、MUC1と呼ばれる癌治療ワクチンの鍵となる標的分子を明らかにしました。MUC1は乳癌、膵臓癌や肺癌などを含む多くのタイプの癌で高頻度で見つかっています。

・われわれは非小細胞肺癌患者の治療に有望な新規の癌治療ワクチンであるStimuvaxの開発を援助しました。Stimuvaxは現在、臨床試験で最終段階に達しています。

・研究者らはインターフェロンにより低悪性度リンパ腫患者では腫瘍を小さくすることができることを明らかにしました。今日では、インターフェロンはいくつかの種類の癌の治療に用いられています。

・われわれは小児癌の一種である神経芽細胞腫治療の一環として、免疫療法の開発をリードしました。この治療により侵襲型の神経芽細胞腫症小児の生活を一変させることがでるようになりました。

Cancer Research UK Tel: +44 (0)20 7242 0200 www.cancerresearchuk.org
政府からの資金援助は受けていません。
登録チャリティ番号:EnglandとWales (1089464)、Scotland(SC041666)、Isle of Man(1103)。

 

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小縣正幸 訳
大野 智 (腫瘍免疫/早稲田大学・東京女子医科大学) 監修
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