癌ワクチンの免疫細胞による攻撃は、接種部位に向かったあと自滅する-アジュバントが原因/M.D.アンダーソンがんセンター | 海外がん医療情報リファレンス

癌ワクチンの免疫細胞による攻撃は、接種部位に向かったあと自滅する-アジュバントが原因/M.D.アンダーソンがんセンター

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癌ワクチンの免疫細胞による攻撃は、接種部位に向かったあと自滅する-アジュバントが原因/M.D.アンダーソンがんセンター

テキサス大学M.D.アンダーソンの研究者らが、一般に用いられるワクチンのアジュバント成分がT細胞を腫瘍からそらすことを発見
M.D.アンダーソンがんセンター
2013年3月13日

癌ワクチンは免疫システムの攻撃を活性化しようとするものだが、それがうまく働かないのは、腫瘍に向けられたキラーT細胞が腫瘍の代わりにワクチン接種部位により強く惹きつけられてしまうためだ、とテキサス大学M.D.アンダーソンがんセンターの研究者らはNature Medicine誌で報告している。

免疫攻撃を増強するために多くの癌ワクチンで一般に使用される物質が、ワクチン接種部位におけるT細胞の集簇(しゅうぞく)を促進し、その結果(集簇したT細胞によって)認識された脅威に向かってさらに多くのT細胞が呼び寄せられてしまい、(癌細胞を攻撃するという癌ワクチン本来の)目的は遂げられなくなる。

「ワクチンは、標的とする癌を攻撃するT細胞の増殖を促進し、ワクチン接種後の血液中には多くのT細胞が存在します。われわれは、そのうちほんのわずかが腫瘍に達する一方、はるかに多くがワクチン接種部位に留まってしまうか逆戻りしてしまうことを見出しました」と、統括著者であるM.D.アンダーソンメラノーマ腫瘍内科のWillem Overwijk博士は述べた。

結果:腫瘍の大部分は無傷であるのに、過剰に活性化された免疫反応は接種部位を傷害する可能性がある。研究チームは、免疫反応を活性化するために多くのワクチンに加えられる鉱油性アジュバントである不完全フロイントアジュバント(IFA)が、この失敗の主な原因であることを見出した。

「IFAは腫瘍に対して免疫性を引き起こすように設計された抗原とともに、最長3カ月間、ワクチン接種部位周囲に留まります」、とOverwijk氏は述べた。「T細胞は攻撃し続け、援軍を求めるためにサイトカインを放出し続けますが、IFAは不死身の標的です。つまりT細胞は鉱油を除去できないのです」。

結局、T細胞は死んでしまう。「ワクチン接種部位は損傷組織や抗原だらけになり、ますますウイルス感染に似てきます」、とOverwijk氏は言った。

IFAから生理食塩水アジュバントに切り替えることで効果は逆転する

「黒色腫ワクチンのアジュバントを生理食塩水ベースに切り替えることで、マウスにおけるT細胞の効果は逆転しました」と、Overwijk氏は述べた。「多くのT細胞が腫瘍に集まり、腫瘍を縮小させましたが、ワクチン接種部位のT細胞活性はわずかでした」。

ペプチド抗原はほとんどの種類の癌に利用することができる、とOverwijk氏は述べた。生理食塩水アジュバントは癌ワクチンの乏しい抗癌効果を変化させる可能性がある。この考えに基づいた臨床試験が今年後半、バージニア大学およびM.D.アンダーソンで開始される予定である。

Overwijk氏らは、さまざまな癌に対するワクチンの、米国連邦政府が承認した98の臨床試験のほとんどが失敗に終わった一方で、別の37の試験が開始され、患者を登録していることに言及した。米国食品医薬品局(FDA)は前立腺癌に用いる治療ワクチンを、それらの試験の中からたった1つしか承認していない。

「われわれのグループや他の多くの研究者らは、何年もの間、癌ワクチンの効果を改善しようとしてきましたが、実現できませんでした」、とOverwijk氏は言った。「彼らは血中のまやかしのT細胞レベルに囚われて努力し続けています。しかしわれわれのデータは、IFAベースのワクチンのまさにその性質が、それらをなかなかうまく機能できないようにさせている可能があることを示唆しています」。

過去の実験や臨床試験では、腫瘍にT細胞が侵入したかの確証を得るために腫瘍を調べることはほとんど行われない。患者は手術不可能であることが多く、またそれを行う必要性は指摘されていなかった。「しかし少数の研究者がT細胞の腫瘍への侵入をヒトの腫瘍で解析し、われわれがマウスの実験で発見したことの多くを見出しました」と、彼は言った。

マウスの研究からワクチンの自己破壊作用が明らかに

研究チームは、IFA存在下および非存在下でのgp100ペプチドワクチン接種後のメラノーマ特異的CD8陽性T細胞の経時的変化について調べた。 

両ワクチンは目的とするT細胞の血中レベルを上昇させたが、IFA存在下ではT細胞は3週間後にはほとんど検出できないレベルにまで減少し、ウイルス由来のブースターを使っても回復しなかった。IFAなしのワクチンも同様のT細胞量のピークを引き起こし、この反応は長期間持続した。

調査チームはマウスモデルでT細胞を蛍光標識し、それらがどこに移行するのかを調べた。

・IFA非存在下のマウスでは、大部分のT細胞が腫瘍中で光を発し、ワクチン接種部位にはほとんど見られなかった。
・IFAベースのワクチンを接種されたマウスでは、T細胞は接種部位に集簇するが、腫瘍にはほとんど見られなかった。

反応の持続期間はIFA存在下の抗原gp100ワクチン(gp100/IFA)およびコントロールとしてのIFAのみのワクチンで検証された。抗原(=gp100)/IFAの組み合わせはワクチン接種部位に集積し停留し続け、ワクチン接種から96日後でも注入T細胞の増殖を活性化した。

別の実験では、抗原(gp100)/IFAによって誘導されたT細胞は、細胞自殺を誘導する様々なタンパク質によって、ワクチン接種部位で自殺を余儀なくされることがわかった。

接種部位におけるワクチン停留の緩和

Overwijk氏らは、ワクチンの「停留(=「接種部位へのリンパ球の集簇)」の規模や持続を緩和することが、この問題の答えになるかもしれないと考えた。

彼らはIFAの代わりとして生理食塩水ベースのワクチンを検証し、抗原がより早く除去され、また目的のT細胞反応を活性化しないことを明らかにした。3つの促進性分子の組み合わせ(covax)を生理食塩水/ペプチド(=gp100)ワクチンに加えると、強いT細胞反応が起こった。IFA/ペプチド(=gp100)ワクチンは強いT細胞反応を誘導すると同時に、免疫反応ピーク後のT細胞の自殺をより強く引き起こした。

生理食塩水/ペプチド(=gp100)/covaxとIFA/ペプチド(=gp100)/covaxを比較すると、生理食塩水バージョンはT細胞を腫瘍に誘導してそれらを破壊する一方、IFAバージョンはT細胞を接種部位に集簇させ正常組織を破壊し、ケモカインを誘導してT細胞自身を殺傷することがわかった。

「IFAベースのワクチン接種部位は、基本的にT細胞の認識や集簇、ケモカイン産生および組織損傷において腫瘍部位を上回ります」、とOverwijk氏は述べた。「それは今まで正しく評価されてこなかった、ワクチンの設計上の不備なのです。幸いにもわれわれの結果は、癌患者に用いる新しくより強力なワクチンの製法をいかに設計するかについても直接教えてくれています」。

筆頭著者Yared Hailemichael氏の他の共著者は以下の通りである。Zhimin Dai, Nina Jaffarzad, Yang Ye, Miguel Medina, Xue-Fei Huang, Stephanie Dorta-Estremera Nathaniel Greeley, , Giovanni Nitti, Weiyi Peng, Chengwen Liu, Yanyan Lou, Brian Rabinovich and Patrick Hwu, all of MD Anderson’s Department of Melanoma Medical Oncology; Zhiqiang Wang, Wencai Ma, and Richard Davis, of MD Anderson’s Department of Lymphoma and Myeloma; and Kimberly Schluns, of MD Anderson’s Department of Immunology.

Dorta-Estremera, Greeley, and Nitti are graduate students in The University of Texas Graduate School of Biomedical Sciences, a graduate school operated jointly by MD Anderson and The University of Texas Health Science Center at Houston. Schluns, Davis, Hwu and Overwijk also are on the GSBS faculty.

米国国立衛生研究所の米国国立癌研究所の補助金(RO1 1CA143077およびPO1 CA128913)、およびMelanoma Research Allianceからの賞金が、この研究に資金を供給している。

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井上陽子 訳
大野 智 (腫瘍免疫/早稲田大学・東京女子医科大学) 監修
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原文


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