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血管内皮細胞が大腸癌細胞をより危険な癌幹細胞に誘導/MDアンダーソンがんセンター

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血管内皮細胞が大腸癌細胞をより危険な癌幹細胞に誘導/MDアンダーソンがんセンター

M.D.アンダーソンの研究者らは、腫瘍内皮細胞が癌細胞を癌幹細胞に変化させることを発見
M.D.アンダーソンがんセンター
2013年1月31日

血管は、腫瘍に酸素や栄養素を供給するが、血管が運搬するものは他にもある。近接する癌細胞を増強するシグナルである。それは、癌細胞に化学療法への耐性を獲得させ、他の臓器に転移しやすくし、より致死性を高めさせる。テキサス大学M.D.アンダーソンがんセンターの研究者らが、Cancer Cell誌電子版に発表した。

ヒト大腸癌の細胞株、腫瘍試料およびマウスモデルを用いた実験で、血管の内面に並んでいる内皮細胞が、癌細胞に直接接触することなく、その変化を誘発できることを研究者らは見出した。

内皮細胞によるこのシグナル伝達により、大腸癌細胞が癌幹細胞の性質を持つようになる、とM.D.アンダーソンの外科腫瘍学および癌生物学部門の教授であり、本論文の統括著者であるLee M. Ellis医師は語った。

「癌幹細胞は腫瘍増殖を開始、継続させ、転移および化学療法に対する耐性を促進させるほか、種々の性質を持っています」とEllis医師は述べた。「われわれは、今回の内皮細胞のような腫瘍の微小環境因子が、悪性細胞から癌幹細胞への転換を促進するという新しい経路を同定しました」。

本研究チームは、血管内皮細胞が、以前は未知であった方法で大腸癌細胞内のNotch分子経路を活性化し、この転換を開始させることを見出した。

Notch阻害剤の可能性

Notchは細胞表面に存在する受容体タンパクで、他の細胞表面のリガンドタンパクによってのみ活性化すると考えられてきた。細胞と細胞の接触が必要であった。Notchは、新生血管の形成を含む種々の細胞機能にとって重要であるが、癌においてはしばしば制御不能となる。

「われわれの発見は、現在臨床試験が行われている開発中のNotch阻害剤が、腫瘍細胞へ直接または血管系を介して、あるいはその両方によって作用する可能性があることを示しています」と、Ellis医師は語った。

大腸癌は、米国において癌による死因の第2位で、治療不可能な転移性大腸癌によって年間5万人が死亡している。血管や支持組織、および低酸素(酸素不足)のような条件下の腫瘍の微小環境が、転移性腫瘍の種を育てる土壌なのである。

本論文の筆頭著者であるJia Lu修士らは、内皮細胞が癌幹細胞の増殖に対して与えうる影響に注目した。M.D.アンダーソンおよび他の機関の研究チームは、一連の実験を行い、内皮細胞と大腸癌幹細胞との関係を系統的に明らかにした。

・ ヒト大腸癌細胞を内皮細胞とともに培養すると、癌幹細胞の2つのマーカー、CD133およびALDHの活性を発現する癌細胞の数が増加した。

・ 内皮細胞で馴化された培地で増殖した癌細胞では、CD133陽性細胞が7倍、ALDH陽性細胞が16倍増加し、癌幹細胞のもうひとつの大きな特徴であるコロニー形成能が6倍高かった。

・ マウスモデルの実験において、内皮細胞馴化培地の大腸癌細胞では、対照培地で増殖させた細胞と比べて腫瘍形成および増殖速度が促進した。

・ 内皮細胞馴化培地の大腸癌細胞は、対照培地の大腸癌細胞に比べて、より多くの転移巣を形成した。肝転移の研究では、内皮細胞で培養した癌細胞を注入したマウス10匹中9匹で肝転移巣が増大したが、対照群では10匹中3匹であった。

・ 内皮細胞馴化培地で培養した大腸癌細胞は、2種の化学療法剤で処置しても、(対照群と比べて)より長く生き延びた。

・ 癌幹細胞の成長に関わることが知られている分子ネットワークの有無を解析した結果、内皮細胞馴化培地の大腸癌細胞内では、Notch経路のみが活性化されていた。

・ Notchは、ヒト腫瘍内の内皮細胞に隣接した大腸癌細胞内で活性化している。

・ 内皮細胞が可溶性タンパクを分泌することは以前から知られていたが、本研究チームは可溶性Jagged-1によって活性化されたNotchが癌幹細胞への転換を促進することを見出した。Jagged-1は、別の細胞表面に結合しており、Notchを活性化する単なるリガンドであると以前は考えられていた。

・ プロテアーゼADAM17がJagged-1の一部を切断して可溶性Jagged-1を生成することを、本研究チームはのちに明らかにした。

・ 細胞株とマウスの実験から、低分子干渉RNAまたはプロテアーゼ阻害剤によってADAM17産生を阻害すると、大腸癌幹細胞の形成が妨げられることが示された。

「結果の再現性は重要です。われわれは、これらの実験に多様な内皮細胞株と大腸癌細胞株を用いましたが、何度も同じ結果が得られました」とEllis氏は語った。

一連の事象に関わる細胞シグナル伝達の形式は、パラクリンシグナリング(傍分泌)である。すなわち、2つの異なる種類の細胞間におけるシグナル伝達は、直接接触ではなく、可溶性の伝達物質を介している。最近、Weill Cornell Medical Collegeの Shahin Rafii医師は、内皮細胞と他の標的細胞間のシグナル伝達を「angiocrineシグナリング」と命名し、Ellis医師はこれを支持している。

転移性大腸癌の治療には、6つの薬剤が承認されており、中には腫瘍を支持する血管を標的にした薬剤が含まれている。しかし、患者にとって劇的に有効な薬剤はなく、全生存期間の中央値はいまだに2年未満である。

多くの追加研究が行われれば、転移性大腸癌患者に対するより改善された標的療法が、われわれの発見から導き出されるのではないだろうか。

今後の研究では、癌細胞の攻撃性を促進する、血管内皮細胞が分泌する他の因子について重点的に取り組むことになろう。「血管内皮細胞が単なる血液を運ぶ管ではないことは明らかです。実際、血管内皮細胞は癌細胞より多くタンパクを分泌することが、予備実験からうかがえます。もちろんこれには検証が必要です」。

Lu氏とEllis医師の共著者は以下のとおりである。
Jia Lu, Xiangcang Ye, Fan Fan, Ling Xia, Rajat Bhattacharya, Yunfei Zhou, and Isamu Tachibana; of MD Anderson’s Department of Cancer Biology; Seth Bellister, Federico Tozzi, and Eric Sceusi of MD Anderson’s Department of Surgical Oncology; Dipen Maru, and David Hawke, of MD Anderson’s Department of Pathology; Janusz Rak, of Montreal Children’s Hospital Research Institute, McGill University; Sendurai Mani of MD Anderson’s Department of Molecular Pathology and Patrick Zweidler-McKay of MD Anderson’s Department of Pediatrics

本研究は、米国国立衛生研究所(NIH)がんセンターの支援助成金、(CA016672)、NIH米国国立癌研究所の助成金(T32CA009599 and R01CA157880)、米国国防省の助成金、およびthe William C. Liedtke, Jr., Chair in Cancer Research and an R.E. ”Bob” Smith Fellowshipの資金援助を受けている。

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徳井陽子 訳
須藤智久(薬学/国立がん研究センター東病院 臨床開発センター) 監修
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原文


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