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再発した低悪性度卵巣癌患者に対する初の治験薬selumetinib/MDアンダーソンがんセンター

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再発した低悪性度卵巣癌患者に対する初の治験薬selumetinib/MDアンダーソンがんセンター

臨床試験で分子標的治療が腫瘍を縮小。個別化治療への第一歩
MDアンダーソンがんセンター
2013年2月8日

低悪性度卵巣漿液性腺癌は、高悪性度の組織型と比較して頻度が低くまた悪性度は低い。しかし、初回治療が失敗した場合、治療が極めて困難となる、とDavid Gershenson医師は語る。

「手術後、術前化学療法の実施の有無にかかわらず、低悪性度卵巣漿液性腺癌が残存したり再発した場合、化学療法やホルモン療法は比較的奏効しなくなります」とDavid Gershenson医師は続けた。テキサス大学MDアンダーソンがんセンター、婦人科腫瘍科・生殖医療科の教授である。

治療の奏効率は一桁台である。Gershenson医師らは、20年間の研究の大部分を、卵巣癌症例患者の10%を占める低悪性度卵巣漿液性腺癌の評価に費やし、新たな治療法を探索してきた。卵巣癌は、患者の80~85%で再発または残存する。

NCI Gynecological Oncology Groupによる第2相臨床試験で、ある薬剤がこうした卵巣癌患者で奏効率が比較的高いことが初めて示された。

Selumetinib(セルメチニブ)は腫瘍の増殖を止める、または縮小させる

低悪性度卵巣漿液性腺癌を対象としたその最初の分子標的療法の臨床試験では、患者52人のうち8人(15%)で完全奏効または明らかな部分奏効(腫瘍縮小)を、さらに34人(65%)に2年間の試験期間で無増悪を達成した。試験成績は,2013年2月号のThe Lancet Oncology誌に掲載される。

「最終的には手の打ちようがなくなる卵巣癌に対して、これらの試験成績は非常に有望なものです」と、本論文の統括著者であるGershenson医師は述べる。

これらの患者では、全生存期間の中央値は80カ月であり、高悪性度卵巣癌の約2倍の長さである。高悪性度卵巣癌は診断時の年齢が主に60歳代であり、卵巣癌患者の90%を占めている。低悪性度卵巣癌患者の平均年齢は若年であり40歳代まで低下する、と述べるGershenson医師。20歳代、30歳代及び40歳代の女性でみられることも稀ではなく、またごく稀に10歳代でも低悪性度卵巣癌がみられることがある。

高悪性度卵巣漿液性腺癌の場合、再発時の化学療法でも反応を示す。

全生存期間の中央値は得られていない

BRAF及びKRAS遺伝子における癌を誘発する遺伝子変異が低悪性度卵巣がんでは多く発現するため、この試験の研究者はこれらの遺伝子が関与する分子レベルのネットワークを標的とする薬剤を選択した。

MEK1/2はMAPK経路で知られる重要な分子であり、BRAF及びKRASも関与している。Selumetinibはこの分子を抑制する。

患者52名全員が少なくともひとつの前治療を受けており、30名は3つ以上の既治療を有していた。Selumetinibの臨床試験から以下の成績が得られている。

・無増悪生存期間の中央値は11カ月であり、34名(65%)では6カ月以上卵巣癌の進行がみられなかった。
・2年全生存割合が55%
・全生存期間の中央値は、試験参加者の半数以上(61%)が本試験のデータ打ち切り時点で生存しているため得られていない。
・治療薬投与で死亡した患者はいない。

副作用には、心毒性及び消化器障害、疼痛、疲労感、貧血及び皮膚障害がみられている。患者52名のうち、22名が投与量を減量し、また13名が最終的に副作用による試験中止となった。

患者34人から、DNA解析に十分な腫瘍試料を得た。14人にKRAS変異が認められ、2人にはBRAF変異が認められたが、これらの遺伝子変異を有することとselumetinibの薬剤感受性の間には相関はなかった。

Gershenson医師によれば、NCI Gynecological Oncology Group及びイギリスの試験医師らとともに実施する規模のより大きい第2/3相臨床試験で、薬剤と遺伝子変異の相性に関する課題をさらに探索する予定であり、その試験では患者250人を登録し、2013年晩夏に開始する見込みである。

第2相試験では、通常は対照群又は比較群を設定しないが、この試験には参加しておらずMDアンダーソンがんセンターで最新の治療オプションを受けた女性患者58人の治療成績に注目した。このうち、患者は延べ108の化学療法レジメンを受けており、1人が完全奏効、3人が部分奏効であり、全奏効割合は3.7%であった。

卵巣癌の個別療法への一歩
発表論文に付随する解説で、本試験には参加しなかったドイツの腫瘍学者のSven Mahner医師及びJacobus Pfisterer医学博士は本試験について、低悪性度卵巣癌及び高悪性度卵巣がんでの重要な分子レベルの違いを反映した卵巣癌の個別化治療への一歩であると述べた。

奏効率及び病状安定率が「前治療の多い再発卵巣癌患者に対し特に有望」である。

「本試験の長所は、再発病巣の病理組織確認を絶対条件とし、化学療法が奏効しやすい高悪性度への増悪患者、及び完全切除による手術単独で良好な予後を期待できる再発境界性悪性卵巣腫瘍患者を除外する点である」とMahner氏及びPfisterer氏は評した。

Gershenson医師のほか、共著者は次のとおりである。Co-authors with Gershenson are first author John Farley, M.D., of Creighton University School of Medicine at St. Joseph’s Hospital in Phoenix; William Brady, Ph.D., and Heather Lankes Ph.D., of Roswell Park Cancer Institute in Buffalo, N.Y.; Vinod Vathipadiekal, Ph.D., and Michael Birrer, M.D., of Massachusetts General Hospital, Boston; Robert Coleman, M.D., MD Anderson’s Department of Gynecological Oncology; Mark Morgan, M.D., Fox Chase Cancer Center, Philadelphia; Robert Mannel, M.D., of University of Oklahoma Health Sciences Center, Oklahoma City; S. Diane Yamada, M.D., University of Chicago; David Mutch, M.D., Washington University School of Medicine, St. Louis, Mo., and William Rodgers, M.D., Lenox Hill Hospital, New York.

 

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菅原宣志 訳
喜多川 亮(産婦人科/NTT東日本関東病院)監修
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原文


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