移植前の臍帯血体外増幅により新たな造血をより早く確立することで、造血回復までの高リスク期を短縮/MDアンダーソンがんセンター | 海外がん医療情報リファレンス

移植前の臍帯血体外増幅により新たな造血をより早く確立することで、造血回復までの高リスク期を短縮/MDアンダーソンがんセンター

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移植前の臍帯血体外増幅により新たな造血をより早く確立することで、造血回復までの高リスク期を短縮/MDアンダーソンがんセンター

血小板及び白血球の生着が、標準の複数臍帯血移植よりも迅速に
MDアンダーソンがんセンター
2012年12月12日

骨髄環境に類似した細胞培地を用いて、体外増幅した臍帯血を移植した患者では、新たな造血がより早く確立されたとして、New England Journal of Medicine誌2012年12月13日号で報告された。

テキサス大学MDアンダーソン・がんセンターの研究者が行ったこの第1/2相試験は、白血病、リンパ腫及びその他血液癌の治療で用いた化学療法又は放射線療法により破壊された造血を、臍帯血幹細胞を用いて置換する方法における主な課題に取り組む試験である。

「2つの臍帯から得られる血液幹細胞及び免疫細胞数は、一人のドナーの骨髄又は末梢血から得られるこれらの細胞数より少ないのです」と述べたのは執筆責任者であるElizabeth Shpall医師。MDアンダーソンの幹細胞移植・細胞療法部門の教授である。

このため、臍帯血細胞移植後に新たな造血が確立する期間、すなわち生着までの期間が長期化する。「この時期はリスクの高い期間であり、患者には感染症に対抗する白血球や出血を防ぐ血小板がありません」とShpall医師。

移植細胞数の増加で、回復が早期化

臍帯2ユニットのうち1ユニットの血液を用い、間葉系前駆細胞培養を用いて体外増幅することで、移植細胞数の大幅な増加、造血回復までの時間の短縮化、及び造血が確立した(生着した)患者の割合が増加した。

「増幅により、移植細胞総数が中央値で12倍、またCD34陽性細胞数が40倍それぞれ増加しましたが、これらは生着にとって重要なものです」とShpall医師は述べた。「この増加により白血球及び血小板の生着が早期化し、患者の安全性が向上すると考えています。」

(以下、水色の枠内)
臍帯血移植
血液幹細胞移植が必要な患者の約70%では、家族にHLA一致ドナーが存在しない。

臍帯血はすぐに使用可能であり、患者との合致が厳密である必要はない。

母親が子供の臍帯を提供することに同意すると、出産後分娩室で臍帯を回収する。

全米骨髄バンク(Be the Matchレジストリー)は、2,000万人の血液幹細胞ドナー、165,000ユニットの臍帯血を保有している。

世界中の臍帯血バンクで、590,000ユニット以上の臍帯血を共有している。

MDアンダーソン臍帯血バンクは、世界でも最も成長の早い臍帯血バンクである。

16,284ユニットを保管している。

臍帯ドナーの73%が骨髄ドナーで不足している人種・民族である。

790ユニットが世界中で移植され、移植に不適格な4,680ユニットは研究に用いられた。

提供する場合は、713-563-8000又は 1-866-869-5100へお電話下さい。
(ここまで)

「ランダム化臨床試験で私たちの研究成果が確認された場合、移植前に間葉系間質細胞培養で臍帯血を増幅する方法は、新たな標準的治療となる可能性があります」とShpall医師は述べた。

同医師はまた、オーストラリアの再生医療関連企業であるMesoblast Limited社が提供する、すぐに使用可能な間葉系前駆細胞によって、臍帯血細胞の増幅にかかる期間をを従来の最低でも1カ月だったのが数週間へと短縮したことにも言及している。

オーストラリアの研究者であり、本試験報告の共著者であるPaul Simmons博士は同研究部門の担当部長でもあり、最初に間葉系前駆細胞を同定し、骨髄外での使用のために間葉系細胞を骨髄から抽出する方法を発見した研究チームを主導した。

HLA一致ドナーが見つかるのは、移植に理想的な状況ではあるが、約25%にとどまっている。複数臍帯血移植は、HLA一致ドナーが得られない患者(ここには血液幹細胞ドナーが不足しているアフリカ人、アジア人又は中南米人が多く含まれる)における主な選択肢の一つである。

血液幹細胞移植で主に用いられる方法である、末梢血(幹細胞)移植を受けた患者では、感染症に対抗する白血球(好中球)は平均11日で、また血小板は平均13日でそれぞれ生着が見られる。複数臍帯血移植では、各細胞の生着がそれぞれ26日及び53日であった。

「これは十分満足とはいえません」と、MDアンダーソン臍帯血バンクも運営するShpall医師は述べた。同医師や研究者たちは最適な臍帯血増幅法を長い間研究してきた。鍵となる細胞はすべての血液細胞、すなわち血小板、白血球、赤血球へと分化する血液幹細胞である。

増幅により白血球/血小板の生着が早期化

高リスク患者31人で、研究班は2ユニットの臍帯血のうち片方は血液細胞を増幅して移植した。同研究班は、試験成績についてCenter for International Blood and Marrow Transplantationに報告された標準複数臍帯血移植症例80人と比較した。
本試験で有効性複合評価項目とした26日以内の好中球生着、60日以内の血小板生着、及び100日目時点での生存について、臍帯血増幅群では63%が達成したが、これに対し対照群では24%であった。

増幅臍帯血を移植した患者では

• 好中球の生着までの期間の中央値が15日、これに対し対照群では24日であった。
• 血小板の生着までの期間の中央値が42日、これに対し対照群では49日であった。
• 26日目での好中球の累積生着率は88%、これに対し対照群では53%であった。
• 60日目での血小板の累積生着率は71%、これに対し対照群では31%であった。

「好中球及び血小板の生着がより早いことに加え、生着の質が今までのどの研究結果よりも改善されています。」と述べたのは筆頭著者であるMarcos de Lima医師である。MDアンダーソン教授時代は本試験の主導医師であり、現在は米国クリーブランドのCase Western Reserve University School of Medicineで医学部教授でありUniversity Hospitals Case Medical Center Seidman Cancer Centerの血液悪性腫瘍・骨髄移植部の部門長を務める。

目標は出血、感染症、入院期間及び輸血の減少

「臍帯血移植患者は多くの場合、血小板の輸血が数カ月にわたって必要となります。」とDe Lima医師。「対照群患者のほとんどでは、血小板の造血開始が認められなかった一方で、試験群では70%の患者で60日以内に生着が認められています。」
「患者の視点に立てば、出血、感染症、受診回数及び輸血、これらの減少に進展が望まれます」とDe Lima医師は述べた。

Mesoblast社の間葉系前駆細胞は現在、Shpall医師が責任医師として試験実施施設15カ所で実施中の前向きランダム化第3相試験で正式に評価中である。この試験では増幅及び通常の臍帯血をそれぞれ1ユニットずつ移植した患者、また標準複数臍帯血移植を受けた患者のそれぞれ120人を比較する試験である。

研究室のフラスコで骨髄環境を再構築

Shpall医師、及び幹細胞移植及び細胞療法の教授でもあるIan McNiece博士は、15年間の期間をかけて臍帯血増幅に関する研究を行ってきた。同医師らの考えでは、血液細胞が増殖する骨髄において支持網を形成する間葉系前駆細胞が、臍帯血細胞増幅を向上すると見ていた。間質細胞は体内注入でも免疫反応を誘発しない。同医師らは、患者の血縁者から採取した間葉系間質細胞を培養し、その細胞層上で臍帯血を体外増幅する方法を開発した。この手法における物流や所要時間が、臨床試験への患者登録を制限していた。同医師らはMesoblast社の細胞を評価し、造血前駆細胞の増幅能でドナー細胞に対して優位性を確認したため、このMesoblast社の細胞へ変更した。

「この増殖法はまさに、血液幹細胞が増殖し分化する環境が間葉系間質細胞により最適に保たれている骨髄での造血機序を再現したものです」とMcNiece博士は述べた。「また、私たちは、間葉系間質細胞の増殖培養に成長因子を添加し、患者の治療に最適と考える分化を促進させます。」

既述した医師のほか、共著者は次のとおり:Simon N Robinson博士、Amin Alousi医師、Rima Saliba博士、Indreshpal Kaur博士、Partow Kebriaei医師、Simrit Parmar医師、Uday Popat医師、Chitra Hosing医師、Richard Champlin医師、Jeffrey J. Molldrem医師、Roy Jones医学博士、Yago Nieto医博士、Borje Andersson医学博士、Nina Shah医師、Betul Oran医師、Muzaffar Qazilbash医師、Martin Korbling医師、Gabriela Rondon医師、Stefan Ciurea医師、Doyle Bosque、Ila Maewal、PharmD(以上MD Anderson’s Department of Stem Cell Transplantation and Cellular Therapy)、Mark Munsell(MD Anderson’s Department of Biostatistics)、Laurence Cooper医学博士、Laura Worth医師(MD Anderson’s Division of Pediatrics)、Mary Eapen医師、Mary Horowitz医師(Center for International Blood and Marrow Transplant Research, Medical College of Wisconsin)、John McMannis博士(Mesoblast社)及びCatherine Bollard医師(Center for Cell and Gene Therapy, Baylor College of Medicine)。
本試験の資金はNational Institutes of Health、National Cancer Institute(助成金番号:RO1 CA061508-18、PO1 CA148600-02)and MD アンダーソンNCI Cancer Center Support Grant (CA016672)、またテキサス州のCancer Prevention and Research Instituteからも援助をうけた。Mesoblast社からも助成支援を受けた。

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菅原宣志 訳
吉原 哲(血液内科/造血幹細胞移植)監修
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原文


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