抗HIV薬が乳癌に効く可能性/ジョンズホプキンス大学 | 海外がん医療情報リファレンス

抗HIV薬が乳癌に効く可能性/ジョンズホプキンス大学

更新日

Facebookでシェアする Twitterにツィートする LINEに送る print

抗HIV薬が乳癌に効く可能性/ジョンズホプキンス大学

リリース:2012/10/10

ジョンズホプキンスの研究者らは、2300以上の薬剤を乳癌細胞の増殖抑制効果についてスクリーニングし、抗HIV薬剤のネルフィナビルがHER2陽性腫瘍細胞の進行を他の乳癌治療薬に耐性がある場合でも、遅らせることを発見した。

10月5日付Journal of the National Cancer Institute誌電子版で発表された本発見の報告で、ネルフィナビルは米国食品医薬品局(FDA)に承認された濃度で奏効したとも研究者らは述べている。

いわゆるHER2陽性乳癌は、HER2タンパク質を含有しており、乳癌症例の25%~30%を占め、HER2陰性癌に比べ悪性度が高く、ホルモン療法に反応しにくい。この現状が、より良い薬剤治療や特に既に市販されている薬剤を「再活用」(repurposing)することによる探索の迅速化の模索への動機づけとなっている。

「ゼロからの新薬開発はきわめて高価で時間がかかり、新たな化合物が薬として市販されるまでに約10億ドルの費用と10年以上の時間がかかります」とジョンズホプキンス大学医学部薬理学および分子科学科教授のJun O. Liu博士は言う。

「既存の薬剤は費用のかかる安全性や承認手続き上のハードルのほとんどをクリアしています」と約10年間薬剤の「再活用」を研究しているLiu博士は述べる。

創薬の迅速化のために、Liu博士らはジョンズホプキンスドラッグライブラリー(Johns Hopkins Drug Library)を創設した。そこには現在約2900の薬剤があり、そのほとんどがFDA承認済みである。

すべて第1相臨床試験を完了し、投与の安全性が検証されている。

新たな研究では、Liu氏のチームは2人の患者の乳癌細胞から研究を開始し、その後ライブラリーのすべての薬剤を細胞抑制効果について検証した。

最もよく奏効した70の薬剤を研究の第2段階に進め、遺伝子的に異なる7人の患者の細胞を検証し、どの薬剤が最も奏効するかを検討した。

これらの薬剤のうち5つがHER2陽性細胞増殖を停止させるか、または遅らせる効果があるとして選択された。

5つの薬剤のうちの1つであるネルフィナビルは、HER2陽性細胞に対して他の薬剤よりも奏効し、HER2タンパク質そのものを阻害すると考えられたため、さらに検証することにしたとLiu氏は述べる。

ネルフィナビルは、メラノーマ、非小細胞肺癌、膵臓癌に対して広範な抗癌作用があることも知られている。

ネルフィナビルがHER2陽性またはHER2陰性ヒト乳癌細胞を埋め込んだマウスで奏効するかどうかを調べるために、チームはマウスにプラセボまたはヒト等価用量のネルフィナビルを投与し、その後1カ月間腫瘍の大きさを測定した。

ネルフィナビルはマウスのHER2陽性腫瘍の増殖を遅らせたが、HER2陰性腫瘍では効果を示さなかった。

一般的に用いられる乳癌治療薬のトラスツズマブおよびラパチニブに耐性を示す腫瘍の増殖をネルフィナビルが遅らせるかどうかを調べるために、研究者らは研究室で培養した薬剤耐性細胞および薬剤非耐性細胞にネルフィナビル、トラスツズマブまたはラパチニブを投与した。

ネルフィナビルのみが薬剤耐性および非薬剤耐性細胞の両方の増殖を抑制した。

HIVの治療で、ネルフィナビルはタンパク質を分解するプロテアーゼという酵素を抑制するが、Liu博士のチームはネルフィナビルがこれと同じ機序を用いて乳癌細胞の増殖を遅らせるかどうかを知りたいと思っていた。

これについて検証するため、彼らはさまざまな酵母細胞にネルフィナビルを投与した。酵母細胞はヒトの細胞と類似しているため、遺伝子に対する薬物作用を検討するためによく用いられる。

それぞれの酵母は特定のタンパク質を生成しにくいように遺伝子を組み換え、環境ストレスの影響を受けやすくした。

HSP90タンパク質を生成しにくい酵母を薬剤に添加すると、細胞が死滅することがわかった。これはネルフィナビルが非プロテアーゼHSP90と相互作用することを示唆している。

「HSP90はHER2と結合することも知られているため、興味深いことでした。ネルフィナビルはこの相互作用を阻害しているかもしれないと考えています」とLiu博士は言う。「これは臨床試験にとって良い出発点です」と付け加えた。

本論文のその他の著者は、Joong Sup Shim、Rajini Rao、Inkyu Han(以上、ジョンズホプキンス大学)、Kristin Beebe、Len Neckers(以上、米国国立癌研究所)、Rita Nahta(Emory University School of Medicine)である。

本研究は米国国立癌研究所 (R01CA122814)、National Center for Research Resources(UL1 RR025005)、Flight Attendant Medical Research Institute, the Commonwealth Foundation、国立アレルギー感染病研究所(R01AI065983)による資金提供を受けた。

ドラッグライブラリーを創設し、FDA承認薬の他の用途を探索するJun Liu氏

******
吉田加奈子 訳
原 文堅(乳腺科/四国がんセンター) 監修
******
原文

printこの記事を印刷する Facebookシェアする Twitterツィートする LINE送る

免責事項当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

注目キーワード

新着ドキュメント

一覧

arrow_upward