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遺伝子変異により膀胱癌治療法を決定できる可能性をNIHの研究が示唆

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遺伝子変異により膀胱癌治療法を決定できる可能性をNIHの研究が示唆

2012年12月26日

NCIプレスリリース

米国国立衛生研究所(NIH)の研究によると、ある特定の共通した遺伝子変異を受け継ぐ患者は、前立腺幹細胞抗原(PSCA)として知られるタンパク質を多く発現する膀胱癌を発症している。PSCAは多くの膵臓癌や前立腺癌にも発現している。

前立腺癌と膵臓癌の臨床試験で、腫瘍細胞表面のPSCAタンパク質を標的とする治療が検討されている。研究者らは、遺伝子変異を持つ膀胱癌患者でもこの治療法が試験されることを望んでおり、そのことが、潜在的な有害な副作用の減少、費用の削減、治療の有効性の向上につながる可能性がある。

(キャプション:女性の膀胱とその近辺の臓器の図)

全ての遺伝子は、ヌクレオチド(T、C、G、A)と呼ばれるDNAの構成要素がひも状に長く連なっている。文字列の一文字の変化により、細胞増殖が変化し、その結果、癌になる。

過去の研究で、研究者らは、8番染色体上のPSCA遺伝子内の変異が膀胱癌への感受性と関係することを確認した。その遺伝子は、対応するタンパク質が膀胱癌組織に発現されるかどうかを決定する。最新の報告では、研究者らは、rs2294008と呼ばれる遺伝子変異を構成する「T」ヌクレオチドがPSCAタンパク質の発現を強く予測することを発見した。その変異の結果、細胞表面へ運ばれるPSCAタンパク質が増加し、情報伝達に関与して腫瘍増殖を促進する。この研究は、NIHの下部組織である、米国国立癌研究所(NCI)の研究者らによるもので、2012年12月23日号のJournal of the National Cancer Institute誌オンライン版に掲載された。

「これまで、われわれはこのメカニズムを追求し続けてきた。それは、PSCA遺伝子内のマーカーが膀胱癌リスクに関連していることを明らかにした最初のゲノムワイド関連研究の初期の結果から始まった。この最新の研究はDNA内の特定の一文字の変化が細胞表面でのタンパク質の発現にどのように影響するかを明らかにした。その大きな成果は、簡単な遺伝子検査で、抗PSCA療法の恩恵を得られる患者を決められることである」と、この論文の統括著者で、NCIの癌疫学・遺伝学部門のLudmila Prokunina-Olsson博士は述べた。

2012年、米国だけで、73510人が新たに膀胱癌と診断され、14880人が死亡した。膀胱癌の再発率は50~70%であり、患者は生涯にわたる検診と治療が必要で、そのため、膀胱癌をかかえて生きることは費用がかかり、医療保険制度と患者にとって大きな経済的負担となっている。膀胱癌患者の最大75%がこの遺伝子変異を持っている。

「これは、一般的な癌についてのゲノムワイド関連研究により特定された遺伝子変異が直接臨床的意味を持つことを示す最初の研究のひとつになる」と、NCIの癌ゲノム学センターの共同ディレクターのStephen J. Chanock医師は述べた。

研究者らは、PSCAを標的にする新たな薬の開発や、薬物送達方法(進行した筋層浸潤腫瘍での全身への送達や、筋層非浸潤腫瘍での局所の膀胱間への到達など)の評価には、もっと研究が必要だと指摘している。抗PSCA療法はPSCAを発現している腫瘍に対してのみ有効なようである。この遺伝子変異の「T」ヌクレオチドに対する遺伝子検査は、この治療で恩恵を得られるかもしれない膀胱癌患者を特定できる。

この研究は、NCIのintramural fundingにより、助成を受けた(contract number :ZIA CP010201-04)

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参照:Kohaar et al. Genetic Variant as a Selection Marker for anti-PSCA Immunotherapy of Bladder Cancer. Journal National Cancer Institute, Dec. 23, 2012. DOI:10.1093/jnci/js458.

原文

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岩崎多歌子:翻訳
榎 真由(薬学):監修
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