アスピリン療法で生存延長する大腸癌患者の遺伝子変異を同定/ダナファーバー癌研究所 | 海外がん医療情報リファレンス

アスピリン療法で生存延長する大腸癌患者の遺伝子変異を同定/ダナファーバー癌研究所

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アスピリン療法で生存延長する大腸癌患者の遺伝子変異を同定/ダナファーバー癌研究所

タグ:大腸癌、遺伝学

ダナファーバー癌研究所の研究者らは、アスピリン療法はある重要な遺伝子に変異を持つ大腸癌患者の生存期間を延長する可能性があるが、変異のない患者には無効であるとする研究結果を、10月25日発行のNew England Journal of Medicine誌に発表した。

研究者らは、900人以上の大腸癌患者における試験で、PIK3CA遺伝子に変異を持つ患者の生存期間が、アスピリンの服用により大幅に延長することを発見した。アスピリンを服用した患者の5年生存率が97%であったのに対し、服用しなかった患者では74%であった。一方、アスピリンは、PIK3CAに変異のない患者の5年生存率にはまったく影響を及ぼさなかった。

「私たちの研究結果は、大腸癌のPIK3CA遺伝子変異が陽性である患者の生存期間延長に、アスピリンが非常に有効であることを示しています。」と、この研究の統括著者で、ダナファーバー、ブリガム&ウィメンズ病院およびハーバード大学公衆衛生学部のShuji Ogino医師・博士は語る。「私たちは、どの大腸癌が特定の治療に応答しやすいかを医師が見極める際に役立つ遺伝子マーカーを初めて見出しました。」Ogino氏は、この結果に確信を持つためには、他の研究者の追試が必要であると戒めている。

医師らは、大腸癌患者にアスピリンを安易に処方する一方で、どの患者が実際にアスピリンの恩恵を受けるのか、これまで予測できなかった。今回の新たな知見は、PIK3CAに変異を持つ20%の患者にのみ生存期間延長の効果があることを示している。

その他の患者に対しても、なおアスピリンが処方されるかもしれないが、効果はかなり低く、時には消化管潰瘍や胃出血の原因となる可能性もある。

この研究の発端は、アスピリンがPTGS2(シクロオキシゲナーゼ2)と呼ばれる酵素を阻害することによって、別の酵素、PI3Kのシグナル伝達活性を低下させることを示した以前の研究結果であった。先の研究をもとに研究者らは、PI3Kサブユニットを産生するPIK3CA遺伝子に変異を持つ大腸癌に対して、アスピリンは特に有効かもしれないという仮説を立てるに至った。

本研究のために研究者らは、直腸癌または結腸癌患者964人のデータを、数万人の長期健康追跡調査である看護師健康調査(Nurses’ Health Study)および医療従事者追跡調査(Health Professionals Follow-up Study)から入手した。データには、診断後のアスピリン服用および腫瘍組織におけるPIK3CA変異の有無に関する情報が含まれていた。

今回の研究は、疾患関連遺伝子の研究と多数の患者集団の研究を組み合わせたもので、Ogino氏が分子病理疫学と呼ぶ新しい複合領域の典型である。「この領域は、分子レベルと集団レベルという二つの最前線の癌研究から得られた情報を、患者に恩恵をもたらすという形で統合するのに役立つでしょう。」とOgino氏は語る。

本研究は、国立衛生研究所 (P01 CA87969, P01 CA55075, P50 CA127003, R01 CA149222, R01 CA137178, and R01 CA151993)、the Bennett Family Fund for Targeted Therapies Research、 the Entertainment Industry Foundation through the National Colorectal Cancer Research Alliance、the Frank Knox Memorial Fellowship at Harvard UniversityおよびDamon Runyon Clinical Investigator Awardから一部支援を受けている。

本論文の筆頭著者はダナファーバーのXiaoyun Liao医師・博士である。Ogino氏のほか、責任著者は、ブリガム&ウィメンズ病院およびマサチューセッツ総合病院のAndrew Chan医師・公衆衛生学修士である。共著者は以下の通りである:ダナファーバー癌研究所Paul Lochhead, MB, ChB、Reiko Nishihara, PhD、Aya Kuchiba, PhD, Mai Yamauchi, PhD、Yu Imamura, MD, PhD、Zhi Rong Qian, MD, PhD、Ruifang SunおよびJeffrey Meyerhardt, MD, MPH
ダナファーバー癌研究所、ブリガム&ウィメンズ病院Charles Fuchs, MD, MPH
ハーバード大学公衆衛生学部、ブリガム&ウィメンズ病院Edward Giovannucci, MD, MPH
東京大学医学部附属病院Teppei Morikawa, MD, PhD
熊本大学Yoshifumi Baba, MD, PhD
鹿児島大学Kaori Shima, DDS, PhD
札幌医科大学Katsuhiko Nosho, MD, PhD

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徳井陽子 訳
畑 啓昭(消化器外科/京都医療センター)監修
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原文

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