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分子学的検査で高リスクな肺癌患者の識別が早期可能に/カリフォルニア大学サンフランシスコ校

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分子学的検査で高リスクな肺癌患者の識別が早期可能に/カリフォルニア大学サンフランシスコ校

2012年11月1日
News Office: Jason Bardi (415) 502-6397
極早期の肺癌手術を受けた患者が直面する最も厳しい問題のうち一つが、不確実性である。つまり、肺癌の小さな腫瘍を完全に除去し、さらに転移のエビデンスが全く認められないとしても、少なくとも患者の四分の一に検出不可の小さな癌細胞の塊が存在するのである。そして癌細胞すでに肺外部に転移しており、患者は2~3年以内に死亡する。

 どの癌が再発するのか医師らには全く解らず、結果として、受ければ肺癌による死亡から免れることができた可能性のある化学療法を受ける患者がいない。

 UCSFの医師らによって開発された新しい分子学的検査により、術後の早期肺癌による死亡率を医師らが予測できる可能性が出てきた。今週Journal of American Medical Association (JAMA) 誌に、開発チームは「T1aリンパ節転移陰性、非扁平上皮、非小細胞性肺癌」と呼ばれる極めて初期の癌形態であってもこの試験によって再発の可能性が高い患者を効果的に識別できると報告している。

 この後ろ向き研究では、過去15年間で手術を受けた米国と中国の患者1,439人の腫瘍を分析した。対象患者らは、カイザー・パーマネンテ・北カリフォルニア健康保険システム(Kaiser Permanente Northern California System)に属していたか、あるいはChina Clinical Trials Consortiumに参加している中国本土の病院に入院していたかのどちらかであった。

 研究から、研究者らは最も早期ステージの肺癌患者も、腫瘍に認められた14の異なる遺伝子の活性度のみに基づき、死亡率のリスクを低度・中度、または高度に層別化できたことが示された。この個々の腫瘍生態を分子分析することで得られた予後情報は、腫瘍の顕微鏡検査や患者の臨床状態のいずれかに基づく従来の予後診断から得た情報よりも有意に優れていた。

 「この極めて初期である患者群の数は、肺癌のスクリーニングがより広く行われるにつれ、増加すると思われます」とUCSF Medical Centerの胸部外科医Michael Mann医師は述べている。UCSF Medical Centerを含む米国全体の多くの病院が、過去2年で肺癌スクリーニングプログラムを行っている。

肺癌からの生存により多くの希望を

 現在公表されているガイドラインでは、再発の可能性が極めて高いと思われるステージⅠの肺癌患者に対し化学療法を推奨している。しかし、このガイドラインではリスクの高いT1aリンパ節転移陰性患者の識別を補助する判断基準は設けていない。

 UCSF開発チームらは、新しい分析法公表されている判断基準より、高リスクなステージⅠの肺癌患者を効果的に識別したことを示した。しかしその分析法が、数を増やしつつある最も早期の肺癌、T1aリンパ節転移陰性の患者をも識別できるかどうかは、明らかでない。この検査により、50%の確率で死亡するこのグループでの患者や、さらなる治療介入を考慮すべき患者に対し首尾良く識別できたことが、新しい報告により確認された。

 肺癌は、主に極めて初期の段階でも転移するという性質のため、世界的にも最も致死率の高い癌である。その結果、肺癌と診断された時にはほとんどが治療不能となっている。40年間の研究でも到達していないが,肺癌検診が早期診断につながり,全生存率を向上させることを医師らは望んでいる。早期ではあるが、死亡リスクが高いこれらの癌患者を同定することが、早期発見によって得られたベネフィットをさらに向上させる可能性がある。

 Mann医師は、元となったこの技術を共同で開発したUCSFの医師の一人である。検査それ自体はPinpoint Genomics社により開発されたもので、同社は2012年Life Technologies Corp.に買収され、現在米国全体の臨床医がこの検査を利用できるよう進めている。重要なことは、検査が標準的な病理標本で可能で、特別な腫瘍組織の取り扱いが必要ないことである。

 当該記事「Ability of a Prognostic Assay to Identify Patients at High Risk of Mortality Despite Small, Node-Negative Lung Tumors」(小型,リンパ節転移陰性肺癌にもかかわらず死亡リスクの高い患者を同定する予測分析法の有用性)は、Johannes R. Kratz、Stephen K. Van Den Eeden、Jianxing He、David M. Jablons、Michael J. Mannらの手により、2012年10月23日JAMA誌に発表された。

 本研究の著者らは、UCSFの他Kaiser Permanente Department of Research、Northern California(オークランド、カリフォルニア)と、The First Affiliated Hospital of Guangzhou Medical College, State Key Laboratory of Respiratory Disease(広州、中国)に所属している。

 この研究の以下のUCSF所属の共同著者はPinpoint Genomics社と顧問関係がある:Johannes R. Kratz, David M. Jablons、Michael J. Mann. さらにKratz, Mann医師とJablons医師はまた、カリフォルニア大学を通した通例の発案使用料により利益を受けている。

 利益相反の全リストはJAMA誌上に開示している。

 本研究はUCSF Thoracic Oncology Laboratoryと、試薬や備品、トレーニングをChina Clinical Trials Consortiumに提供したPinpoint Genomics社からの私的寄付によりサポートを受けた。

 この2012年1月のビデオには、分子検査法が従来の方法に比し,早期肺癌の死亡をより正確に予測する傾向があるという,初期の仕事が示されている.最新の研究はそれに基づき,最も早期であるT1a,リンパ節転移陰性の症例に対しても有用であることを示している.

 
肺癌に関する統計

  • 2012年に226,160人が新しく肺癌患者と診断されると思われる。
  • 2012年160,340人が肺癌で死亡するとされている。
  • 今日誕生した人口の6.94%が生涯で肺癌と診断されると考えられる。
  • 全世界で肺癌による死亡者数は140万人である。
  • 米国では肺癌治療に毎年603億ドルが費やされている。
    2010年、NCIは肺癌の研究に2億8190 万ドルを投資した。

    出典:NCI、WHO

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    山下裕子 訳
    廣田裕(呼吸器外科/とみます外科プライマリーケアクリニック)監修
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    原文

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