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腫瘍誘発性の炎症阻害で癌進行を抑制/カリフォルニア大学サンディエゴ校

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腫瘍誘発性の炎症阻害で癌進行を抑制/カリフォルニア大学サンディエゴ校

2012年10月3日

腫瘍はどのように微生物叢や免疫細胞を利用して増殖を加速させるのか
カリフォルニア大学サンディエゴ校医学部の研究者らは、癌の形成や増殖を刺激する炎症反応を開始させる微生物依存性メカニズムの発見について報告している。

 この研究成果は、2012年10月3日付けのNature誌アドバンストオンライン版で発表された。

 慢性炎症と腫瘍形成との関連性については、ドイツの病理学者Rudolph Virchowの初期の研究以来、長く知られている。ハーバード大学の病理学者Harold Dvorakが、その後腫瘍を「癒えない創傷」と比較し、創傷治癒を特徴づける正常な炎症反応プロセスと腫瘍発生あるいは腫瘍形成間にある類似性を指摘した。

 実際、全ての癌の15~20パーセントは、病的な組織と健康な組織の両方を標的とする持続的免疫応答である慢性炎症が先行する。例えば、慢性肝炎は肝細胞癌(肝臓癌)、炎症性腸疾患は最終的に大腸炎関連癌として知られる大腸癌になる可能性がある。

 しかし、それ以外の大部分の癌は慢性炎症が先行するわけではない。一方、癌は普遍的に存在する浸潤性免疫細胞を利用して宿主の炎症反応を過度に誘発し、奪ってしまう。多くの固形癌に認められる、いわゆる「腫瘍誘発性炎症」のメカニズムに関して、現時点では十分に解明されていない。

 「腫瘍関連炎症反応は、生物医学的研究における新たな活気ある領域であり、将来的な予防および治療手段の鍵を握っている可能性がある」と筆頭著者であるSergei Grivennikov博士は言う。アスピリンのような非ステロイド性抗炎症薬の長期服用者の調査から、炎症を全体的に阻害することにより、癌のタイプに依存した死亡リスクを45パーセントまで低下させることが明らかになった。「従って、癌の形成過程で炎症を阻害することは有益である。」

 著名な薬理学の教授でカリフォルニア大学サンディエゴ校Laboratory of Gene Regulation and Signal Transductionの所長でもある研究責任者Michael Karin博士の指揮のもと、研究者らはヒトおよび動物モデルの早期大腸癌を研究することで、増殖中の腫瘍が組織恒常性(正常で健康な組織の機能)を乱すことを発見した。それは、ひとつには特定の保護タンパク質コーティングや、多くの内表面や器官を覆っている基本的細胞型である上皮細胞間の密着シールが失われるために起こる。コーティングや細胞間シールが失われると、通常は結腸に存在する良性の共生細菌が腫瘍内に侵入し、免疫細胞によって異物として認識され、炎症反応が始まる。

 加えて、Karin研究室の研究者であるGrivennikov氏は述べた。「腫瘍内では細胞間接触に欠陥があるため、微生物の産生物が腸内腔から腫瘍内に侵入してしまう。これらの微生物の産生物は、通常、腸バリアによって共生微生物叢から隔離されている腫瘍関連マクロファージや樹状細胞によって認識される。」

 それに応答して、免疫細胞はサイトカインと呼ばれるシグナル伝達タンパク質を産生し、さらに炎症反応プロセスを加速させる。それらの中心がインターロイキン-23と呼ばれるサイトカインである。インターロイキン-23は腫瘍誘発性炎症を制御し、腫瘍の形成および増殖を促進する他の炎症性サイトカインの産生を引き起こす。

 Grivennikov氏は、研究者らが広域抗生物質を組み合わせることで共生微生物叢を減少させると、腫瘍誘発性炎症や腫瘍の増殖は抑制された、と述べた。

 「これは、基礎疾患として慢性炎症性疾患がない状態で発生した癌において、腫瘍誘発性の炎症がいかに誘導されるのかを示す、非常によい実証である」と彼は述べている。「次のステップはインターロイキン-23や関連するサイトカインが大腸癌患者で増加していることを調べ、これらのサイトカインを阻害することで癌の進行や治療効果に影響があるかどうかを検証することだ。」

 この研究は、米国炎症性腸疾患基金、国立衛生研究所/国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所の助成金K99-DK088589、UCSD DDRDC Pilot Grant DK080506、Croucher Foundation およびChina Postdoctoral Science Foundation、Strategic Young Researcher Overseas Visits Program for Accelerating Brain Circulation、SPAR Austria、国立衛生研究所の助成金R01CA082223、A1043477およびDK035108、米国癌学会から一部支援を受けている。

 Grivennikov氏の他の共著者は以下のとおりである。

 Kepeng Wan g, UCSD Laboratory of Gene Regulation and Signal Transduction, Department of Pharmacology and Pathology and the Biomedical Research Institute, Shenzhen-PKU-HKUST Medical Center, China; Daniel Mucida, La Jolla Institute for Allergy and Immunology and the Laboratory of Mucosal Immunology, The Rockefeller University, New York; C. Andrew Stewart, Cancer and Inflammation Program, Laboratory of Experimental Immunology, Center for Cancer Research, National Cancer Institute, National Institutes of Health; Bernd Schnabl, UCSD Department of Medicine, School of Medicine; Dominik Jauch and Guann-Yi Yu, UCSD Laboratory of Gene Regulation and Signal Transduction, Department of Pharmacology and Pathology; Koji Taniguchi, UCSD Laboratory of Gene Regulation and Signal Transduction, Department of Pharmacology and Pathology and Department of Microbiology and Immunology, Keio University School of Medicine, Tokyo; Christoph H. Österreicher, UCSD Department of Medicine, School of Medicine and Institute of Pharmacology, Center for Physiology and Pharmacology Medical University of Vienna, Austria; Kenneth E. Hung, Department of Medicine, Tufts Medical Center, Boston; Christian Datz, Department of Internal Medicine, Oberndorf Hospital, Paracelsus Medical University Salzburg, Austria; Ying Feng and Eric R. Fearon, Departments of Internal Medicine, Human Genetics and Pathology, University of Michigan Medical School; Mohamed Oukka, Seattle Children’s Research Institute, Washington; Lino Tessarollo, Mouse Cancer Genetics Program, National Cancer Institute, National Institutes of Health; Vincenzo Coppola, Department of MVIMG, Ohio State University-CCC, Wexner Medical Center; Felix Yarovinsky, Department of Immunology, University of Texas Southwestern Medical Center; Hilde Cheroutre, La Jolla Institute for Allergy and Immunology;  Lars Eckmann, UCSD Department of Medicine, School of Medicine; and Giorgio Trinchieri, Cancer and Inflammation Program, Laboratory of Experimental Immunology, Center for Cancer Research, National Cancer Institute, National Institutes of Health.
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メディア窓口:Scott LaFee, 619-543-6163, slafee@ucsd.edu

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井上陽子 訳
須藤智久(薬学/国立がん研究センター東病院 臨床開発センター)監修
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原文

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