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タモキシフェン耐性乳癌に対する治療の可能性が見いだされる/オハイオ州立大学総合がんセンター

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タモキシフェン耐性乳癌に対する治療の可能性が見いだされる/オハイオ州立大学総合がんセンター

投稿:2012年8月29日

  • 女性ホルモン(エストロゲン)は、乳癌に最も多くみられるエストロゲン受容体(ER)陽性乳癌の成長を促す。
  • タモキシフェンは、このエストロゲンの作用を阻害し、エストロゲン感受性乳癌患者の生存期間を延長させ、また治療に有用である。
  • エストロゲン感受性乳癌患者の約30%は、タモキシフェン耐性腫瘍を有する。
  • 本研究では、タモキシフェン耐性腫瘍がいかに生存し成長するのかが示され、またタモキシフェン耐性乳癌を標的とする試験薬が見いだされた。

 オハイオ州コロンバス-オハイオ州立大学総合がんセンターArthur G. JamesCancerHospitaland Richard J. Solove Research Institute (OSUCCC-James)の研究者らによる研究により、タモキシフェンに耐性を示す乳癌細胞がどのよう成長し増殖するのかが明らかになった。また、本研究では、ある試験薬がタモキシフェン耐性乳癌に対して新たな標的治療となりうることが示唆された。

 最初のドアが閉まると開く2番目のドアといったように、エストロゲンにより活性化されたヘッジホッグ(Hhg)と呼ばれるシグナル伝達経路は、その伝達経路がタモキシフェンによって遮断された後に、乳癌細胞の成長を促進させることができる。これにはまた、PI3K/AKTという2つ目のシグナル伝達経路が関与している。

 Hhg経路が活性化されると、タモキシフェンによる治療が奏効しなくなり、腫瘍の成長と増殖が再開される。本研究の一環として、研究者らは300を超えるヒト腫瘍を解析した結果、活性化されたHhg経路を有する腫瘍は予後不良と関連することを明らかにした。

 最後に、Hhg経路を遮断するvismodegib(ビスモデギブ)という試験薬は、動物モデルにおいてタモキシフェン耐性ヒト乳癌細胞の成長を抑制したことが示された。本剤の臨床試験が現在進行中であり、他の種類の癌についての検証が行われている。

 現状では、ホルモン耐性乳癌の治療には化学療法が行われているが、これには重篤な副作用を伴う。本研究では、ホルモン耐性を示す腫瘍に対して化学療法の代わりとなりうる標的療法が特定された。

 本研究はCancer Research誌で発表された。

 「われわれの所見から、タモキシフェン治療が奏効しなかったER陽性乳癌患者で、この経路を標的とすることができることが示唆された」とOSUCCC-Jamesで乳癌を専門とする腫瘍内科医である筆頭著者のBhuvaneswari Ramaswamy医師は述べた。

 「この論文では、タモキシフェン耐性を促進させるHhg経路とPI3K/AKT経路との結びつきについて報告している。Hhg経路のみを標的とするのか、PI3K/AKT経路と共に標的とするのかは、タモキシフェン耐性乳癌の治療にとって新たな治療選択肢となり得る」とOSUCCC-Jamesの分子細胞生化学部でポスドクとして勤めている試験責任医師のSarmila Majumder氏は述べた。

 オハイオ州立大学で内科学部の准教授を勤めるRamaswamy医師は、新たな選択肢こそがタモキシフェン耐性乳癌患者に必要なものであると強調し、次のように語った。

 「Hhg阻害剤とPI3K阻害剤を併用する標的療法は、将来的に化学療法を用いないホルモン抵抗性腫瘍の新治療につながるであろう。われわれが特定した薬剤は全て、他の種類の癌を対象とした臨床開発の段階にある」。

 2012年、米国では新たに約230,000人が乳癌と診断されると推定されており、40,000人前後の米国人が本疾患により死亡するとされている。乳癌の症例のうち3分の2以上でERが高値を示しており、このようなER陽性腫瘍の治療にタモキシフェンが使用されている。この薬剤によってER陽性乳癌患者の無病生存率が50%改善されている。

 さらに同医師は、「しかし、タモキシフェンを投与している患者の30~40%で、治療から約5年もするとタモキシフェンに対する耐性が生じている」と述べている。現状では、タモキシフェン耐性患者に対する選択肢は非常に限定されており、ほとんどの場合は化学療法による治療を受けている。

本研究の主要な所見は以下のとおり:

タモキシフェン耐性乳癌では、細胞の成長はHhg経路に依存している。

つまり、PI3K/AKT経路は、Hhgシグナルを構成する主要なタンパク質の分解を阻止し、それによりHhg経路の活性化が促進される。

侵襲性乳癌315人の解析により、Hhg経路の重要なマーカーであるタンパク質GLI1が高値の場合、無病生存率および全生存率が不良であることと相関することが示された。

 「われわれの次のステップは、タモキシフェン耐性乳癌患者を対象にvismodegibを評価する臨床試験を実施することだ」とRamaswamy医師は述べている。

 本研究は、米国国立衛生研究所(NIH)/米国国立癌研究所(NCI)(助成金CA137567およびCA133250)およびPelotonia Idea助成金による資金提供を受けた。

 本研究におけるオハイオ州立大学の共同研究者は他に、Yuanzhi Lu、Kun-yu Teng、Gerard Nuovo、Xiaobai Li およびCharles L. Shapiroであった。

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栃木和美 訳
関屋昇(薬学)監修
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原文

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