2012/10/30号◆癌研究ハイライト「末期癌患者は化学療法に対し過度に期待をしている」「イマチニブは難治性リンパ腫の治療に有用な可能性」「早期肺癌の有力なバイオマーカーを同定」「マウスにおいて、癌ワクチンと低用量抗血管新生剤との併用療法が乳癌治療に有望」 | 海外がん医療情報リファレンス

2012/10/30号◆癌研究ハイライト「末期癌患者は化学療法に対し過度に期待をしている」「イマチニブは難治性リンパ腫の治療に有用な可能性」「早期肺癌の有力なバイオマーカーを同定」「マウスにおいて、癌ワクチンと低用量抗血管新生剤との併用療法が乳癌治療に有望」

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2012/10/30号◆癌研究ハイライト「末期癌患者は化学療法に対し過度に期待をしている」「イマチニブは難治性リンパ腫の治療に有用な可能性」「早期肺癌の有力なバイオマーカーを同定」「マウスにおいて、癌ワクチンと低用量抗血管新生剤との併用療法が乳癌治療に有望」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2012年10月30日号(Volume 9 / Number 21)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~
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◇◆◇ 癌研究ハイライト ◇◆◇

・末期癌患者は化学療法に対し過度に期待をしている
・イマチニブは難治性リンパ腫の治療に有用な可能性
・早期肺癌の有力なバイオマーカーを同定
・マウスにおいて、癌ワクチンと低用量抗血管新生剤との併用療法が乳癌治療に有望

末期癌患者は化学療法に対し過度に期待をしている

最近の調査によると、肺癌または大腸癌のIV期と新たに診断され化学療法を選択する患者の大多数は、化学療法により癌が治癒するかもしれないと信じている。この調査結果は、患者の化学療法の利点に関する楽観的な思い込みが、示された情報に基づいて最優先の治療を決定する能力の妨げになる可能性を示していると、本調査を率いた研究者らは述べた。この結果は、New England Journal of Medicine誌10月25日号に掲載された。

ダナファーバー癌研究所のDr. Jane Weeks氏らは、癌治療転帰リサーチ・サーベイランス・コンソーシアム(Cancer Care Outcomes Research and Surveillance Consortium:CanCORS)の前向き観察研究に参加した、診断後4~7カ月の患者1,193人の聞き取り調査を実施した。参加患者全員がIV期の肺癌または大腸癌であり、化学療法を選択していた。患者の容態が悪くて調査に参加できない場合には、代理人に聞き取り調査を行った。この調査は、化学療法によりどのくらい癌が治癒するか、生存が延長するか、症状が緩和すると考えているかを患者に尋ねるものであった。さらに、患者の身体機能状態、医療者とのコミュニケーション能力、社会的・人口的要因のデータも収集した。

患者の大多数(大腸癌患者の81%と肺癌患者の69%)は、化学療法により癌が治癒する可能性は極めて少ないということを理解していないようであった。白人系患者より、黒人系、ヒスパニック系、アジア・太平洋諸島系の患者の方が、化学療法により癌が治癒すると信じる傾向が強かった。しかしながら、多くの患者は、化学療法を受けることで癌が治癒するより生存が延長される可能性が高いと考えていた。

患者の教育レベル、身体機能状態、治療法決定における患者本人の役割と、化学療法に対する誤った期待との関連性はなかった。

ジョンズホプキンス大学シドニー・キンメルがんセンターのDr. Thomas J. Smith氏と米国国立加齢研究所のDr. Dan L. Longo氏は、付随論文で、「症状緩和目的で投与した抗癌剤に対して、もし実際に患者が非現実的な期待を抱いているとしたら、医療者と患者との間には意思疎通に重大な問題があり、私たちはその改善に取り組む必要がある」と記した。

本調査は以下の国立衛生研究所の助成金支援を受けた(U01CA093344, U01CA093332, U01CA093324, U01CA093348, U01CA093329, U01 CA093339, U01 CA093326)。

イマチニブは難治性リンパ腫の治療に有用な可能性

新たな知見に基づき、研究者らは、未分化大細胞型リンパ腫(ALCL)患者に対するイマチニブ(グリベック)の効果を調べる臨床試験を準備中である。未分化大細胞型リンパ腫は、主に小児や若年者で発症する悪性度が高い非ホジキンリンパ腫である。

研究者らは、一般的タイプの未分化大細胞型リンパ腫の発症にはPDGFRBと呼ばれるタンパク質が重要であることを明らかにした。イマチニブは、成長因子受容体タンパク質であるPDGFRBをターゲットにする。イマチニブは、未分化大細胞型リンパ腫のモデルマウスと未分化大細胞型リンパ腫患者の両方で抗癌効果が認められたと、ウイーン医科大学(オーストリア)のDr. Lukas Kenner氏らは、Nature Medicine誌10月14日号で発表した。

PDGFRBと未分化大細胞型リンパ腫患者で多く認められる遺伝子異常との関係が見出されたため、研究者らはイマチニブの効果を調査することにした。これまでの研究にて、この遺伝子変化(NPM-ALKという異常な融合遺伝子を形成する転座)は、JUNとJUNBという2つの転写因子の産生を刺激することが示されている。

マウスモデルの実験により、これらのタンパク質がPDGFRBを増加させることでリンパ腫の発症を促進することが明らかになった。

イマチニブにはPDGFRBの阻害作用があるため、NPM-ALK変化があるマウスでこの薬剤の効果をテストしたところ、マウスの生存が向上したことが確認された。さらに、ALK阻害剤であるクリゾチニブ(ザーコリ)をイマチニブと共に与えたところ、マウスのNPM-ALK陽性リンパ腫細胞の増殖が大幅に減少したことがわかった。

ヒトにおける治療法を試験するために、他に治療法がなくイマチニブの投与に同意をしたNPM-ALK陽性未分化大細胞型リンパ腫末期患者で確認を行った。その患者は、この治療を始めてから10日以内に改善がみられるようになり、22カ月間完全寛解が続いていると報告された。

ALKとPDGFRBの両方を阻害すると「リンパ腫の増殖が抑制され、再発率が低下する」という結果から、PDGFRBは存在するがNPM-ALKタンパク質が認められないリンパ腫で意味があるかもしれないと研究者らは言う。「私たちの研究結果は、クリゾチニブに耐性があるリンパ腫の患者に対してイマチニブが1つの治療選択肢となることを示唆するものである」。

予定される臨床試験は、腫瘍にPDGFRBが発現していることに基づくものとなるであろう。

早期肺癌の有力なバイオマーカーを同定

血液サンプルから検出できるタンパク質が、将来的に、早期肺癌のバイオマーカーとしての機能を果たす可能性があることが、新たな研究結果によって示された。本知見は、10月16日付Proceedings of the National Academy of Sciences誌に掲載されたもので、変異型タンパク質Ciz1の濃度測定が、高リスク患者の肺癌を早期かつ非侵襲的に発見するための一助となる可能性を示唆している。

「疾患特異的な癌バイオマーカーを見出すのに苦戦してきたが、これは良い方向への一歩なのかもしれない」と、NCI癌バイオマーカー研究グループの主任を務めるDr. Sudhir Srivastava氏は述べた。氏は、この試験を「有望」としたものの、結果についてはさらなる検証が必要であろうと指摘する。

英国ヨーク大学のDr. Dawn Coverley氏率いる研究者らは、Ciz1「b変異」型は、肺腫瘍35検体中34検体に発現していたが、隣接組織には発現していないことを見出した。追加検査では、このCiz1変異型に特異な抗体が、非小細胞肺癌患者および小細胞肺癌患者から採取した少量の血液サンプル中のタンパク質を検出可能にすることが示された。

独立した血液サンプル2セット(それぞれ患者170人および160人から採取)において、一定の閾値を超える変異型Ciz1濃度は、肺癌患者の95~98%を正確に特定し、全体では71~75%の特異度を有することがわかった。2つ目のサンプルセットでは、変異型Ciz1濃度は、I期の非小細胞肺癌患者と、癌と診断されていない同齢のヘビースモーカー、良性の肺小結節患者および炎症性の肺疾患患者を識別できることが示されている。

変異型Ciz1でみられる検査結果の偽陽性率の高さが懸念されるが、Ciz1変異型の血液検査は、肺癌検診において低線量ヘリカル断層撮影(スパイラルCTとも呼ばれる)と組み合わせることで、最終的に有用性が証明されるだろうと著者らは指摘する。その意味では、血液検査は、スパイラルCTで疑わしい結果が認められた患者において、肺癌の存在を裏付けることができ、肺癌診断の確定のために侵襲的な手技を行う必要性を減らすことになる。そして、スパイラルCTの前に実施される場合は、「血液検査は、画像診断を受ける人の数を減らすことができる。(なぜなら)偽陰性率は極めて低いからである」と、Coverley氏は電子メールにつづった。

変異型Ciz1濃度を評価するため、研究者らはウエスタンブロット解析として知られる実験手法を用いた。しかし、この方法では、日常的に臨床状況に適用することはできないと研究者らは認めている。そのため、検査のための「より合理化された手法」を開発する必要があるだろう。

一部、NCI 早期発見研究ネットワーク(Early Detection Research Network)助成金U01CA086137による研究援助を受けた。

マウスにおいて、癌ワクチンと低用量抗血管新生剤との併用療法が乳癌治療に有望

癌治療ワクチンと腫瘍血管の増殖を阻害する薬剤(血管新生抑制剤)の低用量投与との併用療法が、乳癌治療に有効な可能性があることが、マウスを用いた研究から明らかになった。

乳癌に罹患した2種類の異なるマウスモデルにおいて、この併用療法はいずれの治療法を単独で用いるよりも腫瘍を縮小させ、1つのモデルでは生存率も改善させた。

マサチューセッツ総合病院およびハーバード大学医学部のDr. Rakesh Jain氏らは、10月8日付 Proceedings of the National Academy of Sciences誌上に本知見を公表した。

ヒトおよび動物の両方の試験で得られたエビデンスから、血管新生抑制剤の低用量投与は、腫瘍血管を「正常化」して、出血しにくくし、機能を高めている、すなわち他の治療薬の送達を改善する効果があることが示されている。また、最近実施された複数の研究から示されるように、異常な腫瘍血管系が「免疫抑制的な(腫瘍の)微小環境を作りだし」、腫瘍が免疫系による検知または攻撃を逃れるのに役立っている可能性がある、と研究者らは記述している。そうだとすると、血管を正常化すればワクチンの効果を改善できると続けた。

異なる乳癌マウスモデルにおいて、低用量および高用量での血管新生抑制剤DC101単独療法、または治療ワクチンとの併用療法が検証されている。過去の研究に基づいて、研究者らは「併用療法のスケジュールは、血管の正常化と(ワクチンによる)T細胞活性化が同時に起こるよう設定している」と説明した。

研究者らは、なぜワクチンと低用量血管新生抑制剤との併用療法によって有効性が高まるのか、その理由を説明するための手掛かりも探索した。高用量DC101およびワクチンの投与を受けたマウスの血管新生と比較して、低用量DC101およびワクチンを投与されたマウスの血管新生は安定性が高く、より均一に腫瘍に分布したことがわかった。これは、ワクチン投与後、腫瘍への免疫細胞の浸潤が増加し、腫瘍に対する免疫反応の強化が促進されたものと考えられる。

NCI癌研究センター(CCR)のDr. James Gulley氏によれば、この研究結果は、CCR腫瘍免疫学・生物学研究室のDr. Benedetto Farsaci氏による癌治療ワクチンとスニチニブ(スーテント)とを併用した最近の研究結果と一致しているという。

乳癌女性を対象として、治療ワクチンと低用量血管新生抑制剤との併用を検討するための臨床試験は初期の計画段階に入っているとJain氏は述べている。

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野川恵子、濱田 希 訳
林 正樹(血液・腫瘍内科/敬愛会中頭病院)、 小宮武文 (腫瘍内科/NCI Medical Oncology Branch) 監修
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