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過剰な検査は防衛医療が原因?/カリフォルニア大サンフランシスコ校

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過剰な検査は防衛医療が原因?/カリフォルニア大サンフランシスコ校

 

UCSFの心臓専門医が、胸痛がある低リスク患者にCT検査を行うことに疑問を投げかける。

2012年8月16日
報道事務局:Leland Kim (415) 502-6397

 

 米国では毎年、胸痛で救急救命室に運ばれる約600万人にとって、退院前に負荷試験である心臓CT(コンピュータ断層撮影)検査を受けることが日常的な医療行為となっている。

 1981年、コンピュータ技術を用いた医療撮像法CT検査で、米国の医師が人体の一部の断層X線画像を撮像した件数は300万件であった。現在では、その件数は7,000万件に激増しているのだ。ようこそ、「防衛医療」の時代へ。

 「防衛医療は、心臓発作を起こす可能性が無さそうな患者に対して、健康にとって不要なリスクを引き起こしています。」と、Rita Redberg(理学修士、医師、UCSF婦人循環器科長、UCSF心臓学部門医学教授)女史は述べた。

 「心疾患は非常に重篤ではありますが、多くの医師が治療経過に適さない検査を指示している現状があります。その理由は、医療行為の過失により告訴されるのを恐れるためです」と同女史は続ける。「ここでの要点は、どの検査を受けるべきかではなく、本当に検査を受けるべきですか、と言うことです。」

 同女史は最近、New England Journal of Medicine誌に最近の研究2件(これらも同誌に発表済)に対して、論説を執筆した。この研究では、胸痛がある患者にCT検査を行うことで、「救急科で標準的に実施される評価法と比較して、臨床判断の効率を向上させた」ことが示唆された。

 しかし、同研究では、各群の患者で、「28日目で検出されなかった急性冠症候群はなく、また重篤な有害心血管イベントにおける有意差が認められなかった」ことがわかった。この結果は、CT検査を行うか否かに関係なく、心疾患の転帰は同様であったことを意味する。同研究では、46~62歳の患者1,000人を対象とした。

 「CT検査を行う方が診療は早く終わると、この研究の著者は述べていました。しかし、何の検査も行わない方がさらに早く終わると、私は考えます。そして、検査しても転帰が改善されないとするなら、なぜ検査を行うのでしょうか。」と、Redberg女史は指摘した。

 

的確なリスク評価

 同研究の対象者は、人口統計上や病態、また心電図が正常で心筋逸脱酵素陰性であることから、「低リスク」心疾患患者と見なされた。これは一般的に、当該の患者は心臓発作を起こす可能性が少ないことを意味する。

 Redberg女史は、この低リスク患者を退院させ、総合往診を目的とするプライマリーケア医師による追跡診療を行うよう提案する。

 「心臓痛がないので、この対象者の多くは検査を受けることはないでしょう。この対象者の平均年齢は40代後半で多くは女性であり、冠状動脈性心疾患の発症率が高い集団ではありません。」と、Redberg女史は述べた。

  女史によると、「防衛医療」を行う風潮は、医療業界における標準となっていると言う。

 「米国では、ある考え方に陥っています。そこでは、医師たちが告訴されないようにより多くの検査を行うよう指示すべきであると考えています。私たちはそうした考え方を真剣に検証する必要があります。なぜなら、適切な治療を提供することに焦点を当てるべきだからです。このため、多くの検査を行うよう指示することは適切な医療と同等ではないと思います。転帰を改善させることが示されている医療でなければならないのです。」

  胸痛のある救急患者が受けた医療を調査した研究で、CT検査を受けた患者は、CT検査を受けなかった患者と比較して、入院期間が7.6時間短縮したことが示された。どの患者群でも、心疾患が見落とされた症例は存在しなかった。

放射線に対する懸念

 Redberg女史にとって、もう1つの懸念は放射線被曝である。一般的に、CT検査の被曝線量は、胸部X線撮影の線量の600倍である。Archives of Internal Medicine誌に発表された10年間に渡るUCSFの研究によると、米国ではCT検査による癌の発生件数は約30,000件、その内の14,500件が死亡すると予想される。

  「一般的に、放射線被曝後から癌が発生するまで約20年間かかります。一方で、大きな懸念として、この20年に、現在行っているCT検査が原因で数千人が余分に死亡すること目にするということです。確かに適切で、救命に役立つCT検査もありますが、大多数はそうではありません。」と、女史は述べた。

  Redberg女史は、米国の医療業界は「重層的な」方法を導入して、同国の医療文化を変えるよう提案する。「患者が胸痛を訴えている場合、プライマリー医師は必ずしも検査を実施が必要というわけではありません。心疾患の可能性が低い場合、経過観察をすればよいのです。臨床的評価ができるので、患者が特殊な胸痛を訴えていても、そのたびに救急救命室に患者を送り込む必要はありません。」

  Redberg女史は、患者の転帰が改善できる場合にのみ、診断検査を指示するよう提言する。なお、医療過誤訴訟を最小限に抑える対策で、指示を出すべきでない。

 「検査を指示が多い医師ほど告訴される可能性が低いことを示すデータは実際のところありません。私が見てきた最適なデータから、患者と相談する医師ほうが告訴される可能性が低いことが示唆されます。私たち医師がさらに患者と相談すれば、患者は十分理解してくれるでしょうと、私は思います。」 と、Redberg女史は述べた。

UCSF医療センターについて

UCSF医療センターは常に、米国の病院上位10位の1つに位置付けられている。革新的な治療、最新の技術、医療専門家と研究者間の協力、ならびに心のこもった患者ケアチームが評価されているため、UCSF医療センターはUCSFの学術的医療センターとしての役割を果たしている。同センターの国内随一のプログラムには、小児医療、脳神経疾患、臓器移植、女性のための医療、ならびに癌に関するプログラムが含まれる。同センターはUCSFにおける独立経営事業として運営されており、患者の介護のための運営費を賄うための収入を得ている。

Facebook:www.facebook.com/UCSFMedicalCenterまたはTwitter:@UCSFHospitals でUCSF医療センターをフォローしてください。

 

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渡邊 岳
廣田裕(呼吸器外科/とみます外科プライマリーケアクリニック)監修
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原文

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