治療が終了した後に-認知機能の変化 | 海外がん医療情報リファレンス

治療が終了した後に-認知機能の変化

更新日

Facebookでシェアする Twitterにツィートする LINEに送る print

治療が終了した後に-認知機能の変化

LIVESTRONG > 支援を得る(We Can Help) > 治療が終了した後に(Finishing Treatment)

LIVESTRONGは、ランス・アームストロング財団の公式サイトです。

 

 翻訳更新:2013年9月12日

がん治療後の認知機能変化

 

がんやがん治療が原因で、思考力や学習能力、また、情報処理能力や記憶力などに影響を与える認知機能の変化を生じることがあります。こうした変化は様々な面で生活に影響を与え、仕事上の能力、さらには日常生活にさえも支障をきたす可能性があります。自分の認知機能変化のリスクが高いかどうかを知っておきましょう。

 

認知機能変化には、突然起こる場合(急性発症)と、徐々に発症する場合(漸進的発症)があります。いずれの場合でも成人と小児では変化が異なります。ここでは、成人がん患者における認知機能の変化に焦点を当てています。小児の認知機能の変化に関する質問は医療チームに相談してください。

 

 認知機能の変化のリスクが高い例:

  • 腫瘍が脳や脊髄を含む中枢神経系(CNS)に位置していた。
  • 直接CNSに治療を受けた。
  • 非常に状態の悪い時に治療を受けた。
  • 脳に化学療法と放射線療法を同時に受けた。
  • 放射線療法後に脳脊髄液内に抗がん剤投与を受けた。

 

認知機能変化は高用量での化学療法や免疫系を賦活化する免疫療法の実施と関連していることがあります。脳に腫瘍がある場合は、腫瘍またはその治療が原因で認知機能の変化を生じる可能性があります。多くの場合、脳腫瘍摘出手術に由来する認知機能変化は急速に、放射線療法や化学療法に由来する認知機能変化は徐々に進行します。がん治療後の認知機能変化には、症状が非常に軽微でいずれ消失する場合と、はっきりとした変化が現れ、非可逆的である場合があります。あらゆる徴候および症状について医療チームと話し合ってください。

 

 

認知機能変化の主な種類と症状

認知機能変化の原因となり得るもの全てについて、医療チームと話し合って下さい。正しい診断および治療を受けるのに役立つでしょう。

 

軽度の認知機能変化(「ケモブレイン」)

がんサバイバーは、化学療法後に記憶力や集中力の低下を経験することがあります。これは代表的な軽度の認知機能変化で、「ケモブレイン」と呼ばれることがあります。このような軽度の認知機能変化でさえ、日常生活や仕事上の能力に支障をきたす場合があります。症状には次のようなものがあります。

  • 集中力および同時処理能力の低下
  • 最近の出来事に関する記憶力の低下
  • 課題遂行力の低下
  • 思考速度の低下
  • 明瞭な思考力の低下

 

神経認知に対するがんの影響

脳の腫瘍細胞やがん細胞が正常細胞を傷害し、認知機能変化を引き起こす場合があります。がん細胞を除去または破壊するために、化学療法、放射線療法および外科療法が行われます。しかし、これらの治療法は、直接投与あるいは間接的に脳へ影響を及ぼすことによってがん周辺の正常細胞の一部にも損傷を与える可能性があります。損傷の程度によっては、思考力、記憶力、言語能力および視空間認知力の障害や行動の変化が顕著に現れます。

 

 

急性発症型認知機能変化(せん妄)

急性発症型の認知機能変化とは、突然の変化を指します。せん妄などの急激な変化は、その出現や消失に規則性がありません。特定の薬や抗がん剤による治療中に発症することがありますが、可逆性変化であると考えられます。症状には次のようなものがあります。

  •  注意力および見当識の変動
  • 集中力の低下
  • 意識レベルの低下または「ぼうっとしている」ように見える
  • 自分の周囲で起こっている事を理解できない
  • 夜に起きて昼に寝るといった、睡眠パターンの異常
  • 興奮
  • 錯乱
  • 記憶喪失
  • 騒々しく攻撃的な行動
  • 幻覚またはそこに存在しないものが見える
  • 方向感覚の消失または自分がどこにいるかわからない
  • 鎮静状態や錯乱状態など、緘黙で不活発な状態

 

漸進的発症型認知機能変化(認知症)

ここでの認知症とは、アルツハイマー病以外の医学的状態による認知機能変化を指します。漸進的発症型の認知機能変化は徐々に発症し、症状が長期間持続することがあります。認知症の症状は、がんの積極的治療が終了するまで認められない場合があります。症状には次のようなものがあります。

  • 記憶力の低下
  • 抽象化能力および同時処理能力のいずれかまたは両方の低下
  • 判断力の低下(危険な意思決定を下す)
  • 決断力の低下
  • 人格の変化(特別な理由もなく感情的になったり混乱したりする)
  • 問題解決および指示に従うことが困難
  • 方向感覚の消失(自分がどこにいるかわからない)
  • 認知機能および行動の変化が、職業生活または社会生活、独立性に悪影響を及ぼす。

 

 

がんサバイバーにおけるその他の認知機能変化

化学療法による疲労や貧血も、認知機能、特に注意力の変化を引き起こすことがあります。さらに、がんサバイバーは、がんやその治療との関連性の有無に関わらず、認知機能変化の原因となる状態を他にも経験する可能性があります。これらの状態は可逆性の場合と不可逆性の場合があり、次のようなものが挙げられます。

  • 不安
  • 抑うつ
  • 電解質異常
  • 低酸素血症(酸素濃度の低下)
  • アルツハイマー病やパーキンソン病など、その他の脳疾患
  • 甲状腺疾患
  • 重度の栄養障害

 

認知機能変化はいつ起こるのでしょうか?

 認知機能変化は、がんとの闘病期間中いつでも起こる可能性があります。認知機能変化が脳腫瘍の最初の徴候である場合もあります。がん治療を終了した後や特定の薬を投与した後にも認知機能変化を生じることがあります。

  • 化学療法中または終了後に、ケモブレインを発症することがあります。
  • 治療中、突然せん妄を発症することがあります。通常、せん妄は化学療法などのはっきりとした原因の後に起こり、多くは可逆性です。
  • がん治療による認知症は徐々に発症し、通常は治療を終了した後にみられます。せん妄より発見が難しく、原因はひとつではなく、はっきりしない場合があります。認知症は早ければ脳腫瘍の放射線療法後3ヵ月で発症します。また、放射線療法後48ヵ月以上経過してから発症することもあります。
  • 認知症の症状(記憶喪失など)は、脳腫瘍摘出手術後にもみられることがあります。

 

 

認知機能変化とともに生きる

認知機能変化の管理法

  • 処方された薬は、服用時に日時を書き留める、毎日同じ時間に服用する、服薬スケジュール表やスケジュール付き薬ケースを使用する、または必要に応じて誰かに記録管理を依頼するなどの方法で指示どおりに服用しましょう。
  • 調理、怪我の原因となるような道具の使用、運転、不慣れな地域への旅行などの単独での危険な作業や行動を避けましょう。
  • 家族に安全確認を依頼しましょう。
  • 十分な休息と睡眠をとりましょう。
  • 健康日誌を利用して医療チームに症状や副作用を伝えましょう。
  • 必要になるかもしれない法的文書について家族や弁護士と話し合っておきましょう。

 

認知機能変化が回復するか永続的な変化となるかは、その原因によって異なります。特定の薬の投与による急性の認知機能変化(せん妄)は、多くの場合、投薬を中止すれば回復します。慢性的な変化(認知症)は、回復が難しい場合が多いです。しかし、認知機能を高めるとされている薬もあり、また、原因を除くことができれば回復する可能性があります。

思考力、記憶力、または行動の変化に気づいたら、症状を記録してください。家族や友人にも変化に注意してもらえるよう頼んで下さい。できるだけ早く、医療チームに症状を相談してください。認知機能変化の性質、重症度および考えられる原因を特定する手助けとなるよう、神経心理士による神経心理学的検査を依頼してください。神経心理士は機能回復のための介入を勧めるかもしれません。多くの場合、原因となっている状態を治療することで認知機能変化が軽減または消失します。

 

引用文献

Correa, D.D. (2010). Neurocognitive function in brain tumors. Curr Neurol Neurosci Rep (10)3; 232-239.

Calabrese, P., & Schlegel, U. (2009). Neurotoxicity of treatment. Resent Results in Cancer Research, 171: 165-174.

 

原文ページへ

************************

佐々木真理 訳

太田真弓(精神科、児童精神科 さいとうクリニック院長)監修

************************

 

printこの記事を印刷する Facebookシェアする Twitterツィートする LINE送る

免責事項当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

注目キーワード

新着ドキュメント

一覧

arrow_upward