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LIFRタンパク質が乳癌転移を抑制/MDアンダーソンがんセンター

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LIFRタンパク質が乳癌転移を抑制/MDアンダーソンがんセンター

前臨床試験により、乳癌患者の生存に関する新しい予後マーカーを特定
MDアンダーソンがんセンター
2012年9月24日

受容体タンパク質が乳癌細胞の局所浸潤および転移(乳癌の最も致命的な状態)を抑制することが、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究チームにより明らかになった。

このチームはhigh-throughput RNA sequencing (超高速RNA塩基配列解読装置)を用い乳癌の転移、他の臓器への蔓延を抑制する新規抑制因子として白血病阻害因子受容体(LIFR)を特定したとNature Medicine誌発表した。

「我々の研究結果に基づくと、LIFRのような重要な転移抑制因子の発現や機能の回復により、乳癌転移を阻止できる可能があると考えています」と研究責任者であるLi Ma博士(MDアンダーソンDepartment of Experimental Radiation Oncology助教授)は述べた。

そして「転移に関する臨床的に証明された予後マーカーおよび治療薬の欠如は、乳癌による死亡者を根絶するための大きな障壁です」と述べ、「多くの転移促進遺伝子は同定されていますが、それらは臨床の現場には使用されていません。例外は、HER2およびVEGFに対する分子標的薬剤であり、これらは臨床的にはかなり重要視されていますが、効果は中程度です」とした。

さらに、ごく少数の遺伝子が転移抑制遺伝子として確立されているが、多くの研究者はこのような遺伝子は転移において、それほど重要ではない役割しか果たさないと考えているとした。

しかし、本研究においてLIFRは「ヒトの腫瘍において非常に関連性が高い」ことを発見した。正常ヒト乳房組織の94%はLIFRの高い発現を示しているが、LIFRは非浸潤性乳管癌(DCIS)または浸潤性乳癌患者では、かなりの割合で発現が低下もしくは欠失しており、LIFRの欠失は臨床転帰不良と密接に相関していると述べた。

Hippo のカスケードの活性化によりタンパク質がYAPを抑制する
研究の主要な成果の一つは、LIFRがtranscriptional co-activator YAP(転写コアクチベーターYAP)の機能不活性化につながるHippoキナーゼカスケードを活性化することにより、浸潤および転移先のコロニー形成の両方を抑制するとMa博士は述べた。

そして「LIFRタンパク質はヒトの癌に非常に関連しています。なぜならLIFRタンパク質はヒトの乳癌の約40%で発現が低下し、10%近くでは完全に失われているのです」とMa博士は述べた。 さらに「驚くべきことに、約1,000人の患者を対象とした我々の研究では、非転移性乳癌ステージⅠからⅢにおいて乳腺腫瘍のLIFRタンパク質の損失は、無遠隔転移生存期間、無再発生存期間および全生存期間の転帰不良と非常に関連していることが明らかになりました」とした。

Ma博士はpeer reviewers(論文審査員)がこの研究を「画期的な貢献」として扱ったことについて以下のように述べた。

・転移抑制遺伝子は転移促進遺伝子と比較して、転移のわずかな要素にすぎないとする定説への挑戦であり
・Hippoシグナル伝達を活性化し癌における重要な機能を有する細胞膜受容体についての初めての発表でもあり
・臨床現場に大きな影響を与える可能性がある。

Ma博士は、癌におけるLIFRに関する文献での情報が非常に不足している。しかし、いくつかの小規模研究により、LIFRは過剰メチル化と呼ばれるgene-silencing mechanism(遺伝子サイレンシング機構)を介して大腸癌および肝臓癌でも欠失していることが報告されているとした。

そして「研究では多くの方向性を追求しなければなりません。たとえば、LIFRに基づいた治療方法の開発のため、さらにその機能とその発現の調節のメカニズムを解明する必要があります」と述べた。

さらに、Ma博士のグループは、乳房のLIFR遺伝子欠失が腫瘍形成および転移につながるかどうかを判断するためにLIFRコンディショナルノックアウトマウスを作製しているとした。

Co-authors with Ma are Dahu Chen and Peijing Zhang, P h.D., of MD Anderson’s Department of Experimental Radiation Oncology; Yutong Sun, Ph.D., Yongkun Wei, Ph.D., Abdol Hossein Rezaeian, Hui-Kuan Lin, Ph.D., and Mien-Chie Hung, Ph.D., all of MD Anderson’s Department of Molecular and Cellular Oncology; Julie Teruya-Feldstein, M.D., of Memorial Sloan-Kettering’s Department of Pathology; Sumeet Gupta of the Whitehead Institute for Biomedical Research; and Han Liang, Ph.D., of MD Anderson’s Department of Bioinformatics and Computational Biology.

Lin, Hung and Ma are also affiliated with the Cancer Biology Program, Graduate School of Biomedical Sciences, The University of Texas Health Science Center at Houston. Mien-Chie Hung is additionally affiliated with the Center for Molecular Medicine and the Graduate Institute of Cancer Biology at China Medical University.

This research was supported by the U.S. National Institutes of Health National Cancer Institute grants R00CA138572, R01CA166051, and P01CA099031; a Cancer Prevention and Research Institute of Texas Scholar Award and a University of Texas STARS Award to Ma; a Faculty Development Award from the MD Anderson Cancer Center Support Grant CA016672 from the U.S. National Institutes of Health; Center for Biological Pathways; a Susan G. Komen for the Cure grant; and the National Breast Cancer Foundation, Inc.

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渉里 幸樹 訳
原野謙一 (乳腺・婦人科癌/日本医科大学武蔵小杉病院)監修
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原文


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