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マリン郡での乳癌高発症率には、遺伝子要因が関与/カリフォルニア大学サンフランシスコ校

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マリン郡での乳癌高発症率には、遺伝子要因が関与/カリフォルニア大学サンフランシスコ校

2012/08/07
報道事務局:Jason Bardi (415) 502-6397

 カルフォルニア州マリン郡は世界的に乳癌発症率が高く、研究者の間では、その原因は土地自体にあるのではなく、他の未知の要因が関与していることが知られている。

 カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)に凍結保存された口腔細胞検体を用いた新しい研究によると、マリン郡での乳癌発症率の高さは、人口の主体を占める白人女性に認められる遺伝形質が原因である可能性が示唆される。

 2012年8月第2週にJournal of the American College of Surgeons誌電子版で発表された記事(印刷版は2012年11月発行予定)では、UCSFの外科医であり研究者でもあるKathie Dalessandri医師とその同僚らおよびオクラホマシティのInterGenetics社により、マリン郡在住女性338人の口腔細胞を用いた小規模後ろ向きパイロット試験における、ヒトのビタミンD受容体遺伝子にみられるわずかなDNAの変異と乳癌発症リスクとの関連性が説明されている。

 Dalessandri医師は次のように呼びかけている。「この知見はもっと大規模な前向き研究による検証が必要ですが、乳癌発症リスクの高い女性では、一般集団と比較して、ビタミンD受容体遺伝子に特定の変異が認められる確率が1.9倍高いことが判ったのです」。

 マリン郡では、マリン郡保健福祉局が主体となって、より大規模な共同前向き研究を実施中である。この試験では、数千人規模の女性を対象に乳癌発症リスクを調査している。

 「現時点では、乳癌予防に必要なビタミンD量に関してはっきりとしたことは言えませんが、ビタミンD受容体遺伝子変異は重要なリスク調節因子である可能性があります」とDalessandri医師は語る。

 また、「マリン郡における乳癌発症リスクの高さに関わる要因が他にもないとは言えませんが、この発見は原因究明の大切な糸口となるでしょう」とも述べている。

 10年以上にわたる研究の末、新たなDNAの秘密が明らかに

 マリン郡の女性に乳癌発症リスクが高い原因を最初に調べた大きな研究は、UCSFの癌疫学者Margaret Wrensch、Marin Breast Canver WatchのGeorgianna Farrenおよびその同僚らによって行われた。

 2003年に発表されたこの研究では、マリン郡での乳癌女性285人と非乳癌女性286人を比較し、環境、生活様式、食生活と同様に、乳癌発症率に影響を及ぼすと考えられている診断時年齢、月経開始年齢、第一子出産年齢、一親等血縁者の乳癌歴、乳房放射線照射歴、乳房生検による良性腫瘍診断歴、ホルモン補充療法歴といった乳癌の古典的リスク因子について調査を行った。

 この研究の重要な結論のひとつは、乳癌の発症原因は土地自体にはないということであった。乳癌発症リスクは女性のマリン郡在住期間とは無関係であった。また、乳癌女性では、マリン郡在住期間やその他のリスク因子が同じである非乳癌女性と比べて1日あたりの飲酒量が2杯以上であると回答する者が多かった。

 2003年の研究で用いられた細胞検体は、将来の研究用として、John Wienckeにより彼が所属するUCSF神経外科学教室の分子疫学研究室に凍結保存された。このため、Dalessandriと同僚らはこの検体からDNAを回収し、近年InterGenetics社のEldon Jupeらによって開発された新技術を用いて分析することができた。

 この新技術はOncoVueという名称の診断アルゴリズムで、ビタミンD受容体遺伝子やその他の遺伝子における特定の遺伝子変異に基づいて乳癌発症リスクをスコア化する多因子リスクモデル(PFRM)である。Jupeらは、この診断法を用いて2003年の試験検体のうち白人女性338人(乳癌164人、非乳癌174人)のDNAを盲検的に検索し、マリン郡の試験では乳癌発症リスクの予測が非常に正確であることを見出した。乳癌発症リスクと最も関連性の強い遺伝的要因を決定するため、OncoVueで乳癌発症リスクが最も高いと予測された女性集団を分析した。

 Jupeらは、ビタミンD受容体Apa1 A2/A2ホモ接合体遺伝子多型として知られる遺伝子変異が、マリン郡の女性における乳癌発症リスクの高さに関係していることを発見した。乳癌発症リスクの高い女性の64%にこの遺伝子形質が認められ、対象集団全体の34%と比べて1.9倍と有意に高かった。

 ビタミンD受容体遺伝子変異と乳癌との因果関係が証明されれば、ビタミンD補充による乳癌の予防または治療に新しい道が開ける可能性がある。しかし、どのような方法であっても臨床試験によってその安全性および有効性が保証されなければならないため、その影響が明らかになるまで何年もかかる場合がある。

 マリン郡での乳癌発症リスクの高さに関する研究には、他にBreast Cancer and the Environment Research Programがある。これは国が実施する試験で、UCSF疫学・生物統計学教室のRobert Hiatt臨床試験責任医師およびSan Francisco Coordination Centerが統括している。この試験では、乳癌のリスク因子として知られる思春期開始の低年齢化に影響を及ぼす可能性のある環境因子の調査を行っている。本試験は、北カリフォルニアに所在するKaiser PermanenteのLawrence Kushiの主導のもとで実施され、マリン、サンフランシスコ、アラメダ各郡在住のKaiser Permanente加盟者家族の中から、思春期前から成人するまで観察された女子を対象としている。

 Kathie M Dalessandri、Rei Miike、John K Wiencke、Georgianna Farren、Thomas W Pugh、Sharmila Manjeshwar、Daniele C DeFreese、およびEldon R Jupeによる論文「Vitamin D Receptor Polymorphisms and Breast Cancer Risk in a High-Incidence Population: A Pilot Study」は、Journal of the American College of Surgeons誌2012年11月号に掲載される。

 本研究は、California Breast Cancer Research Program Community Collaboration Research Grant(5BB-1201)、マリン郡保健福祉局およびSwisher family trustの助成を受けた。Dalessandri医師は、本研究に対し、2008年にKomen Foundationからトランスレーショナルリサーチ賞を、2009年にZero Breast Cancer in Marin County賞を、また、2010年にCalifornia Breast Cancer Research Program Innovative Research賞を受賞した。

UCSFについて
UCSFは、先進的な生物医学研究、生命科学および医学分野における大学院レベルの教育ならびに卓越した看護学を通じて世界的に医療を促進するトップクラスの大学である。
UCSFについてはTwitter @ucsf/@ucsfscience

UCSF医療センターについて
UCSF医療センターは米国で常に上位10位中に位置づけられる病院である。当施設は、革新的な治療、先進技術、医療専門家や研究者との連携、また、心配りの行き届いた患者ケアチームを提供することで知られ、カリフォルニア大学サンフランシスコ校の付属病院としての役割を担う。当施設では、小児医療、脳神経系、臓器移植、婦人科および女性特有の癌などを対象とした、全米的にも非常に優れたプログラムを実施している。当施設はUCSF内で独立採算企業として運営され、自身の収益により医療提供に必要な運営費用を賄っている。
UCSF医療センターについてはwww.facebook.com/UCSFMedicalCenterまたはTwitter @UCSFHospitals

このニュース記事はウェブサイト用に改変した。

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佐々木真理 訳
大野 智(腫瘍免疫/早稲田大学・東京女子医科大学)監修
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原文

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