肝細胞は、癌化によりグルコース産生能力を失う/オハイオ州立大学総合がんセンター | 海外がん医療情報リファレンス

肝細胞は、癌化によりグルコース産生能力を失う/オハイオ州立大学総合がんセンター

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肝細胞は、癌化によりグルコース産生能力を失う/オハイオ州立大学総合がんセンター

8掲載:2012年7月29

  • 正常な肝細胞はグルコースを産生することで血糖値を正常範囲内に維持するが、癌化するとその能力を喪失することが本研究により示されている。
  • グルコース産生能喪失が、癌細胞の成長・増殖を助長する可能性がある。
  • 本研究は、肝細胞癌でグルコース産生能が失われる過程をつきとめ、それを回復させることにより、致死性が高い本疾患への新たな治療薬が提供できる可能性を示唆している。

 

オハイオ州コロンバス―肝癌が発症すると、腫瘍細胞はグルコースの産生と血中への放出機能(必要とされる血糖値を維持するために正常肝細胞が担う主要な機能)を失う。

この結果は、オハイオ州立大学総合がんセンター、Arthur G. James and Richard J. Solove Institute(OSUCCC‐James)の研究者らが行った研究によるものである。

糖新生というグルコース産生機能の喪失は、マイクロRNA-23a(miR-23a)という分子の過剰発現に起因する。この変化により、ミトコンドリア呼吸が大幅に低下している状態(ワールブルグ効果)において解糖系が亢進することで、癌細胞が成長・増殖する可能性がある。

この結果から、miR-23a発現の抑制により、上記の過程が覆され、かつ、最も多く見られる肝癌である肝細胞癌に対する新規治療薬が提供される可能性が示唆される。

本研究は、Hepatology誌で公開されている。

「本研究により、肝細胞の癌化により、グルコースの産生と肝臓からの放出を大幅に阻害する重要な機構が特定されます。アンチmiR-23aを肝癌細胞に送り込むことで、肝細胞が元どおりになる可能性は考えられます。」と、研究責任者であるSamson Jacob医師(オハイオ州立大学医学部血液学・腫瘍学部門分子・細胞生化学教授、癌研究におけるウィリアム・デーヴィス‐ジョーン・デーヴィス教授、OSUCCC‐James実験治療学プログラム共同代表者)は述べた。

本研究のために、Jacob氏らは、原発性肝細胞癌患者由来の細胞試料と肝細胞癌細胞株の他に、食餌誘発肝細胞癌が発生するマウスモデルを使用した。このマウスモデルは、ヒト肝細胞癌の発生におけるさまざまな病期と同様の病期を呈する。主な結果は以下のとおりである。

  •  糖新生経路における酵素量は、これらの酵素をコードする遺伝子の発現に関与する転写因子と同様に、大幅に減少した。
  • miR-23aの発現量は、マウスモデルとヒト原発性肝細胞癌試料で大幅に増加した。
  • miR-23aは、糖新生経路における2つの重要な要素である、酵素グルコース-6-ホスファターゼと転写因子PGC-1αを抑制する。
  • インターロイキン‐6とStat-3シグナル伝達経路は、miR-23aの発現量を増加させる。

「このデータにより、肝細胞癌では、糖新生は、インターロイキン‐6―Stat-3シグナル伝達経路によるmiR-23aの活性化により大幅に阻害されます。なお、miR-23aは直接、グルコース-6-ホスファターゼとPGC-1αを標的とし、抑制します。その結果、肝細胞癌ではグルコース産生能が低下する、と私たちは結論付けます」と、Jacob氏は述べている。

「グルコース-6-ホスファターゼは肝細胞によるグリコーゲン(グルコース由来貯蔵多糖類)のグルコースへの分解にも欠かせないため、グルコース-6-ホスファターゼ発現の抑制により、肝臓によるグルコース産生をもたらす全経路が阻害される可能性があります」と、Jacob氏は指摘する。

本研究は、NIH(米国国立衛生研究所)/米国国立癌研究所による資金提供(助成金CA086978)とNIH/米国国立糖尿病・消化器病・腎臓病研究所による資金提供(助成金DK088076)を受けた。

本研究に参加したオハイオ州立大学の研究者は以下の通りである。Bo Wang, Shu-Hao Hsu, Wendy Frankel and Kalpana Ghoshal.

オハイオ州立大学総合がんセンター、Arthur G. James and Richard J. Solove Institute(OSUCCC‐James)は、教育上優れた科学研究と患者中心の介護を統合することで、「癌の無い」世界を目指している。なお、これは、より優れた癌の予防・発見・治療の方法をもたらす戦略である。OSUCCC‐Jamesは米国内で41施設しかないNCI指定の総合がんセンターの内の1つである。また、第1、2相試験の実施を目的としてNCIが資金提供する7施設の内の1つである。最近、NCIはOSUCCC‐James癌プログラムを、NCI調査チームが授与する最高評価である「優秀」と評価した。OSUCCC‐Jamesは、その癌プログラムの一部として210床を有する成人患者ケア施設であり、Leapfrog Group(医療の質と安全性の改善に貢献することを目的とする非営利団体)によって「優秀な病院」の1つに、また、U.S. News & Reportによって全国上位20病院の1つに選ばれている。

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連絡先:Darrell E. Ward、医療センター広報業務・メディア広報、614-293-3737またはDarrell.Ward@osumc.edu

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渡邊岳 訳
畑 啓昭(消化器外科/京都医療センター)監修
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原文

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