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アレルギー疾患患者で、脳腫瘍リスクが減少する可能性/オハイオ州立大学総合がんセンター

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アレルギー疾患患者で、脳腫瘍リスクが減少する可能性/オハイオ州立大学総合がんセンター

掲載:2012年8月2日

オハイオ州コロンバス ― 新たな研究によって、アレルギーと重篤な原発性脳腫瘍リスクの減少の間に関連性があることが示された。本研究から、アレルギー疾患患者では男性においても脳腫瘍リスクは減少するものの、女性の方がより脳腫瘍リスクが減少することが示唆された。

また本研究から、アレルギーやその関連因子によってこの種の脳腫瘍リスクが減少しているのではないかという研究者らの考えが強まった。これら神経膠腫と称される脳腫瘍は、免疫系を抑制して自己増殖を促している可能性があるため、研究者らは、アレルギーによって脳腫瘍リスクが減少しているのではないか、あるいはこれらの脳腫瘍はその診断を受ける前に、アレルゲンに対する過剰な免疫応答を抑制しているのではないか、という疑問を持ち続けていた。

本研究を実施した研究者らは、患者が神経膠腫と診断される数十年前に採取された保存血液標本を分析することができた。アレルギーの兆候を示さない男女と比較して、血液中にアレルギーに関連する抗体が存在する男女では、20年後の神経膠腫リスクが約50%減少した。

「これは、われわれの得た研究成果の中でも最も重要な発見です。神経膠腫の診断を受ける前に、アレルギーによる影響が認められる期間が長いほど、神経膠腫がアレルギーを抑制している可能性はより低くなります。この関連性は、神経膠腫と診断されるよりもかなり前から見られるため、抗体やアレルギーの一側面が神経膠腫リスクを減少させていることが示唆されます。」と、本研究の主著者であるJudith Schwartzbaumオハイオ州立大学疫学科准教授は述べた。

「アレルギー疾患患者では、より高濃度の血中抗体により免疫系が活性化されているために、神経膠腫リスクが減少するのかもしれません。現時点においては、アレルギーの欠如が神経膠腫に関して特定された最も有力な危険因子であり、この関連性がどのように作用しているか、より理解しなければなりません。」と、Schwartzbaum准教授(オハイオ州立大学総合がんセンター治験医師も兼任)は述べた。

以前実施されたアレルギーと脳腫瘍リスクの関連性における研究の多くは、神経膠腫患者からのアレルギー歴の自己申告に基づいていた。脳腫瘍診断の20年以上前に採取された血液標本を使用する研究はこれまで存在しなかった。

本研究から、血液中のアレルゲン特異的抗体について陽性を示した女性では、最も重篤で頻度の高い脳腫瘍の1種である膠芽腫のリスクが50%以上減少したことも示唆された。このようなアレルゲン特異的抗体による影響は男性では認められなかった。しかしながら、アレルゲン特異的抗体および機能は不明であるが、何らかの抗体が共に陽性を示した男性では、抗体陰性の男性と比較すると膠芽腫のリスクは20%減少した。

米国では、膠芽腫は成人の原発性脳腫瘍の60%近くを占め、10万人中3人が発症すると推計される。手術、放射線治療、および化学療法を受けた患者の生存期間は、平均で約1年であるが、2年生存率は25%未満で、5年生存率は10%未満である。

本研究は、Journal of the National Cancer Institute誌電子版で公開されている。

Schwartzbaum准教授らはノルウェーのJanus血清バンクから血清標本の使用が認められた。最近40年間にわたり、Janus血清バンクは毎年健康診断を受けている一般市民から採取された血清標本や、献血ボランティアから採取された血清標本を保存している。ノルウェーでは1953年以来、国内において新たに癌であると診断された患者全員を登録しており、また個人識別番号によってこれらの患者と、以前に採取された血清標本の相互参照が可能である。

Schwartzbaum准教授らは、1974~2007年に神経膠腫と診断された患者594人(膠芽腫患者374人を含む)由来の保存血清を解析した。コントロールには、神経膠腫患者由来の保存血清と採血日・年齢・性別が同じである非神経膠腫患者1,177人由来の保存血清を用いた。

Schwartzbaum准教授らは、血清標本中の免疫グロブリンE(IgE)のうち2種類のタンパク質濃度を測定した。IgEは白血球が産生する抗体の1つで、アレルゲンに対する免疫応答を引き起こす。2種類のIgEのうち1つ目はアレルゲン特異的IgEで、アレルゲンの特定部位を認識する。2つ目は総IgEで、これにはアレルゲンの特定部位を認識するIgEだけでなく、作用が不明な抗体も含まれている。

Schwartzbaum准教授らは各血清における総IgEとともに、ノルウェーで最も多いアレルゲンに対して特異的なIgEの血清中濃度上昇を評価した。呼吸器における特異的なアレルゲンには、イエダニ、樹木花粉、植物、ネコ・イヌ・ウマの鱗屑およびカビが含まれていた。

次に、Schwartzbaum准教授らは統計学的解析を行い、アレルゲン特異的IgEと総IgEの濃度上昇と神経膠腫リスクの間の関連性を評価した。

女性ではアレルゲン特異的IgE上昇がある場合、アレルゲン特異的IgEが陰性である場合と比較して、膠芽腫リスクが54%減少した。男性においてはこのような関連性は認められなかった。

しかしながら、総IgE濃度と神経膠腫リスクの関連性は、統計学的には男女での差は認められなかった。男女を合わせた場合、総IgEに上昇が見られた場合には、総IgEが陰性である場合と比較して神経膠腫リスクが25%減少した。

膠芽腫リスクに対する影響に限って解析した場合には、血清中総IgE濃度が高いと膠芽腫リスクは男女共に低下することが示唆された。しかし、この結果は統計学的に有意差の認められるボーダーラインであったことから、この関連性は偶然であった可能性もある。

「男女間でアレルゲン特異的IgEの影響の差は確かにあります。そして、総IgEに関する結果についても、男女間での差が存在するかもしれないと示唆されます。この差に関する原因は不明です。」と、Schwartzbaum准教授は述べた。
しかし、本研究から得られた結果は、アレルギー性呼吸器疾患患者の免疫系にはこのような、脳腫瘍に対する保護効果があるという可能性を示した。「血清採取から脳腫瘍診断までの40年以上にわたる関連性を調べることができたことで、研究者たちはアレルギーと脳腫瘍リスクの間の関連性について、より詳しい眼識を得ることができました。」と、Schwartzbaum准教授は述べた。

例えば、本解析によると総IgE濃度が高い場合、総IgEが陰性の場合と比較して、20年後の神経膠腫リスクが46%減少した。脳腫瘍診断の2~15年前に総IgE濃度が高かった人における神経膠腫リスク減少率は約25%程度であった。

「血清標本では、その診断時期が近いほど、IgEによる神経膠腫リスクの減少は少ない傾向にあるかもしれません。しかしながら、もし腫瘍がアレルギーを抑制しているとすれば、診断時期近くのリスクの差がより大きくなることが予期されるかもしれません。」と、Schwartzbaum准教授は述べた。

Schwartzbaum准教授の次の研究は、免疫応答の一部として炎症を促進または抑制する化学伝達物質であるサイトカインの、血清標本中の濃度を測定し、これらのサイトカインがIgE濃度上昇と脳腫瘍リスク減少の関連性に重要な役割を果たしているかどうかの調査である。

本研究は、米国国立癌研究所、米国国立衛生研究所、およびオハイオ州立大学総合がんセンターによる研究促進・支援プログラム助成金による資金提供を受けた。

共著者は、Bo Ding・Anders Ahlbom・Maria Feychting (カロリンスカ研究所、スウェーデン王国ストックホルム市)、Tom Borge Johannesen・Tom Grimsrud(ノルウェーがん登録所)、Liv Osnes (Ulleval大学病院、ノルウェー王国オスロ市)、ならびにLinda Karavodin(Karavodin前臨床コンサルティング、カリフォルニア州エンシニータス市)である。

連絡先:Emily Caldwell、(614) 292-8310またはCaldwell.151@osu.edu

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渡邉 岳訳
朝井鈴佳(獣医学・免疫学)監修
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原文 

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