地中海産植物由来の薬剤、マウスの腫瘍細胞を殺傷 /ジョンズホプキンス大学 | 海外がん医療情報リファレンス

地中海産植物由来の薬剤、マウスの腫瘍細胞を殺傷 /ジョンズホプキンス大学

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地中海産植物由来の薬剤、マウスの腫瘍細胞を殺傷 /ジョンズホプキンス大学

リリース日:2012年7月9日

ジョンホプキンス・キンメルがんセンターの研究者らは、デンマークの研究者らとの共同研究により、新規の抗癌剤を開発した。本剤は、正常細胞では検出されない癌特異的タンパクによって活性化されるまで血中を循環するように設計されたものである。雑草から開発され、癌細胞及び腫瘍に直接血液を供給する血管を破壊することが示されている。また、あたかも「分子の手榴弾」のように作用し、正常な血管及び組織には影響を与えない薬剤である。

非臨床試験では、本剤(記号番号:G202)をヒト前立腺腫瘍移植マウスに3日間投与すると、投与後30日以内に腫瘍が平均50%縮小した。また直接比較から、G202は化学療法剤ドセタキセルより優れており、投与後21日でヒト前立腺腫瘍移植マウスの9匹中7匹で腫瘍が50%以上縮小した。一方、ドセタキセルでは、同試験期間中に腫瘍が50%以上縮小したのは8匹中1匹のみであった。

2012年6月27日発行のScience Translational Medicine誌で、G202がヒト乳癌、腎臓癌及び膀胱癌の各動物モデルで腫瘍を50%以上縮小させたことも報告した。

これらの試験成績にもとづき、ジョンホプキンスの医師らは、本剤の安全性について評価を行うために第1相臨床試験を実施し、これまでに進行癌患者29人に投与を行った。ジョンホプキンスのほか、ウィスコンシン大学並びにテキサス大学サンアントニオ校が本試験に参加している。なお、前立腺癌及び肝臓癌患者を対象とする本剤の第2相試験が現在計画されている。

G202は、地中海域に自生するThapsia garganicaと呼ばれる植物から化学的に誘導された薬剤である。この植物はタプシガルジン(thapsigargin)という成分を生成し、古代ギリシア時代から動物に有毒であると知られてきた。また、この植物はアラブの商人らの間で、ラクダが食べると死ぬことから「死の人参」として知られていた、と研究者らは述べている。

「私たちは、この非常に毒性が強い天然植物由来の成分を医薬品として再設計することでヒトの癌治療に応用することを目指しています」と述べるのは、本論文の筆頭著者、泌尿器腫瘍学・分子薬理学教授Samuel Denmeade医師である。「私たちは、活性型の薬剤を放出させるために、細胞による修飾を受ける形状を作ることによって、これを達成しました。」

タプシガルジンを分解しそれに化学修飾をほどこすことにより、研究者らは、Denmeade氏が安全ピンの付いた手榴弾と例えるこの剤形を開発した。本剤は静注で投与でき、投与後は血中を循環し、癌細胞に到達した時点で前立腺特異的膜抗原(PSMA)というタンパクを攻撃する。PSMAは前立腺癌や他領域の癌細胞内部から放出される。この攻撃により、癌細胞周囲の他の細胞と同様に、癌細胞に栄養を供給する血管及び腫瘍に対して殺細胞剤(活性型G202)が放出され、G202の「安全ピンを抜く」こととなる。

特に、G202はSERCAポンプというタンパクの機能を阻害する。このハウスキーピング・タンパクは細胞の生存に必要であり、細胞内のカルシウム濃度を正常値に保つ働きがある。

「重要なのは、癌細胞自体が自らの死滅を引き起こすということです」と述べるのは、本試験論文の統括著者、ジョンホプキンス大学の泌尿器腫瘍学・生物医工学教授John Isaacs博士である。

本剤が標的とするSERCAポンプは、あらゆる細胞の生存に必要である。そのため、腫瘍細胞もSERCAポンプの産生を停止することができず、本剤に対する耐性の獲得が困難になる、と同研究者らは述べる。

本試験に関する共同著者はAnnastasiah M. Mhaka、D. Marc Rosen、W. Nathaniel Brennen、Susan Dalrymple、Bora Gurel、Angelo M. DeMarzo、Michael Carducci(以上、ジョンホプキンス大学)、Ingrid Dach、Claus Olesen、Jesper V. Møller、Poul Nissen(以上、デンマーク国立研究財団及びオーフス大学)、Craig A. Dionne(GenSpera社)、並びにS. Brøgger Christensen(コペンハーゲン大学)である。

本試験は、米国国防総省前立腺癌研究プログラム、前立腺癌基金及びDavid Koch、デンマーク癌学会、デンマーク戦略研究評議会、デンマーク国立研究基金、デンマーク医学研究評議会、オーフス大学研究基金、及びNIHのNCI優良研究特化プログラム(CA058236、CA006973)の支援で実施された。

Denmeade医師及びIsaacs博士はGenSpera社の顧問であり、同社の株式及び金銭的報酬を受けた。同社との関係については既に開示済みであり、ジョンホプキンス大学医学部の利益相反委員会により管理されている。

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菅原宣志 訳
須藤智久(薬学/国立がん研究センター東病院 臨床開発センター)監修
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原文

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