うつ症状と癌生存の関連が明らかに/MDアンダーソンがんセンター | 海外がん医療情報リファレンス

うつ症状と癌生存の関連が明らかに/MDアンダーソンがんセンター

更新日

Facebookでシェアする Twitterにツィートする LINEに送る print

うつ症状と癌生存の関連が明らかに/MDアンダーソンがんセンター

うつ症状と癌生存の関連が明らかになった
MDアンダーソンがんセンター
2012年8月2日

テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究によって、新たに診断された転移性腎臓癌患者におけるうつ症状が生存に関連しており、炎症性遺伝子調節によって、この関連を説明し得ることが明らかになった。

PLoS ONE誌に発表された研究は、患者の心理状態、ストレスホルモンの調節や炎症性遺伝子発現の役割の間の相互作用をさらに探っている。これまでの研究は、うつ病によってさらに不良な転帰となることを示唆しているが、関与している特定の要因についての疑問は残る。

「私たちの調査結果、また他のものも、メンタルヘルスや社会福祉は生物学的プロセスに作用する可能性があり、癌関連の転帰に影響することを示している」と、MDアンダーソンの一般腫瘍と行動科学科の教授であり、統合医療プログラムの責任者でもあるLarenzo Cohen博士は述べた。 調査結果は、生命を脅かす病気に直面していても、人々が苦痛にうまく向き合う手助けをする一般に認められた治療法があるため、メンタルヘルスのスクリーニングが標準的なケアの一部であるべきことも示唆している。

「私たちは、特に生存の予測因子として心理社会的要因を調べることに興味を持っていた」とCohen博士は続けた。 「調査結果によって、私たちが今やうつと生存の関連を説明する有望な生物学的経路の一部を理解し得ることが示された。」

主筆者であるCohen博士と彼の同僚らは、2000年4月から2005年11月にMDアンダーソンの新たに診断された転移性腎細胞癌患者217人を調べた。臨床試験では、患者らは大量の質問紙に記入を行い、血液サンプルを提供した。

調査では、うつ症状、生活のQOL、社会的支援、対処方法、宗教と精神性を測定した。参加者はまた、朝高くなり日中を通して下がっていくストレスホルモンであるコルチゾールの変動を測るために、3日間1日あたり5回唾液のサンプルを提供した。コルチゾール量の増加がうつ症状の患者で見られ、細胞の変化と関連しているとCohen博士は述べた。

解析時に、患者の64%が死亡のために減少しており、診断から死亡までの平均期間は1.8年であった。全体として、患者の23%が、臨床的にうつ症状を呈し(16以上のスコア)、疾患関連危険因子を制御した後でさえ、生存期間の短さと関連していた。同様に、朝から夕方までコルチゾールの増減を表す勾配が平坦であることが生存期間の短さに関連していた。

シグナル伝達経路によって糸口をつかむ

うつ症状に関連する死亡率の増加リスクが炎症誘発性遺伝子発現に由来する可能性があるかどうかを判断するために、全ゲノムプロファイリング(whole-genome profiling)は最も高いうつ症状スコアの患者15人と、リスクが適合した最も低いうつ症状のスコアを持つ15人の患者から組織サンプルを行った。

「私たちは、NF-ĸBのような特定のシグナル伝達経路が、細胞内の炎症の調節に重要な役割を果たしていることを知っている」とMDアンダーソンの婦人腫瘍科の教授で、この研究の共著者であるAnil Sood医師は述べた。 「私たちの目標は、これらの経路がうつ症状の患者においてより高いレベルで発現したかどうかを判断することであり、私たちは実際にそうであることを示すデータを見出した。」

調査によると、合計で116の遺伝子転写が、高いうつ症状スコアの患者において、平均50%以上、上昇していることが見出された。そのデータによって、患者の心理状態と生存期間の関連が炎症生物学とコルチゾールの勾配の調節不全に由来することが示唆された。

今後必要とされる研究

筆者らは、ストレスが倫理的ではないとしながら人間をモデルとして心理的ストレスと癌生存との間の因果関係を判断する難しさを含めて、研究に多くの制限があることを指摘している。この研究では扱われなかったうつ症状と生存に影響を与え得る他の要因も存在するだろう。また、患者の診断前に高レベルのストレスが存在したかどうかにさらなる注意が必要であるとCohen博士は述べた。

次段階では、行動分析や薬理学的介入を用いてうつ病を管理することによって、軽度、中程度または重度の気分障害患者の生存と癌の診断に影響を与え得るかどうかを測る臨床試験を実施するつもりだとCohen博士は述べた。

この研究は、the Dana Foundation、the Mary and David Wolff Family Foundation、米国保健社会福祉省、米国立衛生研究所、MDアンダーソンがんセンターSupport Grandからの助成金によって援助された。

Cohen博士とSood医師に加えて、この研究についてのMDアンダーソンの筆者は以下である。Nicholas Jennings, Department of Gynecologic Oncology; Sarah Prinsloo, Ph.D. and Qi Wei, Department of General Oncology; Luis Vence, Ph.D., Laszlo Radvanyi, Ph.D., and Diane Kentor, Department of Melanoma Medical Oncology; Louis Pisters, M.D. and Shellie Scott, Department of Urology; Nizar Tannir, M.D. and Eric Jonasch, M.D., Department of Genitourinary Medical Oncology; and Pheroze Tamboli, M.D., Department of Pathology. Other authors include Steven Cole, Ph.D. and Jesusa Arevalo, UCLA David Geffen School of Medicine; and Clemens Kirschbaum, Ph.D, Technical University of Dresden Germany

著者に利害相反がないことをここに宣言する。

***********
伊藤実花 訳
太田真弓(医療法人社団学風会さいとうクリニック) 監修
************


原文


printこの記事を印刷する Facebookシェアする Twitterツィートする LINE送る

免責事項当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

注目キーワード

新着ドキュメント

一覧

週間ランキング

  1. 1BRCA1、BRCA2遺伝子:がんリスクと遺伝子検査
  2. 2非浸潤性乳管がん(DCIS)診断後の乳がんによる死亡...
  3. 3若年甲状腺がんでもリンパ節転移あれば悪性度が高い
  4. 4コーヒーが、乳がん治療薬タモキシフェンの効果を高める...
  5. 5がんに対する標的光免疫療法の進展
  6. 6ニボルマブとISA101ワクチン併用療法が中咽頭がん...
  7. 7乳がん化学療法後に起こりうる長期神経障害
  8. 8がん領域におけるシームレス臨床試験数が近年増加
  9. 9ルミナールA乳がんでは術後化学療法の効果は認められず
  10. 10治療が終了した後に-認知機能の変化

お勧め出版物

一覧

arrow_upward