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バーキットリンパ腫は他のリンパ腫とは分子的に異なることがNCIの研究で判明

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バーキットリンパ腫は他のリンパ腫とは分子的に異なることがNCIの研究で判明

NCIプレスリリース

2012年8月13日

 研究者らは、バーキットリンパ腫において、細胞生存を促進する独自の遺伝子変異など、他のリンパ腫には認められない多くの分子特性を発見した。これらの発見は、バーキットリンパ腫は他の種類のリンパ腫と根本的に異なるという最初の遺伝子学的根拠となった。米国国立衛生研究所(NIH)の一組織である、米国国立癌研究所(NCI)の研究者らと協力者は、バーキットリンパ腫の患者に対する新薬の開発や現存の薬の適用を目的として使用されるかもしれない、遺伝子変異や変化した経路を同定した。この研究はNature誌の2012年8月12日電子版に掲載された。

バーキットリンパ腫は非ホジキンリンパ腫の一種で、3つの病型がある。米国では、全ての年齢が罹患するが、最も多いのは子供である散発型、EBウィルス関連風土病型(エプスタイン・バーウィルスと関連する)はアフリカの子供たちに最も多い。ヒト免疫不全症ウィルス(HIV)は、バーキットリンパ腫の3つめの病型の素因である。

NCI癌研究センターのLouis Staudt医学博士率いる研究チームによる過去の研究は、遺伝子活動の署名を元に、バーキットリンパ腫はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)のような他の種類の非ホジキンリンパ腫との区別が容易に可能であると明らかにした。バーキットリンパ腫では、MYC腫瘍促進遺伝子は常に活動していることは知られていたが、このリンパ腫を発症させる他の遺伝的変化はおおむね知られていなかった。

この研究では、研究者らは、バーキットリンパ腫の初期段階でMYCと共同して働くかもしれない新たな遺伝子と経路を同定するために、RNA再配列およびRNA干渉(RNAi)として知られる方法を用いた。RNA再配列により、研究者らはバーキットリンパ腫細胞内で新たに変異した遺伝子を発見することが可能になり、RNAiは、– それにより個々の遺伝子の発現は抑制させられることが可能であり(ノックダウン、または機能阻害)– 研究者らが、細胞増殖および生存に不可欠な遺伝子や経路の同定することを助ける。

研究者らはバーキットリンパ腫患者28人の生検組織とバーキットリンパ腫の異なる13の細胞株でRNA再配列を行い、80のDLBCLの生検から過去に発表されたRNA配列データを再解析した。これらの遺伝子的発見を確認するために、彼らはバーキットリンパ腫の散発型、風土病型およびHIV関連の111の生検と細胞株と、186のDLBCLの生検組織を追加使用した。

バーキットリンパ腫ではMYCは高度に変異しているという予想通りの結果に加えて、研究者らは過去この癌における関与が示唆されていなかった他の多くの遺伝子に変異を発見した。それらの遺伝子変異の多くは、DLBCLにおいては、もしあったとしても非常に稀であった。逆に、研究者らはDLBCLにおいては高い頻度で変異していたが、バーキットリンパ腫ではそうではない遺伝子を発見した。そのことはこの2つのリンパ腫は癌化するメカニズムが根本的に異なることを示している。

バーキットリンパ腫で最も高い頻度で変異していた遺伝子の一つはTCF3であり、この遺伝子は正常なB細胞の機能を調節する重要な因子をエンコードする。B細胞は抗体を生成し、免疫に重要な白血球である。またB細胞はバーキットリンパ腫やDLBCLの元になる細胞でもある。TCF3遺伝子よりもさらに高い頻度で変異が認められたのが、TCF3の働きを阻害するタンパク質をエンコードするID3遺伝子である。共に、バーキットリンパ腫の生検組織のほぼ70%でこれらの遺伝子は変異している。これらの変異のほとんどがTCF3を阻害するID3の能力を阻害するもので、それによりTCF3がバーキットリンパ腫細胞の数百の遺伝子活性を変更することが可能になる。事実、研究者らは、RNAiによりTCF3が機能が停止されると、DLBCLの細胞株は死なないがバーキットリンパ腫の細胞株は死ぬことを発見した。

バーキットリンパ腫でのTCF3とID3の変異の発見は、研究者らが治療的の標的としうる細胞生存経路の同定に繋がった。彼らは、B細胞の細胞膜の外に広がるタンパク質の複合体であるB細胞受容体からの信号を増幅することにより、TCF3がリンパ腫細胞の生存を促進することを示した。

B細胞受容体は、正常なB細胞がその近辺の異質分子を感知することを可能にし、B細胞が免疫反応を起こすことでB細胞の増殖と生存を引きおこす。B細胞受容体により活性化されたシグナル伝達経路のひとつは、PI(3)キナーゼ経路と呼ばれる。キナーゼとは、細胞内で信号を伝達し、複雑な処理の制御を助ける酵素である。PI(3)キナーゼ経路はヒトの癌で最も頻繁に活性化されるシグナル伝達経路で、この経路の活性化は癌細胞の生存を促進する。従って、PI(3)キナーゼ経路を阻害するための薬を開発する大変な努力が進行中である、とStaudt氏は言った、しかしそのような阻害剤のバーキットリンパ腫の患者への臨床試験は未だ行われていない。

他の遺伝子であるCCND3は、バーキットリンパ腫の細胞組織の38%で変異している。CCND3はTCF3により活性化し、サイクリンD3というタンパク質をエンコードする。サイクリンD3は、バーキットリンパ腫細胞内のCDK6と呼ばれるキナーゼと相互作用し、細胞周期進行を促進する。筆者らはCDK6を阻害する薬がバーキットリンパ腫細胞の細胞周期を停止させ、死に至らしめることを発見した。それはCDK6がこの癌の治療法の開発の重要な標的になることを示唆している。

「われわれの研究は、米国でバーキットリンパ腫患者に主に投与される大量化学療法による治癒率が90パーセント近くであるとしても、これよりも毒性が少ない可能性のある様々な標的療法を提案するものである」とStaudt氏は言う。「そのような標的療法は、大量化学療法を安全に行うことができないために治癒率がわずか50パーセントしかないアフリカのバーキットリンパ腫の子供たちも救うかもしれない。」 

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参考文献: Staudt L, et. Al. Burkitt Lymphoma Pathogenesis and Therapeutic Targets from Structural and Functional Genomics. Nature. August 12, 2012. DOI: 10.1038/nature11378.

原文

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岩崎多歌子 翻訳
吉原 哲 (血液内科・造血幹細胞移植/兵庫医科大学病院) 監修
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