第1相臨床試験の薬剤がメラノーマの脳転移を縮小/MDアンダーソンがんセンター | 海外がん医療情報リファレンス

第1相臨床試験の薬剤がメラノーマの脳転移を縮小/MDアンダーソンがんセンター

更新日

Facebookでシェアする Twitterにツィートする LINEに送る print

第1相臨床試験の薬剤がメラノーマの脳転移を縮小/MDアンダーソンがんセンター

3集団を対象とした臨床試験が、他の進行メラノーマ患者および複数の癌の活動で高い奏効率を示す
MDアンダーソンがんセンター
2012年5月12日

 国際第1相臨床試験の一部で、メラノーマに一般的に見られる変異を標的にした試験薬が、脳転移を有する10人のうち9人の患者の腫瘍を縮小したと、Lancet誌の8月18日号が伝えた

メラノーマの半数で活発なVal600 BRAF変異を標的にするdabrafenibはまた、脳転移が見られない36人のメラノーマ末期患者のうち、25人の腫瘍を縮小した。この薬剤は、BRAF変異を有するほかの癌タイプでも活性を示した。

「脳転移がある患者10人のうち、9人に奏効というのは非常に画期的なこと。脳転移メラノーマに対し、これほどの活性をみせた全身療法はこれまでになかった」と、本研究の共同著者で、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのDepartment of Investigational Cancer Therapeutics(実験的癌治療部門)助教授であるGerald Falchook 医師は述べた。

脳転移のあるメラノーマ患者の全生存期間中央値は、4、5カ月だと研究者らは述べた。脳転移の治療に使わる薬剤の奏効率は10%かそれ以下。手術と放射線の定位照射あるいは全脳照射も併用される。

奏効した9人の患者の腫瘍縮小範囲は、20%から100%だった。4事例では、脳転移が消失した。

予想外だった薬剤の脳内到達
これらの結果はより多くの患者群による臨床試験で有効性確認をする必要があると、Falchook氏は話した。「これはdabrafenibという薬剤に対する考え方と、今後の臨床試験における除外基準を変えることになる」。

「薬剤は血液脳関門を通過できないと想定されるため、脳転移がある患者はほとんどの臨床試験から除外されている」とFalchook氏は言う。「脳転移のある患者こそ、最も臨床試験を必要としている。これらの患者の治療選択肢は非常に限られているからだ」。

GlaxoSmithKlineが製造するdabrafenibは、血中の有害物質から脳を守るための血液脳関門を通過するようデザインされたものではなかった。

脳転移に対するこの薬剤の作用は、当初は一試験施設での偶然の発見だった。ある患者において、dabrafenibの投与開始前に研究目的で行ったPETスキャンにより、脳転移が発覚した。しかしスキャン結果は、治療が始まるまで明らかにならなかった。2週間後に行ったフォローアップのPETスキャンが脳転移の代謝活性の低下を示し、またそれに続くMRIでも腫瘍サイズの縮小が明らかになったため、同施設の倫理委員会はこの患者の治療継続を承認した。

研究チームはその後、脳転移の治療を受けていない10人の患者を対象に、サブスタディ試験を設計したとFalchook氏は述べた。Dabrafenibが脳内の腫瘍に到達するメカニズムは、調査中である。

「こうしたメラノーマの脳転移患者の全員で、腫瘍は最終的に増悪した」と、Falchook氏は述べた。進行癌においては、薬剤への耐性予防が課題として残っている。

脳転移のない患者への高い奏効率
米国とオーストラリアの8試験施設で、184人の患者を登録した。このうち、156人が他の臓器への転移を有するメラノーマ患者だった。MDアンダーソンは64人の患者を登録した。

第1相臨床試験の主要目的は、試験薬の用量を徐々に増やして副作用を評価し、安全に投与できる範囲内での最大用量を特定することである。

研究者らは、最大耐量の限界に達することはなかった。副作用のために薬剤投与を中断した患者はおらず、重篤な毒性が認められた患者もほとんどいなかったのだ。「こうした新たな分子標的治療に共通するように、これも非常に毒性の低い薬剤だ」と、Falchook氏は述べた。

奏効率および、体が薬剤をいかに代謝するかという薬物動態にもとづき、研究チームは今後の第2相、第3相試験では、150 mgを1日2回経口投与することを推奨した。第1相試験の第二段階では、以下の患者を対象にその用量で試験を行った。

•36人の脳転移がないVal600 BRAF変異のメラノーマ患者
•10人の無治療で脳転移のメラノーマ患者
•28人のBRAF変異を有するその他の癌患者

無治療で脳転移がないメラノーマ患者36人のうち、
•25人(69%)で部分奏効または完全奏効が認められた。これはX線画像で腫瘍の大きさが少なくとも30%以上縮小したことをもって判定された。
•18人(50%)に確定効果があった。これは少なくとも1カ月後の2回目の画像スキャンで、腫瘍の縮小が認められたことを意味する。
•17人(47%)は6カ月以上臨床試験を継続し、あまり一般的でないVal600Lys BRAF変異でも奏効が認められた。

確定効果率は、BRAF変異のメラノーマ治療に最初に承認されたvemurafenibの第3相臨床試験と同等だった。

他の癌腫では、甲状腺乳頭癌、非小細胞肺癌、大腸癌の患者で部分奏効が見られた。

「これは腫瘍の分子プロファイルが、癌が発症した臓器と同じくらい、あるいはそれ以上に重要であることをさらに証明するものだ」と、Falchook氏は話した。

「患者の腫瘍内のBRAFや他の分子異常を検査する必要がある」と同氏は述べた。「他の多くのタイプの腫瘍でも、数パーセントの患者にBRAF変異が見られる。規定としてこうした検査を行わなければ、これらの患者は有望な標的薬による癌治療を受けられないかも知れない」。

Falchook氏には、今もdabrafenibの投与を受ける患者が6人おり、この中には完全寛解した5人も含まれている。さらに同氏は、dabrafenibにより癌の増悪が止まっている6人の甲状腺乳頭癌患者と1人の大腸癌の治療を続けている。

GlaxoSmithKlineが本臨床試験を支援、資金提供した。メラノーマ向けdabrafenibの第2相、第3相臨床試験が進行中である。

Falchook氏の共著者は以下の通りである。 Razelle Kurzrock, M.D., of MD Anderson’s Department of Investigational Cancer Therapeutics, and Kevin Kim, M.D. of MD Anderson’s Department of Melanoma Medical Oncology; co-lead author Georgina Long, M.D., Ph.D., and senior author Richard Kefford, M.D., Ph.D., of Melanoma Institute Australia, Westmead Institute for Cancer Research and Westmead Hospital, University of Sydney, in Sydney, Australia; Tobias Arkenau, M.D., Ph.D., Prince of Wales Hospital, Randwick, Australia; Michael Brown, M.D., Ph.D., Royal Adelaide Hospital and University of Adelaide, Adelaide, Australia; Omid Hamid, M.D., and Steven O’Day, M.D., of The Angeles Clinic and Research Institute. Los Angeles, Calif.; Jeffrey Infante, M.D., Sarah Cannon Research Institute, Nashville, Tenn.; Michael Millward, M.D., Cancer Council of Western Australia, Sir Charles Gairdner Hospital and University of Western Australia, Perth, Australia; Anna Pavlick, M.D., New York University School of Medicine; and Samuel Blackman, M.D., Ph.D., C. Martin Curtis, Peter Lebowitz, M.D., Ph.D., Bo Ma, Ph.D., and Daniele Ouellet, Ph.D., of GlaxoSmithKline Research and Development, Philadelphia.

***********
片瀬ケイ 訳
峯野 知子 (高崎健康福祉大学薬学部 准教授) 監修
************


原文


printこの記事を印刷する Facebookシェアする Twitterツィートする LINE送る

免責事項当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

注目キーワード

新着ドキュメント

一覧

週間ランキング

  1. 1BRCA1、BRCA2遺伝子:がんリスクと遺伝子検査
  2. 2非浸潤性乳管がん(DCIS)診断後の乳がんによる死亡...
  3. 3卵巣がんの起源部位は卵管であることが示唆される
  4. 4若年甲状腺がんでもリンパ節転移あれば悪性度が高い
  5. 5コーヒーが、乳がん治療薬タモキシフェンの効果を高める...
  6. 6がん領域におけるシームレス臨床試験数が近年増加
  7. 7アブラキサンは膵臓癌患者の生存を改善する
  8. 8治療が終了した後に-認知機能の変化
  9. 9ルミナールA乳がんでは術後化学療法の効果は認められず
  10. 10乳がん化学療法後に起こりうる長期神経障害

お勧め出版物

一覧

arrow_upward