グレープフルーツジュースで、患者への抗癌剤の投与量を減らす/シカゴ大学 | 海外がん医療情報リファレンス

グレープフルーツジュースで、患者への抗癌剤の投与量を減らす/シカゴ大学

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グレープフルーツジュースで、患者への抗癌剤の投与量を減らす/シカゴ大学

2012年8月7日

グレープフルーツジュースを1日コップ1杯併用することにより、単剤の場合の3倍以上に匹敵する効果が得られることが最新の臨床試験で示された。グレープフルーツジュースと併用することで、薬剤を高用量で投与した場合による副作用を回避し、また薬剤の医療費抑制に役立つ可能性があるシカゴ大学病院の研究者らは、癌治療用薬剤の取込み及び消失に対する食物の影響を研究している。Clinica Cancer Research誌8月号で発表された試験で同研究者らは、1日8オンス(約250mL)のグレープフルーツジュースを飲用することで、シロリムス(sirolimus:免疫抑制剤、抗癌剤テムシロリムスの類似化合物、日本未承認)の代謝を遅延させることを示した。シロリムスは、移植手術患者への適応薬であるが、多くの癌患者に対しても有用な可能性がある。

1日8オンスのグレープフルーツジュースを飲用する患者では、シロリムスの血中濃度が350%も増加した。また、薬物代謝の遅延を引き起こすケトコナゾールについても、シロリムス血中濃度を500%増加させることが示されている。

「グレープフルーツ、またはグレープフルーツと同様の作用をする薬剤(ケトコナゾールなど)は、他の薬(シロリムスなど)の血中濃度を顕著に上げる可能性があります」と述べたのは、本試験の責任者であるEzra Cohen医師、シカゴ大学病院の癌専門医である。「しかし、グレープフルーツジュースによる薬物血中濃度上昇は過剰投与になりかねないと長い間考えられています。そこでその変わりに、われわれはグレープフルーツジュースをコントロールした状態で、シロリムスの生物学的利用能及び有効性を増大させる可能性を確認することを目的としました。」
このグレープフルーツジュースの薬理学的な特性は、シロリムス及びその他の数種類の薬剤の分解に関与する腸内酵素の抑制作用によるものである。この作用が見られるのは、本研究者らが言う「グレープフルーツジュース投与」から数時間以内である。「この作用は数日間かけて徐々に減退して行きます」。

Cohen医師の研究班は、シロリムスを用いて3つの試験を同時に実施する第1相試験を設定した。試験患者はシロリムス単剤投与、シロリムス+ケトコナゾール併用投与、又はシロリムス+グレープフルーツジュース併用投与を受けた。試験では、難治性で有効な治療法のない癌患者138人を組み入れた。

シロリムス単剤投与群患者は本剤の投与を低用量で開始したが、各状態で目標となる薬剤血中濃度に到達するのに必要な用量を確認するため、試験の進行とともに徐々に投与量を増量し、そのため副作用を最小限に抑え最大の抗癌作用を得た。

シロリムス投与患者で癌に対して奏効を示す至適用量は約90mg/週であった。ただし、45mg以上の用量では、吐き気や下痢などの重篤な胃腸障害が認められたため、シロリムス単剤投与群の患者では投与量を45mg/週2回に切り替えた。

他2群での至適用量は非常に低かった。シロリムス+ケトコナゾール投与群の患者で、血中濃度を定常状態に保つために必要とした用量は16mg/週と低用量であった。また、シロリムス+グレープフルーツジュース投与群ではシロリムス25~35mg/週であった。

「これは癌の試験では初めて薬物-食物間相互作用を利用した試験である」と論文に述べられている。

本試験ではいずれの患者も完全奏効を示さなかったが、この3試験の約30%の患者では病勢安定が示されたことから、この間は進行が認められなかった期間であることが示された。また、グレープフルーツジュース投与群の患者1人で有意な腫瘍収縮が部分奏効として認められ、3年以上持続した。

ケトコナゾールでは薬剤滞留の作用が若干強く認められたが、グレープフルーツジュースのほうが有益であり、毒性及び過剰投与のリスクがない。また論文では「このため、われわれにとって自由に利用できる作用物質であり、生物学的利用能(本試験では約350%)を顕著に増加させ、また現在の状況では重要なこととなるが、CYP450酵素による代謝を受ける多くの薬剤にかかる処方費を減らすものである」と記述している。

シロリムスは最初に開発されたmTOR阻害剤のひとつであり、元来は移植手術による臓器の拒絶反応を予防する目的で開発されが、抗癌作用も認められた。この種類では最初の医薬品であることから最初に特許が切れた医薬品でもあるため、費用も安くなる。論文では「医療費の更なる削減が、シロリムスと代謝を抑制する作用物質を併用することで実現可能となる」と記述している。

シロリムスを分解する酵素の産生量は個人で異なることから、グレープフルーツジュースの作用も異なる可能性があるが、酵素量の検査によりそれぞれの患者の反応を予測することが可能と考えられる。

「グレープフルーツジュースの作用のばらつき自体が、シロリムス分解酵素量のばらつきよりもかなり大きい可能性がある」とCohen医師は述べた。本試験の予備試験では缶詰のグレープフルーツジュースを用いたが、これはシカゴを拠点とする食料品店チェーン会社より寛大に寄付されたものであった。しかし、この缶詰の検査から有効成分が検出されなかった。そのため、フロリダ州政府柑橘局が提供した冷凍濃縮品に切り替えた。

本試験は、米国国立衛生研究所(NIH)の支援を受けており、製薬会社からの支援は受けていない。用量設定試験は、特に薬価が確定した承認薬について推奨用量を低くする試験成績となる場合、製薬会社にとって、「必ずしも有利になるものではない」と論文では述べている。

本試験のその他の論文著者は、Kehua Wu、Christine Hartford、Masha Kocherginsky、Yuanyuan Zha、Anitha Nallari、Michael Maitland、Kammi Fox-Kay、Kristin Moshier、Larry House、Jacqueline Ramirez、Samir Undevia、Gini Fleming、Thomas Gajewski and Mark Ratain(以上シカゴ大学)、and Kimberly Eaton(テキサス大学ヒューストン校)である。

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菅原宣志 訳
勝俣範之(腫瘍内科、乳癌・婦人科癌/日本医大武蔵小杉病院) 監修
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原文

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