食道癌における2つの癌促進性シグナル伝達経路が関連づけられた/MDアンダーソンがんセンター | 海外がん医療情報リファレンス

食道癌における2つの癌促進性シグナル伝達経路が関連づけられた/MDアンダーソンがんセンター

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食道癌における2つの癌促進性シグナル伝達経路が関連づけられた/MDアンダーソンがんセンター

ヘッジホッグシグナル伝達経路とmTORシグナル伝達経路は相互に作用する:研究結果から新規併用療法が示唆される
MDアンダーソンがんセンター
2012年3月19日

癌促進タンパクを細胞核内に運ぶ役割を担う新たなシグナル伝達経路が特定された。これにより、食道癌の併用療法が有効となる可能性がもたらされ、またヘッジホッグシグナル伝達経路を攻撃する新薬に対する抵抗性の作用機構が示唆される。

テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究チームは、Cancer Cell誌2012年3月20日号で、食道癌の発生または進行において、mTORシグナル伝達経路がGli1タンパク質の活性化を促進すると発表している。

「Gli1活性化においては、ヘッジホッグシグナル伝達経路が現時点で立証済みの、つまり本来の伝達経路です。今回、私たちは本来のGli1活性化ではなく、単一のシグナル伝達経路であるmTORを経たすべてのGli1の活性化をつなぐ作用機構を解明し、明らかにしました」 と統括著者であるMien-Chie Hung博士(MDアンダーソンがんセンター基礎研究分野副所長兼分子・細胞腫瘍学主任教授)は述べた。

「これら2つのシグナル伝達経路間のクロストーク(互いに連動しあうこと)の解明はきわめて難しい課題です。しかし、私たちの実験から、mTORシグナル伝達経路阻害剤RAD-001(アフィニトール®)とヘッジホッグシグナル伝達経路阻害剤GDC-0449(エリベッジ®)併用療法により、食道腺癌のマウスモデルで腫瘍容積が急激に減少したことが示されました」とHung氏は述べた。
両剤とも、他の癌種に対する使用について、米国食品医薬品局(FDA)により承認されている。

ヒト侵襲性癌で活性を示す両シグナル伝達経路
ヒト食道癌組織107サンプルを解析したところ、80標本(74.8%)にmTOR経由のGli1活性を示すマーカーがシグナル伝達経路がGli1を活性化させることを示すマーカーが認められ、また87標本(81.3%)にヘッジホッグ経由のGli1活性を示すマーカーが認められた。

食道癌は最も致死的な癌の1つであり、患者の5年生存率は20%未満であると、本研究で指摘されている。1980年代以降米国では、食道癌は毎年5%~10%増加している。「食道の炎症および肥満が食道癌発症増加の推進要因であると考えられます」とHung氏は述べた。

研究チームは、細胞株・マウスモデル・ヒト食道癌組織標本を用いた実験により、ヘッジホッグシグナル伝達経路とmTORシグナル伝達経路(ともに食道癌や各種癌に関与する)がGli1に集中する過程を示した。

Gli1を細胞核に入れる
Gli1は転写因子、すなわち細胞核内に入り込み、そこで他の遺伝子に結合し活性化させるタンパク質である。Gli1は通常、SuFuタンパクと特定の部位で結合することにより細胞核外に存在している。
「ヘッジホッグシグナル伝達経路は、SuFu結合を阻害するシグナル伝達タンパクであるスムーズンド(SMO)を活性化して、Gli1を遊離させます。遊離したGli1は細胞核内に入り、ヘッジホッグ活性化遺伝子などのさまざまな遺伝子を活性化させることができるようになります」とHung氏は述べた。

GDC-0449はすでに2012年1月に転移性基底細胞癌の治療に対してFDAにより承認されているが、SMOを阻害する。「基底細胞癌は、ヘッジホッグシグナル伝達経路における変異により促進されます。しかし、SMO阻害剤に対する抵抗性の問題が、卵巣癌や膵癌等の他の癌の治療に関する臨床試験で持ち上がっています」とHung氏は述べた。

「私たちは現在、mTORシグナル伝達経路がSMO阻害剤に対する抵抗性の一因であると確信します」とHung氏は述べた。

mTORシグナル伝達経路がGli1を誘発する作用機構
研究チームは、食道癌発症と関連する炎症性タンパク質である腫瘍壊死因子α(TNFα)の実験から着手した。一連の実験から研究チームは、TNFαが以下の現象を引き起こすことにより、mTORシグナル伝達経路を介したGli1活性を誘発することを発見した。

* S6K1キナーゼの活性化。S6K1キナーゼがGli1にリン酸基を付加しリン酸化Gli1-SuFu結合を阻害する。
* SuFuの阻害。リン酸化Gli1が細胞核内に入り遺伝子を活性化させる。
「研究チームはリン酸化Gli1の存在を特定する抗体を開発し、ヘッジホッグ阻害剤への抵抗性を示す腫瘍マーカー候補を特定しました」と、Hung氏は述べた。

研究チームは食道癌マウスにRAD-001かGDC-0449、またはその両方を投与した。mTOR阻害剤RAD-001単剤では効果がほとんどなかった。ヘッジホッグ阻害剤GDC-0449単剤では腫瘍容積が40%減少した。両剤併用では腫瘍容積が90%減少した。

「食道癌と他の癌に対する併用療法の臨床試験は、抗リン酸化Gli1抗体と通常のGli1の存在の両方を用いて進められる可能性があります。これらは、両剤を併用する必要性を示すものです」とHung氏は述べた。

他の研究機関による初期研究からAKTとMAPK/ERKシグナル伝達経路もヘッジホッグシグナル伝達経路を活性化させることが示唆されている。研究チームはAKTとERK(両者ともmTORシグナル伝達経路を活性化する)が、S6K1とGli1のリン酸化を経てGli1を活性化させることを示した。

Hung博士と筆頭著者であるYan Wang博士の共著者は以下である。Qingqing Ding, M.D., Ph.D., Chia-Jui Yen, M.D., Ph.D., Weiya Xia, M.D., Jing-Yu Lang, Ph Hung .D., Chia-Wei Li, Ph.D., Jennifer Hsu, Ph.D., Stephanie Miller, Ph.D., Dung-Fang Lee, Ph.D., Jung-Mao Hsu, Ph.D., Longfei Huo, Ph.D., Adam LaBaff, Dong-Ping Liu, Ph.D., and Tzu-Ksuan Huang, Ph.D., of MD Anderson’s Department of Molecular and Cellular Oncology; Julie Izzo, M.D., MD Anderson Department of Experimental Therapeutics; Jaffer Ajani, M.D., MD Anderson’s Department of Gastrointestinal Medical Oncology; Xuemei Wang of MD Anderson’s Department of Biostatistics; Yun Wu, M.D., Ph.D., and Huamin Wang, M.D., Ph.D., of MD Anderson’s Department of Pathology; Chien-Chen Lai, Ph.D., of the Graduate Institute of Chinese Medical Science and the Institute of Molecular Biology, National Chung Hsing University, Taiwan; Fuu-Jen Tsai, M.D., Ph.D., Department of Medical Research, China Medical University, Taiwan; Wei-Chao Chang, Ph.D., of the Center for Molecular Medicine and Graduate Institute of Cancer Biology, China Medical University; Chung-Hsuan Chen, Ph.D., Genomics Research Center, Academica Sinica, Taipei, Taiwan; Tsung-Teh Wu, M.D., Ph.D., Department of Anatomic Pathology, Mayo Clinic, Rochester, MN; Navtej Buttar, M.D., and Kenneth Wang, M.D., Division of Gastroenterology and Hepatology, Mayo Clinic, Rochester, MN.

Funding for this research was provided by grants from the National Cancer Institute, including MD Anderson’s Cancer Center Support Grant; The Kadoorie Charitable Foundation; Susan G. Komen for the Cure; the Sister Institution Fund of China Medical University and Hospital and MD Anderson; the Department of Health Cancer Research Center of Excellence, Taiwan; MD Anderson’s Center for Multidisciplinary Research Program, and the Delmer Dallas Endowed Research Fund in Gastrointestinal Cancers; Mr. and Mrs. Raymond P. Park, Dr. Abdul Aziz Sultan, Susan J. Smith and Carlos Cantu family funds, the River Creek Foundation, Schecter Family Foundation and the Kevin Frankel and Gary W. Frazier Funds.

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渡邊岳 訳
辻村信一(獣医学/農学博士、メディカルライター)監修
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原文


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