結腸癌と直腸癌は1つの癌と判明。癌ゲノムアトラスに新たな治療標的の可能性。 | 海外がん医療情報リファレンス

結腸癌と直腸癌は1つの癌と判明。癌ゲノムアトラスに新たな治療標的の可能性。

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結腸癌と直腸癌は1つの癌と判明。癌ゲノムアトラスに新たな治療標的の可能性。

NCIプレスリリース

2012年7月18日

癌ゲノムアトラス(The Cancer Genome Atlas:TCGA)プロジェクトは、結腸および直腸の組織標本を対象とする大規模研究を実施した。この結果、ゲノム変化のパターンは、がんの解剖学的位置、すなわち結腸と直腸のどちらで生じたかにかかわらず同じであることが明らかになり、研究者らは、この2種類の癌は1つのグループと考えられるという結論を示した。

複数の種類のゲノム解析が行われたが、結腸癌と直腸癌の解析結果にほとんど違いは認められなかった。TCGA研究ネットワークは、当初、結腸癌は直腸癌とは異なる癌であるとして研究を行なっていた。

「正確な遺伝的特性を明らかにしたことは、この疾患の根幹を理解するための我々の探求により得られた重要な成果である」と米国国立衛生研究所(NIH)所長Francis S. Collins医学博士は述べている。ここで得られたデータと知識により、ある種の癌では診断方法および治療方法に変化がもたらされる可能性がある。

本研究では、遺伝子において結腸直腸癌の寄与因子となる反復回数エラーもいくつか明らかになった。本研究は、いずれも米国国立衛生研究所(NIH)の一部である米国国立癌研究所(NCI)および米国国立ヒトゲノム研究所(NHGRI)の支援を受けて行われ、電子版Natureの2012年7月19日号に掲載された。

結腸直腸癌の悪性度と高頻度変異、すなわち正常なDNA修復機構が損なわれているために遺伝子の変異率が異常なほど高くなっている状態との間には、負の相関性があることが知られている。本研究では標本の16%に高頻度変異がみられた。また、その4分の3に、予後良好の指標となることが多いマイクロサテライト不安定性(MSI)が認められた。

マイクロサテライトとは、ゲノム中のDNAにおいて反復配列がみられる部分である。ゲノム中のこの領域を維持する責任遺伝子に変異が生じると、マイクロサテライトは延長されたり、短縮されたりする可能性がある。これをMSIと呼ぶ。

NCIは、米国で2012年に結腸直腸癌と診断される患者は143,000名を超え、51,500名がこの疾患により死亡する可能性があると推定している。結腸直腸癌は、男性では非黒色腫皮膚癌、前立腺癌、肺癌に続いて4番目に多い癌である。女性にとっても、非黒色腫皮膚癌、乳癌、肺癌に続き4番目に多い癌となっている。

研究者らは、224の結腸直腸癌の標本を調査し、非常に多くの症例で24の遺伝子が変異していることを認めた。さらに、過去の研究成果で見つかった遺伝子(APC、ARID1A、FAM123B/WTX、TP53、SMAD4、PIK3CAおよびKRASなど)以外にも、変異した場合に結腸直腸癌のdriver(癌化を引き起こすきっかけ)となりうる遺伝子(ARID1A、SOX9およびFAM123B/WTX)が特定された。この3個の遺伝子がこの疾患に関与している可能性を示すことができるのは、この規模の研究のみである。

「結腸直腸癌に関するこの基本的な遺伝子データから新たな治療戦略やサーベイランス法を生み出すには、数年を要すると考えられるが、この遺伝子情報は、何が結腸直腸癌に対して臨床的に有用かを明らかにするための跳躍台となることは間違いない」とNCI所長Harold E. Varmus医師は述べている。

さらに、この研究ネットワークは、結腸直腸癌で変異または過剰発現している遺伝子として、また、治療標的となる可能性をもつ遺伝子としてERBB2およびIGF2を特定した。これらの遺伝子は、細胞増殖制御に関与しており、結腸直腸癌では過剰発現が高頻度に観察された。この知見は、このような遺伝子産物を阻害することにより、この癌の増殖速度を抑制するという薬物治療戦略の可能性を示唆している。

本研究で鍵となるのはシグナル伝達経路の解析であった。シグナル伝達経路は、細胞が発生する過程で遺伝子活動をコントロールし、細胞が器官または組織を形成する過程では細胞間相互作用を制御する。また、これ以外の知見として、TCGA研究ネットワークは、WNT経路と呼ばれる特定のシグナル伝達カスケードにおいて新たな変異を特定した。WNTシグナル伝達経路阻害剤は、結腸直腸癌患者にベネフィットをもたらす可能性を初めて示した薬剤クラスであるが、研究者らは、今回の知見がこの薬剤の開発を向上させると考えている。

WNT経路の検討に加えて、研究者らは、結腸直腸癌の多くで変化が認められる経路としてさらにRTK/RASおよびAKT-PI3Kを特定した。このことは、結腸直腸癌の標的治療に有望と考えられる。これらの知見が得られた今、薬剤開発者らは研究範囲を絞り込むことが可能となり、さらに焦点を絞った治療アプローチの考案が期待される、と研究者らは述べている。

これにより、研究者らの主要グループは、この質でこの規模の研究を行うことが可能となる、とNHGRI所長Eric. D. Green医学博士は「本研究は、これまで行われたこの種の研究のなかで最も包括的な研究の一つであり、TCGAデータセットがヒトの癌の根本的特性に、どのように新たな光をあてるかを鮮やかに描き出している」と語る。

キャプション

結腸および直腸標本1セット中で第一染色体に関わる転座。

転座切断点の位置、融合を伴う主要内の全再構成の円形図を示す。赤線は融合を、黒線は融合以外の再編成を意味する。

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波多野淳子 翻訳
畑 啓昭(消化器外科/京都医療センター)監修
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原文

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