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研究者らが乳癌幹細胞を特定し攻撃するためのマーカーを発見/MDアンダーソンがんセンター

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研究者らが乳癌幹細胞を特定し攻撃するためのマーカーを発見/MDアンダーソンがんセンター

細胞表面タンパク質が薬剤の標的となる細胞の目印となり分子標的薬が前臨床試験で奏効する
MDアンダーソンがんセンター
2012年5月16日

乳癌幹細胞の細胞表面には、潜在的な腫瘍形成細胞として幹細胞を特定するための目印や、薬剤に対する脆弱性の標的として細胞表面タンパク質が存在することを、テキサス州立大学MDアンダーソンがんセンターの研究者らは、Journal of Clinical Investigation誌オンライン版で発表している。

「私たちは乳癌幹細胞の単一のマーカーを発見しました。また、このマーカーは、その生合成に不可欠な酵素を阻害する低分子薬剤の標的となることも分かりました」と、共同統括著者であるMichael Andreeff医学博士(テキサス州立大学MDアンダーソンがんセンター白血病部門教授兼幹細胞移植・細胞治療部門教授)は述べた。

Andreeff氏らは、治療抵抗性、増悪、および他の臓器への転移にとって不可欠である乳癌幹細胞に対する潜在的な標的治療として、この低分子薬剤を調製している。「固形癌内にある癌幹細胞の特定は現在でも困難です。また、標的となるこれらの幹細胞を、誰もよく把握できていません」と、Andreeff氏は述べた。このマーカーは、細胞表面タンパク質であるガングリオシドGD2である。また、この低分子薬剤は、Andreeff氏が白血病の前臨床試験で使用した試験薬、トリプトリドである。Andreeff氏らは、GD2産生に不可欠であるGD3合成酵素の発現をトリプトリドが阻害することを発見した。

トリプトリドは、癌細胞株を使用した実験で癌の増殖を抑制し、マウスを使用した実験で腫瘍縮小と生存期間の延長が認められた。臨床試験までの薬剤開発は、恐らくまだ数年かかるだろう。

癌幹細胞は正常幹細胞と類似している
数種類の癌の研究から、癌幹細胞は癌細胞の小規模な亜集団で、長期にわたる自己再生能と新規腫瘍産生能を有することが示されている。さらに最近の研究から、癌幹細胞は治療抵抗性を示し、転移を促進することが示された。癌幹細胞は、分化した組織を再生させる正常幹細胞と類似している。乳癌に関する知見は、Andreeff氏による長期にわたる間葉系幹細胞の研究から得られた。なお、間葉系幹細胞は、幹細胞自身の複製、ならびに、分化した骨細胞、筋細胞、脂肪細胞、もしくは軟骨細胞に分化することができる。

Andreeff氏は、これらの遊走性間葉系幹細胞が腫瘍などの創傷に対して遊走し、抗癌剤の運び屋の候補になることを示した。また、重要な細胞転換も関与している。共同統括著者であるSendurai A. Mani博士(テキサス州立大学MDアンダーソンがんセンター分子病理学部門准教授兼転移研究センター共同ディレクター)は、上皮間葉転換(EMT)の専門家である。全固形癌の約85%は、上皮という器官の粘膜で発生する。Mani氏とマサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者らは、上皮細胞は、EMTにより、幹細胞の特性を獲得するよう誘導される可能性を示した。

「この静止上皮細胞から遊走性間葉系幹細胞への変化は、癌転移における重要な段階です」と、Mani氏は述べた。

2010年に、Andreeff氏とMani氏は、EMTを経るヒト乳腺上皮細胞がヒト骨髄由来間葉系幹細胞と同様の挙動を示すことを発見した。ヒト乳腺上皮細胞は創傷部位に遊走し、同種の細胞に分化することができる。

GD2により癌幹細胞は他の癌細胞と区別される
現行のプロジェクトで、研究者らは、間葉系幹細胞表面に発現している細胞マーカーは乳癌幹細胞表面でも発現している可能性があるという仮説を出した。このような間葉系幹細胞マーカーの1つであるGD2の発現により、乳癌細胞株が2種の異なる細胞に分化し、その約4.5%はGD2+で、約92.7%はGD2-であったことを研究者らは見出した。

GD2+乳癌細胞:

•GD2-細胞と比較して、2倍の数の腫瘍様塊(腫瘍形成能の指標とされる細胞塊)が形成される。また、腫瘍様塊の大きさは3倍であった。
•GD2-細胞の4倍の速度で遊走した。
•各々の乳癌細胞10個を、それぞれマウスに移植すると、5倍の腫瘍が形成された。

GD2+細胞にも一般的な癌幹細胞マーカーが存在する
癌幹細胞の複合マーカーとして、CD44highCD24low(CD44発現量が多く、CD24発現量が少ない)細胞表面タンパク質が知られている。研究者らは、GD2+乳癌細胞の85%がCD44highCD24lowであったが、GD2-細胞のわずか1%がCD44highCD24lowであることを発見した。

ヒト乳癌細胞12種の解析により、GD2+乳癌細胞とCD44highCD24lowの間に95.5%以上の高い相関が見出された。
GD2+乳癌細胞とCD44highCD24low細胞における遺伝子発現の比較により、231遺伝子の発現において100%の相関が示された。
GD2+乳癌細胞は、GD2-細胞と比較して、遊走・浸潤・EMTに関与する遺伝子発現が高かった。GD2+乳癌細胞では、GD3合成酵素(GD2の最終的な生合成における主要酵素)の量は9倍高かった。

さらなる実験により、以下の事実が示された。
•2種の乳癌細胞株にEMTを誘導すると、GD2+乳癌細胞の割合が増加した。
•GD3合成酵素遺伝子のノックダウンにより、GD2+乳癌細胞の割合が50%以上減少した。
•GD3合成酵素発現を阻害する低分子干渉RNAを含む乳癌細胞100万個を注入されたマウスでは、8週間経過後も腫瘍が形成されなかったが、GD3合成酵素活性のあるマウス(対照マウス)では、腫瘍が形成された。

トリプトリドは腫瘍増殖を抑制し生存期間を延長させる
研究者らは次に、乳癌細胞が注入された免疫不全マウスに、GD3合成酵素阻害剤として知られるトリプトリドの処理を施した。トリプトリド処理したマウスの内、50%は乳癌を発症しなかった。また、残り50%は、対照マウスと比較して、より小さい腫瘍が形成された。トリプトリド処理したマウスは、対照マウスと比較して、より長期間生存した。癌幹細胞におけるGD2の機能は、まだ明らかにされていない。「GD2は免疫抑制物質なので、癌幹細胞は、転移の間に免疫細胞に対抗するために、GD2を必要とするでしょう。癌細胞におけるGD2発現の阻害により、癌細胞を殺す免疫細胞の先天的能力が高まる可能性があります」と、筆頭著者であるVenkata Lokesh Battula博士(テキサス州立大学MDアンダーソンがんセンター白血病部門)は述べた。

Andreeff医学博士・Mani博士・Battula博士の共著者は、Yuexi Shi氏・Rui-Yu Wang医学博士・Erika Spaeth博士・Rodrigo Jacamo氏・Frank Marini博士(テキサス州立大学MDアンダーソンがんセンター白血病部門分子血液学治療課)、Kurt Evans氏(同大学同センター分子病理学部門)、Aysegul Sahin医師(同大学同センター病理学部門)、Gabriel Hortobagyi医師(同大学同センター乳腺腫瘍学部門)、ならびにRudy Guerra博士(ライス大学統計学部)である。

本プロジェクトは、米国国立衛生研究所の一施設である米国国立癌研究所から、MDアンダーソン乳癌研究推進特別プログラム、Mani氏への支援を目的とした、MDアンダーソン・リサーチトラストフェロー賞(革新的癌研究を目的として、ジョージ・バーバラ・ブッシュ基金が資金供給)を含む資金提供を受けた。そして、Amanda Marie Whittle記念遺伝学会議(Andreeff氏主催)Paul・Mary Haas議長による資金提供も受けた。

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渡邊岳 訳
須藤智久(薬学/国立がん研究センター東病院 臨床開発センター)監修
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原文


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